文化•生活•芸術

オーストラリアから⑥ オヤジ国家日本

堀蓮慈

 ひさしぶりに帰国して、つらつら考えてみた。日本はなんでこないに沈滞して、閉塞感に満たされてるんやろ?おそらく希望がないからやろな。資源はないし、人口は高齢化するし、莫大な借金を抱えてる。個人にたとえたら、年取って体力が落ちてきた上に、重い病気にかかってるようなもんや。今はまだ過去の蓄えでそこそこの生活ができてるけど、将来に明るい展望が全くない。そうなると、どうしても今あるもんを守ろう、いう姿勢になる。変化を直視する勇気も、変化に対応する知恵も柔軟性もなく、今までやってきたことにしがみつく。樋口恵子さんのいう「草の根封建オヤジ」の性格が、今や日本全体を支配してるようや。戦前的家父長制の残滓やナショナリズムへの郷愁も根強いしな。
 最近、戦後日本の根幹は1940年の国家総動員体制や、いう説をいろんなところで読む。GHQは日本を占領統治する際に、官僚機構はそのまま残して活用した。その結果生き残った官僚による産業統制が機能したからあれだけの高度成長ができた、いうわけや。旧ソ連の5か年計画を見てもわかるように、低開発の状態から急速に工業化するには確かにそのやり方が有効なんやが、統制が文化面に及んだ場合、弊害が極めて大きい。一番はっきりしてるのが教育で、国家がここまで教育を統制するんを許してること自体が、日本人の頭の「統制への固着」を示す。たとえば、一定地域に住んでる子供は全員この学校に入れ、いう風に強制するんは、ナチスのフォルクスシューレを真似した国民学校令以来やそうやが、崩れ始めたんはごく最近のことやもんなあ。
 オーストラリアは、国が若いし資源が豊富や。言うたら先祖から財産をもろたボンボンみたいなもんやが、最近は多文化共生いうトレンドをちゃんと理解して、成熟へ向かってると思う。政治に関しては、イギリス仕込みの議会制民主主義が根付いてるし。
 ちなみにここで「オヤジ」て言うてるんは、成熟しそこなったままに老化した人間のことで、年齢•性別には関係ない。ぼく自身、周囲から見たらオヤジの範疇に入るやろけど、ここで書いてるような意味でのオヤジではないつもりや。今が第2の青春で、これから円熟しようと思てるんやから。

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