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2019年(令和元年)10月26日、堺市立中学校の女子生徒(中学2年生•13歳)が、いじめを苦にしてマンションから飛び降り自死した。女子生徒は小学生の頃から、日常会話の中で、「死んでこい」「うざい」といじめを受け続けていた。
第三者委員会の報告書では、いじめを認定したが、不登校が1年以上にわたっていたことを理由に、いじめと死亡との因果関係を認めなかった。
担任だった女性教諭が、女子生徒の状況確認を実施していたと虚偽報告をするなど、学校側の杜撰な対応が問題になった。
事件の経緯
女子生徒は小学生の頃から日常会話の中で、「死んでこい」「うざい」などと言われ続けて、そのことを嫌がっていた。女子生徒は言葉の表現が苦手で、言葉にできない辛さを抱え込んでいたために、通院していた医師に正しく理解されないこともあった。
2018年7月 女子生徒は部活動中に引き付けを起こして倒れた。教師たちは熱中症を疑っていたが救急車を呼ぶ気配はなく、連絡を受けて学校に向かった母親が約45分後に到着し、口の端に泡を確認して病院に連れて行くまで、リンパ部を水袋で冷やしたり、うちわで扇ぐなどの対応に留めていた。女子生徒は、この時から「この学校の大人は怖い」と言うようになった。
2018年秋 途中からバレー部に入部した女子生徒が、家族の用事で部活を休部した数日後、同級生から呼び出された。練習試合があったので、「お母さんが休めと言ったからって、なんで休むん?」と聞かれた女子生徒は「どうせ負けるし」と言い、「やる気がないんやったら、やめてまえ」と言われ、泣いていた。
練習試合の場所や時間、弁当の有無などの連絡が前日の夜になっても届かないことがあり、母親が教頭に連絡してようやく連絡が入ることがあった。練習試合中にも、点数係をしていたら、「休んだのにわかるん?」と言われたり、荷物を多く持たされるなどの嫌がらせを受けていた。
女子生徒は、心の状態によって目が見えにくくなる心因性視覚障害と診断された他、頭痛や腹痛にも悩まされ、部活も休みがちになったが、学校に相談してもまともに取り合ってもらえなかった。
2019年10月26日 女子生徒は自宅を飛び出し、近くのマンションから転落した。11月2日に死亡が確認され、警察から自殺と発表された。
調査委員会
調査委員会の設置•調査内容
11月27日 母親は堺市教育委員会に電話をして、調査委員会の設置をお願いした。その後、市教委は、いじめ防止対策推進法の重大事態と判断し、調査委員会の設置を決定した。担当者は「すぐに立ち上げます」と言ったが、女子生徒をいじめた生徒を含む受験生に配慮して、受験が終わってから調査を行うことを求めた。
調査委員
委員長:文科省のいじめ防止基本方針策定協議会やいじめ防止対策協議会、児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議などに関わっている人物。
委員:大学教授や弁護士、臨床心理士、医師ら6人。特別委員が2人。
2020年1月 市教委と遺族の話し合いの場で、調査委員の選定方法について遺族から推薦できるなどの説明はなく、市教委が依頼している人を選定した。
調査報告書
2022年3月17日 堺市教育委員会は、いじめを認定し、不登校との因果関係があるとする「いじめ重大事態調査報告書」(いじめ防止等対策推進委員会作成)を公表した。しかし、不登校が1年以上にわたっていたことを理由にいじめと自殺との因果関係は認めなかった。また、いじめの内容は黒塗りになっているため詳細はわからない。
報告書には「保護者との意見交換の内容を踏まえて、本件をいじめ防止等対策推進法第28条1項2号に定める『重大事態』として取り扱う」とした。つまり、ここで調査の目的は、いじめの有無と、いじめがあった場合、不登校と関係があったのかが調査範囲として、自殺との因果関係はこの段階で省かれた。
女子生徒へのいじめについて、学校内のいじめ対策委員会が4回開催され、第4回目では、いじめ解消が認定されたことになっていたが、遺族は委員会が開かれていたことも、女子生徒へのいじめ解消が認定されていたことも聞いていなかっただけでなく、議事録は女子生徒の死後に作成されたものと判断された。
報告書には「最終的には、基本的な考え方と調査の進め方について理解と同意をいただいたものと受け止めている」とあり、堺市いじめ防止基本方針によると、「死亡した児童生徒が置かれていた状況として、いじめの疑いがあることを踏まえ、教育委員会又は学校は、遺族に対して主体的に、在校生へのアンケート調査や一斉聴き取り調査を含む詳しい調査の実施を提案する」とあるが、女子生徒の遺族へのそうした提案や説明はなかった。
女子生徒の遺族は、調査委員会の報告書が、不登校のまま進級した女子生徒に対して、当時の担任がほとんど女子生徒と顔を合わせず、学校は国が義務付けているいじめの調査を女子生徒に対して実施していなかったなどの学校の対応の非を認める一方で、1年の不登校はいじめが苦しいからこそであるのに自殺との因果関係を認めないことは理解できないとして、追加調査報告書に対する意見書(所見)を提出した。
2022年6月6日 女子生徒の遺族は、いじめと自殺の因果関係は認められないという調査の結果を不服として、改めて堺市に対して再調査を求める要望書を提出した。
12月 堺市は「調査内容に間違いがない」として、再調査を実施しない決定をした。
教育委員会と市の対応
堺市教育委員会 長山秀基教育監:
市議会において、「いじめがなくなった後も不登校状態が長期間にわたって続いたことによりまして、「本人が孤独感を深め、追い詰められていった」と記載されており、自殺に至る状況に、いじめが原因となった不登校が、何らかの影響を与えた可能性は否定していないものでございます。」と発言した。
堺市教育委員会 日渡円教育長:
市議会において、「いじめへの学校の対応が不足したことで不登校が生じた」と謝罪した一方で、自殺の責任については言及を避けた。
堺市 永藤英機市長:
事件を受けて、いじめや不登校に対応する新しい部署を設置すると発表したが、女子生徒に関する再調査はしない意向を示している。
事件のその後
2023年3月24日 堺市教育委員会は、不登校の状態にあった女子生徒への週1回の面談を、学校からの指示にも拘わらず実施せず、また実際にはしていなかった保護者への電話連絡を「1~2週間に1度していた」と虚偽の報告をしていた女子生徒の担任だった女性教諭(51歳)を減給10分の1(1ヵ月)の懲戒処分とした。当時の男性校長(63歳)も、教諭への管理監督が不十分だったとして同様の処分とした。
女性教諭は、「保護者とコミュニケーションがなかなかとれなかったので避けるようになってしまい、連絡をとらなくなったが、後から聞かれた時には『連絡をとっていた』と、自分で自分を守るために言ってしまった。」と話している。