門前追悼

20回目の朝

所薫子

 西神中央駅を出ると今年も横断幕にハンドマイクを持った人たちが演説していた。そのまま過ぎようかと思ったけれど端に立っている人に「門前では、横断幕もハンドマイクもご遠慮ください。学校が休みの時にはいいですが、できるだけ静かに迷惑をかけないように行って参りました」。
 並木道は去年より更に大きな陰をつくり、20年近く前には学生で溢れかえっていた歩道が嘘のよう。学生がゆとりを持って通学している。今年も赤いカーネーションの道が校門まで続き、横断幕が張られることも無く、マイクも無しで、静かに20回目の朝を迎えることができた。20年みなそれぞれに年を重ね、互いにこの場に立てることを確かめ合い追悼する。
 「私は何も悪いことをしていないのに殺された」そのことを理解するのに時間がかかったけれど20年たって、あの事件が明確にされ「冤罪」「即刻死刑」しかもその後の対応もまったく間違っていたことを知らされた気がする。
 二度とこの過ちを繰り返さないために毎年7月6日の朝、8時30分。立ち続けたいとの思いを新たにした。

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