いじめ自殺

神戸フリースクール代表 田辺克之
先月末、いじめで6年生が自殺。母親はフィリピン人でした。悲しい事件です。帰国子女やハーフの子どもたちがいじめに遭うケースは少なくありません。ボクはフィリピンのバギオという街が好きで、これまで4~5回フィリピンを訪ねたことがあります。桑原さんというフィリピンの福祉のために長く活動されている方のチームに参加して、訪れたバギオの農村は、貧しいけれど和やかなのんびりした村でした。われわれチームを歓迎して村人がこぞって夜遅くまでダンスパーティーを開催してくれました。水たまりだらけの村の道路を改修する工事にも、自分の農作業の手を止めて、多くの人が黙々と参加してくれました。この心やさしい人たちの国、フィリピンから日本にやってきた女性の娘が、日本人の生徒のいじめにあって、「くさい」と言われ、のけものにされ、死を決意するところへ追いつめられてしまったのです。われわれ日本人は、将来フィリピンを訪ねたとき、村人にどう説明すればいいのでしょうか。この子の場合も、日本の学校の事情がよくわからないフィリピン人の母親には、いったい学校の中で何が起こったのか十分理解できなかったと思います。数年前、われわれがバギオの高校を訪ねたとき、女性の校長と「不登校」について話しあったのですが、「いじめで不登校なんて、学校の教師はなにをしているのか?」と激しい口調で問い詰められたことがあり、いくら日本の事情を説明しても、「わからない」を連発するだけでした。「授業が楽しくなければ、みんなで踊ればいいのよ。」と明るく説明する女性の校長の言葉には自信があふれているようでした。その後日談があります。その学校や校長の魅力にひかれて、翌年その学校にフリースクール生のHくんは留学することになりました。彼は、中学のサッカー部で陰湿ないじめを受け、強い対人恐怖に悩まされた経験がありました。バギオの学校を訪問し、こんな学校なら行ってみたい、と帰国後まもなく決めたようです。Hくんはフィリピンの高校を卒業して、いまオーストラリアの大学に留学しています。
掲載は進んでいるかもしれませんが、我が国は、心の教育ではずいぶん遅れた国だと思います。小学生がいじめられ、相談しても学校は動かず、少女は悩みぬいた末に、自分の命を絶つ決意をしたのですね。自分だけでなくこれ以上親を苦しめたくないと考えたのでしょう。原因究明も大切ですが、学校内に「いじめを生みだす素地」があるわけですから、根本的な学校の改革が必要だろうと思います。なによりも教師と生徒との心が通い合う学び舎づくりに力を注いでほしいと思います。自殺した少女のまわりの大人、彼女の教育をひきうけた大人は、大切な命を守れなかったことを風化させず、二度と同じことが起こらないように真剣に子どもとむきあってほしいと思います。この学校だけでなく、全国のあちこちから、子どもたちのうめき声が聞こえてきます。フリースクールに通っている子どもの多くがいじめを体験しています。どうか学校内の教師が力を合わせて、いじめに立ち向かってほしいと思います。担任は自分の教室のひとりひとりに光をあて、教室で「きょうは、あの子が笑顔を見せていたかどうか」をよく見守ってほしいと思います。親は、今朝、娘や息子が学校に行きしぶるような態度をみせなかったか、かすかなサインを見逃さないでください。そして、学校は休んでいいんだよ、とはっきり子どもに伝えてください。それしか今は、子どもの自殺を食い止める方法はみつかりません。
ORERO通信 2010.11.15
神戸フリースクール代表の田辺克之さんのお許しを得て掲載いたしました。
http://kfs.freeschool.jp/
神戸自由学院 単位制通信高校•サポート校
神戸市中央区北長狭通7丁目3-11【078-360-0016】メールアドレス kfs2008@live.jp
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