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2015年(平成27年)9月19日午前4時半頃、福島県立会津高等学校で、同校の女子生徒(高校2年生)がトイレ内で首を吊って自死しているのを教員が発見した。遺書はなかったが、自分自身や友人への思いを綴ったメモが見つかった。女子生徒は18日の登校後に帰宅せず、保護者が県警に捜査願を出しており、教員が校内を捜索し発見に至った。(死亡推定日は9月18日)
学校は、女子生徒が所属する文化系クラブの約60人に記名式アンケートを実施し、部活内での人間関係のトラブルを指摘する回答が7人からあった。「他者からの言動が、精神的な負担となったのではないか」との内容の記述もあった。
県教委は25日夜、女子生徒の自宅を訪問した。生徒の両親からは「いじめがあったのではないか」との指摘があったという。
学校は2015年4月の担任との面談を通して、女子生徒が部活動で人間関係の悩みがあることを把握し、5月に学内で情報が共有されたという。顧問が4月から5月にかけ、数人の生徒に注意し、学校側はトラブルは解決したとみていたが、女子生徒は6月上旬から休部し、8月に復帰したが、9月は部活動に参加していなかった。
2016年2月19日、県教委の第三者委員会は女子生徒が所属していた吹奏楽部の上級生による練習で厳しく叱ったり無視するなどの行為をいじめと認定したが、女子生徒には他にも悩みがあったと判断し、自殺といじめとの直接的な因果関係を認めなかった。
2017年3月28日、再調査委員会は部活動内のいじめと自殺の因果関係を認定し、学校が積極的な対応を怠ったのも要因であると認めた。
調査委員会
調査委員会の設置•調査内容
2015年9月30日、県教委は、いじめの有無を調査する第三者委員会「いじめ問題対策委員会」を設置。
調査委員
委員会は5人。氏名公開。
委員長:鈴木庸裕福島大学人間発達文化学類教授(生活指導)
委員:臨床心理士
弁護士
社会福祉士
児童相談所の心理判定員
調査報告書•その後
2016年2月19日、調査委員会は、部活動で先輩の1人から受けていたいじめが自殺の一因だったと発表した。一方で学業不振など、いじめ以外に抱えていた悩みも影響した可能性があるとして、いじめと自殺の直接的な因果関係は否定した。
第三者委は、生徒が所属していた吹奏楽部で2014年秋~2015年春頃、先輩の1人から練習で厳しく叱られたり無視されたりし、学校を休みがちになっており、「先輩が怖い」「部活に行こうとすると気持ちが悪くなる」などと同級生に打ち明けていたことから、一連の行為がいじめだったと認定した。
一方で、生徒は2015年6月に休部し、先輩が引退後の8月に復帰していた。亡くなるまでの間、先輩との接触は確認されなかったため、再開した部活動で技能が向上しない焦りや欠席が多くなったことによる学業不振、部活を休み居場所がなくなったことなどを挙げ、女子生徒には他にも悩みがあったと判断し、自殺といじめとの直接的な因果関係を認めなかった。
また、学校の対応について、生徒間のトラブルや悩みを把握できず、教員間の情報共有も不十分だったとして、再発防止を徹底するよう県教委に求めた。
遺族に開示された報告書は、マスコミや一般人に渡されるのと同じで、いじめを含む詳しい内容はマスキングされていた。
再調査委員会
再調査委員会の設置•調査内容
2016年4月1日、父親は①生徒が受けた精神的な苦痛について、精神科医など専門家の判断が含まれておらず不十分、②教諭らの指導が適切に行われた再検証が必要、③生徒の人間像は第三者委の認定とは大きく異なり、小中学生時代も含めて再検証すべきとして、県に再調査を要望した。(申立書は3月28日付)
女子生徒の父親は取材に「第三者委の調査には敬意を払っているが、いじめ以外の要因がクローズアップされている印象がある。いじめがなければ人間関係の悩みも生まれなかった可能性がある」と話した。
2016年4月15日、県は、遺族による再調査の要望に対して「再発防止へさらに踏み込んだ分析が必要」などと判断し、「いじめ問題調査委員会」による再調査を実施すると発表した。
再調査委員会は、いじめ防止対策推進法に基づき、県教育委員会の調査結果を踏まえ、①精神医学的•心理学的観点からの検証②学校における組織間の連携といじめ防止の理解についての検証を諮問した。
今後、遺族や学校関係者から聞き取りをして、4月16日に初会合を開き、9月をめどに調査結果をまとめる見通し。
5回の委員会。11回の調査会議。10回の調査。
家族、主治医、校長を含め教員等15名から聴き取り。
調査委員
再調査を行う委員会は保健福祉部に常設され、大学教授や弁護士、精神科医ら6人で構成。県外から新たな委員の追加も検討する。
委員長:神山敬章いわき明星大学教育学部教授
委員:板垣俊太郎福島県立医科大学医学部講師
遠藤君子福島県民生児童委員協議会副会長
酒井芳子福島県臨床心理士会副会長
鈴木靖裕福島県弁護士会こどもの権利に関する委員会委員
滝田良子福島虐待問題研究会事務局長
事務局:こども未来局
調査報告書•その後
2017年3月28日、いじめ問題調査委員会は、部活動内のいじめと自殺の因果関係を認定し、学校が積極的な対応を怠ったのも要因とする調査報告書をまとめ、県に答申した。いじめを認めつつも、自殺との因果関係は認めなかった県教委の第三者委員会とは異なる判断を下した。
報告書では、女子生徒が所属していた吹奏楽部内で、先輩部員による女子生徒だけへの無視や乱暴な言葉での注意、1人だけ廊下に出して練習から外した行為をいじめと認定した。生徒の通院記録を基に、先輩の指導が原因でうつ状態になり、自殺を招いた可能性があるとした。担任がこうしたトラブルを認識し、校内会議で議題としながらも対応を部活動の顧問に任せていたこと、部活動の顧問が問題を放置したことなどを問題視した。
女子生徒が欠席しがちとなった後も、家庭訪問を通じた見守りや生徒アンケートなどの組織的な対応を怠ったとし、「学校側の不適切な対応も自殺に追い込んだ大きな要因」と踏み込んで指摘した。
また、再発防止に向け、「校内の対策委員会などがほとんど機能せず、教職員間で情報共有がなされていなかった」と批判し、「即断せずに、いじめの疑いがあれば防止措置を取る」「生徒同士の関係が改善されたように見えても見守りを行う」など11項目の提言を盛り込んだ。(神山委員長によると、いじめの第三者委が学校の対応が自殺につながったと明確に指摘するのは異例だという。)
教職員が、県教委の報告書をほとんど見ていないことも調査過程で判明した。
「福島県いじめ問題調査委員会調査結果報告の概要」(PDF:4MB)
県教育庁高等教育課は「大変厳しい指摘として重く受け止める。報告書を精査した上で対応策を公表したい」とした。
女子生徒の両親は同日夕、福島市で記者会見を行い、父親は「前回の報告書の結論で覚えた違和感は解消された」とし、第三者委がいじめと自殺の直接的な因果関係を認めたことに、「大変、意味が重い。いじめに悩む多くの人を勇気づける結果」と語った。その上で、「報告書が出たことで娘が帰ってくるわけではないが、これで前に進むと思った」と述べた。
学校の対応の不適切さに踏み込んだ点も重視し、「報告書を県内教育関係者全員に読んでほしい」と強調した。「事実関係を認識していただき、自分のクラスに娘のような子はいないか、加害者とされた上級生のような子はいないか、同じような部活運営をしていないか、自分の周りを振り返ってほしい」と訴えた。
加害者の上級生に向けては「事実を振り返り、反省してほしい」と要求した。法的手段を取るかどうか、現時点では思い至っていないとした。
娘に対しては「悩みを抱え込み、つらい思いをした。あなたと同じような子が二度と出ないように検証してもらい、そういう結果が出たよと伝えたい」と声を詰まらせながら語った。
県教委は29日、校長らが遺族宅を訪問し、謝罪した。大沼博文教育次長によると、遺族からは「県内の教育関係者全員が報告書を読み、いじめをなくす取り組みを徹底してほしい」と要望があった。
県教委の大沼教育時長らは29日に県庁で記者会見を行い、自殺との直接的な因果関係を認めなかった県教委の第三者委の調査について「医学的な分析が不十分だった」と認め、「遺族に対して生徒の心理的な影響や通院歴などを聞き取りし、一定の判断をした。ただ(県の第三者委は)精神医学的な視点などで詳細な分析だった。その部分が不十分だったというのは認めざるを得ない」と述べた。調査の在り方について「今後、いじめに関する重大事態が発生して第三者委を組織した場合、医学的、心理学的な視点からの委員補充を検討しなければならない」との考え方を示した。
今後、県教委は一連の経緯をまとめた第三者委の報告書を教育現場で共有し、生徒指導に役立てる。大沼教育時長は「教職員同士が議論したり、類似の事案がないかを確認したりするような形で教訓にしたい」と説明した。
関係教職員への処分
2017年7月26日、当時の教頭と教諭3人の計4人を訓告や厳重注意の処分とした。退職した当時の校長について、県教委は「戒告の懲戒処分に該当する」と判断した。教頭はアンケートの実施などいじめ防止の体制を整えず、顧問はいじめを放置した。他の2人は対応を顧問に一任し、職務怠慢だと判断した。当時の教頭と部活顧問を文書訓告、学年主任を口頭訓告、生徒指導主事を厳重注意とした。当時の校長は退職しており処分できないが、戒告相当と判断した。年齢、性別は非公表。
参考資料
“福島県会津地方•県立高校いじめ自殺” 地上の涙 他