イギリス報告(その2)イギリスのスポーツ文化を支える地域クラブ
クラブの練習は、毎週、火曜と木曜の週2回、夜の7時30分から約2時間。ほとんど全員が社会人なので、仕事が終わった後に練習に参加するわけですが、参加人数は、少ない時でも30名程度、多い時には50名以上にもなります。時期にもよりますが、練習内容は、決して楽ではなく、日本の体育会のラグビー部とそれほど変わりません。
1日の仕事の後に、これだけの人数が集まり、しかも、しんどい練習をするということを最初の頃は不思議に感じていたのですが、だんだんと、彼らの感覚が分かってきました。
彼らにとって、当然のことながらラグビーは趣味にすぎないのですが、その趣味が、彼らの生活(おそらく、人生にとっても)の中で、非常に大きな比重を占めているようです。長年イギリスに住んでいる日本人の友人に右のような質問をしたら、「彼らにとっては、仕事よりも大切だから」と言っていましたが、まさに、その通りではないかと思います。
しんどい練習も、決して鍛錬ではなく、それ自体、楽しむべきもので、それを自然に楽しむことができる感覚が、彼らの中に出来上がっているのです。だからこそ、例えば、練習中に、しんどくなれば、勝手に練習を抜けて休むし、私のような新しいメンバーが入ってきたときも、それに対し、特別の配慮をすることもありません。各自が、自分のペース、自分が楽しめる範囲で参加するというのが、当然の感覚になっているのです。
実際、練習中に、しんどそうな顔をしていると、「Do you enjoy rugby ?」と、なんども声をかけられました。愛想笑いをしながら「Yes」としか答えられない自分が情けなかったですが、こう聞かれて、ふと振り返ると、「練習の途中で、抜けるのは情けない」というような気持ちがあることに気づかされました。彼らの中には、こんな感覚は全くないのだと思います。
クラブの環境に関して、もう一つ、羨ましいことがありました。各クラブが、クラブハウスの中に、パブを持っているのです。クラブハウスがどんなにぼろぼろでも、どのクラブも、パブだけは、営業ができそうなくらい立派なものを持っています。
練習や試合が終わった後、風呂に入ってから、パブでビールを飲むのが、イギリス人の大きな楽しみの一つとなっています。しかも、そのビールの量が普通ではありません。つまみを全く食べずに、会話を楽しみながら、ひたすら飲み続けます。
メンバーの一人に、「家に帰ってから夕食を食べるのか」と聞いたことがありましたが、キョトンとされました。彼らは、少なくとも練習の日には、このビールが食事代わりで、家に帰ってから夕食をとることはないようです。
また、一般的にも、イギリス人には、日本人のようにまとまった夕食をとる習慣はなく。かなりの部分をビールが代替しているようです。
パブとビールは、イギリス人(イギリス文化)にとって不可欠な存在ですが、ラグビー(スポーツ)にとっても、切っても切れない関係にあります。ビールだけで、どこから、あのデカイ体とパワーが生まれてくるのか、不思議な気がします。





