Is info on this listing outdated? Are you owner of this business? Register and claim it now.
姫路市立城陽小学校の特別支援学級の担任の男性教諭(39歳)は、2018年(平成30年)4月から2021年6月にかけて、学級の児童6人に対し、「生きる価値なし。死ぬしかない。早く転校しろ」などの暴言を浴びせたり、プールの授業で怖がっている児童の頭を押さえて無理矢理水につけたり、腕を掴んで引き回したり、身体を強く揺さぶったり抑え込んだりした。男性教諭は同僚には管理職に報告しないよう口止めをしていた。
学級を補助していた女性支援員は2018年度から口頭で少なくとも7回管理職に訴えていたが、校長は口頭注意に留め、市教委に報告しなかった。女性職員は2021年4月にも後任の校長に2回伝えたが、校長は「行き過ぎた指導だが報告するほどではない」と判断し、男性教諭を担任から外すなどの対応を取らなかった。(県教委は「こうした事案を1件でも把握すれば、担任から外すべきだった」と指摘している。)
2021年6月、女性職員が3年前から教諭による児童への加害行為を記録したメモを提出して発覚した。県教委は暴言や暴行を34件(内訳:2018年度16件、2019年度1件、2020年度8件、2021年度8件、年度不明1件)認定し、元教諭を懲戒免職処分とした。同年12月、市教委の検証委員会が管理職の認識の甘さなどを指摘した意見書をまとめた。
元教諭の問題を受けて学校が保護者に実施したアンケートで、女性教諭が普通学級の児童に対し、人格を傷付けるような発言や、服や体を引っ張る体罰を加えていたという情報が複数寄せられた。女性教諭については2020年度以降、保護者から「指導が厳しすぎる」という声が寄せられていたが、学校は調査や市教委への報告をせず、口頭での指導にとどめていた。女性教諭は暴言や体罰があったことについて概ね認めており、2021年12月8日現在学校を休んでいる。
事件の経緯
2018年4月 教諭は特別支援学級を担当直後から、当時1年の児童を転倒させたり、「分かりません」と言った5年の女児の前で、同僚の女性職員に「こんなやつらに教える意味ありますか。こっちまで頭がおかしくなる」などと言うようになった。
教諭の暴言は2019年に入りエスカレートし、5月には「学校をやめる」という児童に「ありがとう。ほんまに絶対やめろよ」とも発言した。
また、鞄をしまわないなどした4年生男児に「生きる価値なし。死ぬしかない。早く転校しろ」と発言したり、給食の準備に手間取った1年生男児に「おまえは必要ない。人間、必要ないと言われたらおしまいやな」などと言った。
6月9日には、4年の男児が水やり当番の札を隠したことに立腹し、「お前なんか必要ない、消えろ、2度と学校に来るな」と言い、男児の腕を掴んで振り回すなどした。女性職員がこの件と、過去の言動の記録を教頭に伝え、校長が市教委に報告したことで一連の事案が発覚した。(女性職員は当初から管理職に教諭の件を報告してきたが、校長による口頭注意に留まっていた。)
2021年9月21日、兵庫県教育委員会は男性教諭を懲戒免職処分とした。また、職員から暴言などについて報告を受けながら適切な対応をしなかったとして、同校の男性校長を減給10分の1(1か月)とした。
検証委員会
検証委員会の設置•調査内容
2021年11月、市教委は、学校で問題が起きた時に支援する市教委の「学校サポート•スクラムチーム」のメンバーから選ばれ、弁護士、臨床心理士、精神保健福祉士の3人で構成する検証委員会を設置した。
元教諭や2018年度以降の同校の校長、教頭ら学校関係者に加え、被害児童の保護者から聞き取りをし、教諭が体罰•暴言を繰り返した理由と問題が長期化した原因を探った。
検証委員
委員長:立花隆介弁護士(兵庫県弁護士会)
検証報告書•その後
2021年12月24日、検証委員会はA4判60ページの報告書をまとめ、3年以上にわたる34件の体罰•暴言について「人権感覚に疑問を持たざるを得ない」と指摘し、適切な対応を取らなかった管理職と市教委について「重大な問題があった」と批判した。
意見書は、元教諭が数多くの暴言や体罰に及んだ点について、「暴力や暴力的言動を許容する指向を有していた」とした上で、「障害のある児童を担当する資質に問題があったと言うほかない」と断じた。
学校の管理職についても、元教諭の行為を知った同僚から2018年以降、6回報告を受けたにもかかわらず、いずれも口頭注意にとどめ、詳細なメモを見せられるまで市教委に報告しなかった点を問題視。「『事なかれ主義』とも言うべき心情が放置につながった」とした。
その上で、「体罰や暴言を知った教職員が安心して情報提供できる制度が不足していた」と市教委の体制の不備も指摘した。
検証委員会の立花隆介委員長(弁護士)は記者会見で、「児童の人格形成や成長に大きな影響がある時期に、長期間にわたって体罰や暴言が発覚しなかったのは重大な問題」と言及し、西田耕太郎教育長は「厳しい指摘を受け止め、今回のようなことが二度と起こらないようにしたい」と語った。
城陽小学校の湊泰宏校長は記者会見で、「児童や保護者らに申し訳ない。(元教諭の同僚から)報告を受けても指導の範囲と考えていて、認識が甘かった」と改めて謝罪した。
市教委は今後、意見書を参考に「姫路市体罰のない学校園づくりのための検討会議」を進め、2022年3月までに再発防止策をまとめるとしている。
民事損害賠償請求訴訟
提訴
2023年12月18日、被害に遭った児童6人のうち小学6年生の男児2人の保護者らは、姫路市に計2000万円の損害賠償を求めて神戸地裁姫路支部に提訴した。
訴状によると、男児2人は2018~2021年度、特別支援学級の担任だった男性教諭から、1人は腕を掴まれて振り回されたり、「お前は生きる価値なし」などの暴言を受けたりした。もう一人の男児は水が苦手なのにプールの中に放り投げられたり、「自閉のお前に何と言えば直せるんや」などと暴言を浴びせられたりした。
男児2人はPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、1人は今も睡眠障害や自傷行為などの症状がある。もう一人は急に泣き出したり、音に過敏になったりする状態が続いているという。訴状では、学校側が元教諭の暴言や体罰に対策を取らず、放置したと主張している。
提訴後、男児2人の父親と代理人弁護士が市内で会見し、1人の父親は「後遺症に苦しむ子どもの現状を知ってほしい。(学校側の)保身や事なかれ主義が生んだ結果だ」と訴えた。姫路市教育委員会の西田耕太郎教育長は「内容を精査して真摯に対応をしていく」とコメントを出した。
参考資料
“支援学級に「生きる価値なし死ぬしかない」、担任の暴言放置…学校側の対応問題視” 讀賣新聞 (2021年12月25日) 他