新座市立第二中学生不適切指導自死事件

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2000年(平成12年)9月30日午後10時過ぎ、埼玉県新座市立第二中学校の男子生徒(中学2年生•13歳)は、学校でお菓子を食べたことを指導されたことや、犯人探しで密告させられることなどを苦にして、自宅のあるマンションの10階から飛び降りて自死した。

自死の約1時間前に教師から自宅に電話があり、来週の学年集会の場で、リーダー格の生徒には、みんなの前で決意表明をしてもらうことや学校にライターを持ってきた生徒すべての保護者に学校に来てもらうことなどを話していた。

事件の経緯

2000年9月29日、昼休みに3年生の生徒指導担当教師が2年5組の生徒からお菓子の匂いがすることに気付き聞いたところ、「ハイチューを食べました」と答えた。生徒指導担当教師が生徒を職員室に連れて行き、2年5組の担任教師と一緒に他に誰か一緒に食べた生徒がいるか聞いたところ、他のクラスの生徒を含めて6人の名前が上がった。また、ライターを学校に持ち込んで遊んでいた生徒がいたことも判明した。各担任にも連絡が回り、他にも関係する生徒がいたら知らせ合うことになった。

2年5組の帰りの会で、担任教師が「放課後みんなで叱られなきゃいけないんだけど、他にも知っている人や食べた人がいるんじゃないの」と聞いたところ、男子生徒は既に名前の上がっている生徒からもらって食べたと自己申告をした。

会議室で、最終的には12人の教師が9人の生徒らからお菓子を食べたかどうか、他にも食べたものはいないかなど、一人ひとりに事実確認がされた。その場にいない生徒の名前も何人か上がり、部活中の生徒を教師たちが呼びに行くなどした。

教師たちは、「以前、学年集会で話しをしたにもかかわらず、このようなことになってしまった」「学年委員や部長も多い」と言って、該当者に手を挙げさせたり、「このままでは学年がだめになってしまう」「以前、陸上部の生徒が大会中にお菓子を食べたことで大会の途中で帰ったことがあった。反省をして奉仕活動を行った。たかが、お菓子と思うかもしれないが、たいへんなことなんだよ」「選抜高校野球などでは不祥事で出場できないこともあるんだよ」「明日からすぐできることがあるね、掃除なんか、すぐに取りかかれることだよね、やってね」などと指導し、①事実を具体的に書く②他に反省すべき点があれば書く③今後、クラス•学年など、これからみんなに対して貢献できることを書く-などを作文に書いて提出するよう生徒たちに求めた。

男子生徒は反省文を提出した。
「2年5組 ◯◯◯◯(男子生徒の名前)
ぼくは9月29日に昼休み中に○○君たちとベランダに出て話をしていました。
その時○○君がハイチューを食べていて、僕も食べたくなってハイチューをもらって食べてしまいました。
今思えば本当にバカな事をしてしまったなと思います。

お菓子を食べている人は二学期に入ってから少し見かけていましたが、1度も注意をしませんでした。
議長で中央委員で部長で班長でみんなにたくさんの仕事をまかされている自分が注意一つできなくて、つい自分自身が食べてしまったのが情けないです。
またI先生(担任)が一人一人確認をとっていたとき(帰りの会)全員大丈夫です。と言っていたけどそんなわけないのもわかっていました。その時なにも言えなかった事を今ではなにをやっていたんだろうと思います。
本当にすいませんでした。
ライターをもってきたのは僕です。
スプレーとかにはつけてはいないけど持って来てしまいました。
その時はかるはずみ気持ちでした。(原文のママ)別に何をしようとか考えず持ってきました。

今後どのように罪をつぐなうか考えた結果、僕は2-5の教室を放課後できるかぎり机の整とんとゴミひろいをします。
また合唱祭の練習をたくさんなって(原文のママ)みんなをリードして一生懸命がんばります。これからは自分に注意できるようにします。
今回は先生方の貴重な時間をたくさん使ってしまって本当にすみませんでした。今後ぜったいこのような事がないように気をつけて学校生活を送ります。
すいませんでした。」

9月30日、男子生徒は以前から決まっていた検査で病院に行く必要があり、学校を休んだ。
夜9時10分頃、担任教師から男子生徒の母親に電話があり、「◯◯(男子生徒の名前)君が学校でお菓子を食べ、9月29日にその件で学校で指導しました。来週の学年集会の場で、(学級委員などの)リーダー格の生徒には、みんなの前で決意表明をしてもらうかもしれないので、その準備をするように伝えてください。また、◯◯(男子生徒の名前)君が学校にライターを持ってきていたようなので、その点もお母さんから確認してください。ライターの件に関しては、該当する生徒すべての保護者に学校に来てもらうようになると思います」などと話した。

母親は別室でテレビを見ていた男子生徒に電話の内容を伝えた。「学校でお菓子を食べたんだって?」と聞くと、「うん。ごめんなさい」と謝り、「ライターを持っていったって先生がいってたけど、本当?」と聞くと、「ごめんなさい」と答えた。
しばらく男子生徒は自室に篭っていたが、午後10時を回った頃、靴を履いて玄関から通路に出て、そのままマンションの10階から飛び降りた。
「死にます/ごめんなさい/たくさんバカなことをして/もうたえきれません/バカなやつだよ/自爆だよ/じゃあね/ごめんなさい/◯◯(男子生徒の名前)」と書かれた遺書が残されていた。

男子生徒が亡くなった当日、学校長は遺族に「臨時全校集会を開き、生徒に命の大切さを伝えたい」と言い、両親の言葉を集会で棒読みした。
両親は臨時全校集会で、男子生徒の遺書と反省文を読み上げた。父親は「嫌なことがあったら、嫌だと言おう」と呼び掛け、母親は「◯◯(男子生徒の名前)を含めて、子どもはたくさんの大人の応援団がいるけれど、その代表は親です。きっと自分の命を断とうとした瞬間、◯◯(男子生徒の名前)はそのことを忘れていたんだと思う」と話した。
男子生徒の両親は学校に対して、①多数の教師による少数の生徒に対する指導②反省文を書かせること③生徒に他の生徒の行動を密告させるような人権無視の指導を改善することと、全校生徒と保護者に対して学校への要望をアンケートにすること(希望者のみ記名)、学校のホームページを開設して情報開示を行うことなどの要望を申し入れたが、学校側は全てを拒絶した。

臨時全校集会の後、担任教師は「学校やクラスで何かあったのでしょうか」と両親に尋ねた。それに対して両親は「それは私に聞く質問ではない。それを聞きたいのは私です」と答えた。

両親は独自に同級生や卒業生などから学校の様子について聞き取り調査を行った。その結果、体罰をしたり、生徒間の監視を指示する教師の存在が明らかになった。
(男子生徒は1年生の時に野球部に所属していたが、顧問教師から「1年生の部員や親の中に俺が体罰をしているという噂を流している奴がいる。誰がそんな噂を流しているのか、1年生全員に聞いてこい」と命令されたことがあった。それを男子生徒から聞いた母親は、「そんな指示は人間として間違っている。従う必要はない」と言った。この件はそのまま有耶無耶になった。)

遺族は事件直後から校長や教育委員会に対して、お菓子事件の指導の詳細を知りたいと申し入れたが、出張や多忙を理由に引き延ばされた。

10月12日、遺族は学校に最初の「質問状」をFAXで送った。

男子生徒が亡くなって21日後に遺族宅を20日振りに訪れた担任教師は、「私の片腕をなくしたようで悲しくて仕方がありません」と話した。担任教師は母親に対して出した手紙の中で、自分の言葉の無神経さについては詫びているが、ただ「悲しい」「悲しい」と書くだけで、自分も加わった集団指導については一切記述がない。

10月31日、学校長と数名の教員、教育委員会が出席して、ようやく話し合いの場が持たれた。この席で、父親が男子生徒の死の理由とは特定できないが、指導が何らかの要因であることは認めるか、と質問したが、数人が頷くだけで大方は黙ったままだった。

12月、学校は対応策として、3週間、授業と部活を公開した。その間に訪れた保護者は十数人で、半分近くはPTA作品と文化部の生徒の展示作品を見に来たついでに立ち寄っただけだった。

事件は新座市議会で取り上げられ、5人の議員が学校の責任を問うたが、教育長は「指導に誤りはなかった」と答えた。

事件後、地域で遺族を中心に卒業生や在校生、その親たちが定期的に集まり、「生命の応援団」を結成した。男子生徒の死の意味を考える。学校を擁護する者もいるが、一方で同校の教師は誰も参加してこない。

男子生徒のご遺族のホームページ

13歳の絶望 ◯◯(男子生徒の名前)はなぜ死を選んだのか

参考図書

教師失格

教師失格藤井誠二(著) / 筑摩書房 / 2001年4月1日
<内容>
教育問題を追い続けてきた著者が、最近起きた様々な事件の綿密な取材を通して、今教師の何が問題なのかを明らかにし、どうすべきかを提案する。

参考資料

日本の子どもたち1

  1. 2016年6月5日に武田さち子様より掲載許可を頂きました。
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