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岩手県立水沢高等学校では、2021年度まで威圧的な応援歌指導が存在していた。入学後間もない生徒に、バンカラ風の制服を着た応援団員が太鼓を鳴らして怒号を浴びせながら黒板を叩いて威圧するパワハラが行われていたが、2020年に入学した男子生徒と父親の2年間にわたる人権侵害に対する抗議行動により、威圧的な応援歌指導は無くなった。
事件の経緯
2020年4月、男子生徒は入学後、同級生と共に教室に移動すると、後からバンカラ風の制服を着た応援団が教室に入ってきた。太鼓を鳴らして怒号を浴びせながら黒板を叩き、「お前ら挨拶もできないのか」と凄みながら机をひっくり返し、その机の女子生徒は恐怖で泣き出した。男子生徒は怒りを覚えたものの上級生を相手に制止はできなかった。
応援歌の練習は、入学式から1週間から2週間続いた。その時期は登下校時に校門に変形の制服を着て下駄を履いた応援団が立っていて、男子は「おっす」、女子は「おはようございます」と言わされた。応援歌練習の時も「体育館まで走ってこい」などと罵声を浴びせて廊下を走らせ、誰の机でも構わずひっくり返しており、男子生徒はその雰囲気が嫌だった。
男子生徒は姉の通う高校でPTA副会長をしていた父親に学校から電話をして「女の子が泣かされていて、応援団を許せない」と話した。父親は「このままでは不登校になって中退するかも」と思い、面識のあった水沢高校のPTA会長を通じて男子生徒が応援歌練習について校長と話す機会を作った。
男子生徒と父親、校長、数名の職員が校舎の外で話し、男子生徒は校長に「机をひっくり返されて泣かされて、心を傷つけられた女の子の気持ちを考えたことがありますか。黒板を叩いて威圧するのは、社会通念上パワハラにあたる。社会では許されない行為を教育の現場でさせるとしたら、この高校も大した高校じゃないですね」と主張した。
男子生徒の主張を聞いた校長は「怖いと思うなら出なくて良い」と答えた。男子生徒はそれ以降の応援歌練習をボイコットするようになったが、ボイコットしたのは男子生徒だけだった。
男子生徒は校長との話し合いの中で、翌年以降は新入生に対する応援歌の練習で威圧的な言動をやめ、褒める方向で実施させることを約束させたが、翌年度の入学式の応援歌練習で、応援団が怒鳴りながら1年製に廊下を走らせていたのを見て約束が反故にされたと気付き、父親に泣きながら助けを求めた。
校長は異動で代わっていたが、男子生徒と父親、校長、応援団担当顧問が話し合いをした。応援団担当顧問は「話し合っても平行線になるから会う必要がない」と話し合い自体を拒否しようとしたが、男子生徒は「平行線になると最初から決めつけるってことは、何を言っても聞く気がないのですか」と聞いた。
男子生徒との約束を反故にされたことに腹を立てていた父親は、「説明するまで帰らない」と苦情を伝えると、校長は「もう少し時間をくれないか」と言った。
同校では現在も応援歌練習はあるが、2021年度を最後に威圧的な応援歌指導は無くなったという。同校の教頭は、「現在では、応援団の指導のもと大きな声で歌いましょうとはなっています。過去には厳しい応援歌練習はありました。しかし厳しい練習はパワハラという認識ですので、もうなくなっています。今は、厳しい応援歌練習はしていません」と話している1。
- “「女の子が泣かされていて応援団を許せなかった」怒号を浴びせながら黒板を叩き、前列の生徒の机をひっくり返す…今も日本中に存在する“応援練習”の闇” 文春オンライン (2025年4月10日)