不登校

不登校事情と新しい学びへの提案

田辺克之

子どもたちが不登校になる理由はさまざまです。これまでのように「いじめ」が原因で不登校になるという傾向は、いまも続いています。10年度のいじめ件数は7万件と発表され、去年より5千件増加しています。
文科省が発表した「2010年度学校基本調査」「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によれば、不登校数は漸減しているものの、「いじめ」「高校不登校」が増加しています。小~高校までの自殺者が147人、そのうち「いじめ」を受けて自殺したケースは4件となっています。ほんとうだろうか、これまで子どもの自殺があると、校長が声明を発表し、よく調べることもなく「いじめは認められません。」と白々しくも言明してきたのを何度も見てきたのです。
 20年前、須磨の踏み切りの遮断機をくぐって、快速電車に身を投げた石坂さゆりちゃんは、「わたしが死ぬから、もういじめんとって」と遺書を残していました。亡くなった日の夜遅く、神戸商業高校の校長が自宅を訪れ、遺体の前で、涙を流しつつ頭を畳にこすりつけて彼女の両親に詫び、とりかえしのつかない結果を招いた責任は自分にあると伝えています。ところが翌日、教育委員会の委員と同席した校長は「いじめは認められなかった」と記者会見で発表したのです。舌の根も乾かないうちに、手のひらを返したような発言でした。高校の教室の彼女の机の中から、赤ペンで「死ね」と書かれたノートが発見されたのは、記者会見の直後でした。穏やかな両親でしたが、これは許せないと判断し、裁判で争うことになりました。
 広島県三原市の小崎島という瀬戸内海に浮かぶ小さな美しい島で、2人の少年が亡くなりました、いや殺されたというほうが正しいでしょう。暑い夏の日に、コンテナに放り込まれたのです。亡くなった男の子の父親が明日迎えにくることになっていた矢先の事件です。少年2人は灼熱の太陽に熱せられたコンテナの中で、喉を掻きむしって、息絶えたそうです。この施設「風の子学園」は、立派なパンフレットを作って、学校や教育委員会にも配布し、父親は学校の担任のすすめもあって入所させています。しかし、学校や教育委員会はそれを否定し、信頼を裏切られた父親は教育委員会を相手取って裁判をおこしました。黒いものでも「白です」と平気で言える役所や教育者の責任は大きいと思います。
 不登校が減少した、いじめ自殺は4名だったと報告されても、子どもの人権を蔑ろにする役人が出すデーターに、もはや心は動きません。操作された数字は、こどものいのちの数です。子どもたちのいのちがこの世から消えたのです。
不登校、高校中退、ニート、ひきこもり、虐待という枝葉を支えてる根っこは、子どもの教育ではないかと思います。個性を大切にする多様な時代にふさわしく、教室に生徒をとじこめて、すし詰め状態で授業をする形態だけが教育ではなく、もっと多様な学びを模索する時代にきているのだと思います。しかし、学校という制度が好きな人もいますから、それも残しつつ、まったく新しい学びの場を創設することを提案します。
戦後のなにもない貧しい時代の教育システムは終焉を迎えています。文科省が管轄する学校教育法と並んで、市民が中心の教育、その土地その風土にあった地域型教育などなど自由で多様な学びを追求していく「自由学校教育法」というものを制定するのです。お上の言いなりの教育が破綻しつつある現実を直視し、また学校からはみ出す子どもを問題行動児童などとレッテルをはるのではなく、かれらこそが新しい時代を切り開く寵児かもしれないと柔軟な思考をもつことが大切です。保守的で右傾化する体質を内包する現教育の根本的な改正には、まず既存の「学校教育法」を変えなければならないのですが、まだまだ学校信仰の強いこの国の現場を考えると一足飛びにはいかないだろうと思います。そこで自由な教育の流れを創り出すために、まず「自由学校教育法」を制定するのです。

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