粗食で生き返る

(1) カタカナ食を控える
パンは、忙しくて手抜きしたいときだけに食べると良い。また、そば、うどん、もちといったひらがな食はまだ良いが、パンやラーメン、スパゲティなどのカタカナ食はあまり食べるべきではない。なぜなら、カタカナ食は油が良く合うからである。カタカナの食事はカタカナの食品を呼ぶ。パンを食べるとき一緒に何を食べるか考えてみると、ハムエッグ、コーヒー、サラダ、ドレッシングなどカタカナの食品ばかり出てくる。
ラーメンも肉の加工品(チャーシュー)とかラードなどのカタカナが合うし、スパゲティもオリーブ油やチーズなどがつきものになっている。
パンについてもう少し説明すると、朝は食べられても夜は食べられないもの、それがパンの正体である。また、朝食にパンが増えた原因は、夕食がなくなったことと関係している。夕食というのは夕方5時か6時に取る食事の事であって、9時や10時に摂る食事は夕食ではなく夜食である。夜遅くに食事をするので、朝起きた時におなかがすいていなく、ご飯では重いのでふわふわのパンを食べるようになるのであろう。
(2) 食の欧米化の見直し
食の欧米化によりパンや肉、食肉加工品、牛乳、乳製品、油脂類、糖類などの摂取量が増え、さらに見栄えを良くするために精製食品の摂取も強烈に増加した。したがって、特に精製食品の摂り過ぎによりビタミン、ミネラルなどの微量栄養素の摂取不足を改善する必要がある。微量栄養素などは、昔より栄養豊かな食品をたくさん取っている現代の方が優れていると思う人がいるかもしれないが、必ずしもそうではない。米や麦などの精製度が上がると、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素が減少する。例えば玄米や胚芽米、精製度の低い小麦、黒砂糖などには、多くのビタミンやカルシウム、リン、鉄などのミネラル類が豊富に含まれているが、我々は上白米や薄力粉、白砂糖など精製度の高い食品ばかり食べるので、これらの成分は減少する。
Ⅲ 最後に
世の中にはいろんな民族がおり、ニューギニア高地人は余り狩猟などせずタロイモが主食であるが、筋骨たくましい身体をしているし、イヌイットは零下40°Cの世界に住んでいるので生肉しか食べられない。ところが、バランスの良い食事が健康を保つと信じさせられている我々日本人は、これらのことを知ると仰天する。
それに本文で書いているとおり、確かに日本人はご飯を食べなくなった。私が小学生であった昭和30(1955)年代には、今のような食卓と椅子ではなく座卓に家族皆が座って、ご飯とみそ汁を中心とした食事をしていた。しかし、おそらくご飯食は日本人の貧しい生活の現れであると思い込んで、欧米風の食生活にあこがれていた人も多かったであろう。
しかしある程度豊かになり、欧米型の食生活が日本でも日常見られるようになるにつれて、アトピーや湿疹、若い女性の乳がんの多発など従来見られなかった病気に悩まされるようになった。
30~40代の若い乳がんの患者に食生活を聞いてみると、8割以上の人が朝食にパンを食べていて驚くほどみな同じような食生活をしているそうである。これほど似通った食生活をしている病気は他にない。本文でも書いたが、若い乳がんの患者の食生活の最大の特徴は、ご飯が異常に少ないということである。朝はパン食、でもパン食では何かもの足りないから、常に甘いお菓子やクッキーなどを食べている。パン食だから煮物、あえ物、おひたしよりも油を使った炒め物やドレッシングをかけたサラダが多い。果物は美容に良いからと、楽しみに食べる量をはるかの超えた量を食べている。つまり、ご飯を食べないで、パン、砂糖、油、果物などでカロリーを採るという食生活をしていたということである。
それで病気になり、食事を変えなければならないと思うが、病院は何も教えてくれない。食生活の専門家はいないのである。
病気の原因は単純には決められないとはいえ、殆どの乳がん患者がご飯食をしていないのが明らかになっているので、幕内秀夫は枝葉末節のおかずではなくご飯を積極的に食べるように指導すると言っている。
そしてこのことは多くの場合正しいのであろうと思われる。なぜなら、今も炭水化物抜きダイエットなる本やバランスの良い食事を勧める本が山のように出版されており、これらを含め多くの本を手にした読者は、何が良いか分からない状態になるであろう。
しかし、ニューギニア高地人にとってタロイモが優れた食事であるのと同様に、数千年前から続いているご飯中心の日本食は日本人にとって優れた食事であるのは間違いないであろうと思われる。
なぜ、ニューギニア高地人はタロイモだけで筋肉隆々となるかについては、数兆個に及ぶ腸内細菌が関与していて、彼らの腸内細菌を調べたところ人間より牛に近く“窒素固定菌”いわれる腸内細菌が芋のでんぷん質を蛋白質に変える力があるのだそうだ。
そうだとすれば数千年に及ぶ進化の末、日本人の腸内細菌は健康に生きてゆくために必要な様々な栄養素をご飯から作り出しているものと推定されるので、パン食よりもご飯食が優れていても何らおかしいことはない。
私も時々食べているパン食を減らし、もっとご飯を食べようと思う次第である。
Ⅶ 参考図書
- 幕内秀夫著:『粗食で生き返る』(角川oneテーマ21)
- 帯津良一、幕内秀夫著:三笠書房、『なぜ「粗食」が体にいいのか―「食生活」ここだけは変えなさい!』(知的生きかた文庫)
- 幕内秀夫著:『40歳からの元気食「何を食べないか」-10分間体内革命』(講談社+α新書)
- 幕内秀夫著:『1食100円「病気にならない」食事』(講談社+α新書)









