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2012年(平成24年)9月26日、東京都の小中一貫校の品川区立伊藤学園の男子生徒(中学1年生•12歳)は、別の小学校から入学直後から複数の同級生からクラスで無視されたり、殴られたり、蹴られるなどの暴行や暴言を受けたことを苦にして、自宅マンションの自室で首吊り自死した。机の上に「さよなら」と書かれたメモがあった。
事件直後に学校側が同級生らに聞き取り調査をしたところ、「クラスで無視されていた」「『消えろ』『バカ』などと言われていた」「廊下で複数の生徒に殴られたり、蹴られたりしていた」などの証言があった。校長は、「いじめが自殺の原因になった可能性が高い」と認めた。
7月に学校が実施したいじめに関するアンケートで、「5月に文房具を壊された」などと回答してたが、「解決しそう」という選択肢に丸をつけていたため、いじめの認知件数に含めなかった。同月、男子生徒が集団暴行を受けた時に教員が加害生徒らを指導したこともあったが、男子生徒の母親から受けた相談を担任教諭が「記憶にない」と証言するなど、学校がいじめに対応できなかった点も問題視されている。
2012年11月5日、調査委員会は、男子生徒がクラスのほとんどからいじめを受けており、「生徒を追い詰め自殺の誘因になったと判断せざるを得ない」との報告書を公表した。
2019年1月9日、2019年1月9日、男子生徒の両親が男子生徒が自殺したのは同級生のいじめが原因だったとして、東京都や品川区、当時の担任、当時の校長、加害者の同級生14人とその保護者らを相手取り提訴した民事損害賠償訴訟で、東京地裁(中吉徹郎裁判長)は、①同級生側と区が解決金を支払う②同級生らは自分たちの行為で生徒の心が傷ついたことを認める③当時の担任は、生徒がいじめを複数回訴えたのに十分に調査しなかったことを認める④区は再発防止策を誠実に実施する-などの内容で和解が成立した。
同校では同年2月28日に品川区立伊藤学園小学生自死事件が起きており、同じ品川区の小中一貫校日野学園では同年7月18日に品川区立日野学園中学生自死事件が起きている。
事件の経緯
(茶色の文字は、学校と教育委員会の対応です。)
2012年4月、男子生徒は別の小学校を卒業後、同校に入学した。
男子生徒は入学当初から、「きもい」「避けたほうがいい」などと小学校の同級生らに吹聴され、いじめのターゲットとして目を付けられていた。
当初は「からかい」程度だったが、4月下旬から6月にかけて、被害生徒が筆箱に入れていた赤ペン、ボールペン、シャープペン、ホッチキスがなくなったり壊されたりした。
5月から「きもい」「うざい」「死ね」などの暴言を受けるようになり、5月中旬には担任がこれらの暴言を耳にしている。けんかをきっかけに、同級生から突き飛ばされたり、わざとぶつかられたりするようになった。
5月から6月にかけて「きもい」「○○菌」などの暴言や物を壊すことが日常化。こうした「言葉の暴力」や「ばい菌扱い」にクラスのほとんどの生徒が関わっており、調べでは同学年の28人の男女が暴言を言ったという。
具体的には、被害生徒に触れたときに汚いものに触れてしまったようなそぶりを見せる、「被害生徒が使った水道は使わないほうがよい」と言う、被害生徒と話すことを異常なことのように扱う、給食中に机を離すなどの行為があった。同時期に、被害生徒は濡れた靴下を投げつけられたり、上履きが女子トイレに投げ入れられたりといったいじめも受けていた。
同じ頃、特定の男子による身体的ないじめも始まった。調べでは、クラスの6人の男子生徒を中心として暴力行為が行われるようになった。すれ違いざまに殴る、くるぶしを蹴る、腹を殴る、かかと落としをする、転ばせるなどの行為がなされた。
6月には、同級生の一人に家の裏までつけられ「学校で殺すぞ」と脅迫まがいのこともされていたという。7月には10人ほどの男子生徒から蹴られる事態にまで発展し、教員が指導したこともあった。この月に男子生徒の母親は学校の担任に相談したと証言するが、担任は脅しの相談は「記憶にない」としている。男子生徒が同級生に小突かれている行為を見た教諭もいたが、それ以上の対応にはつながらなかった。
9月になると、暴力を一方的に受けるようになった。特定の男子生徒が転ばせる、蹴るなどのいじめを継続。同時に周囲の男女が「きもい」「○○菌」などと言ういじめも増加した。
また、いじめはクラスだけでなく、小学校からいじめていたメンバーを中心に他クラスや部活動にも拡大。男子生徒は他クラスの男子生徒から追いかけられて転ばされたり、蹴られたりするようになった。クラス内での暴力は減ったというが、ある男子からは柔道技を掛けられるなどしていた。清掃中に机をじかに触れないようにモップに引っ掛けて運ばれる、ノートがなくなるなどのいやがらせも止まず、「ばかじゃん」といった言葉の暴力はむしろ増えたという証言もある。
部活動ではボールをぶつけられるなどのいじめがあった。計32人から暴力や暴言を受けており、学年全体で「攻撃してもいい」とする雰囲気があったという。すれ違いざまに殴ったり、腹を蹴ったりしたと同級生6人が認めている。事後アンケートの回答では、同学年の生徒190名のうち約半数にあたる98人が悪質ないじめの存在を知っていたとした。
9月25日、男子生徒によく暴力を加えていたある男子生徒が、からかうつもりで「大親友になろうぜ」と声をかけた。男子生徒が「別に良いけど、あ、そう」と了承したので、「うそー」と言った。すると男子生徒は、「何だよ」といって走っていってしまったという。
9月26日、男子生徒は休み時間も、複数の男子生徒に囲まれて蹴られていたという。
同日午後7時35分頃、男子生徒が品川区大井の自宅の自室で、2段ベッドの手摺に空手の帯を巻き付けて首を吊っているのを母親が発見し、病院に運ばれたが死亡が確認された。警視庁大井署によると、近くの机の上に「さよなら」と書かれたメモがあった。男子生徒は両親と3人暮らしで、この日は午後4時頃に学校から帰宅していた。
9月27日、男子生徒の自死を受け、学校は同学年の生徒全員に対する個人面談やアンケートを実施した。「男子生徒が『ばか』や『消えろ』と悪口を言われていた」「無視されていた」などの回答があったという。
同日、品川区は調査対策委を設置した。1年生にアンケートや面談をして調査を開始した。
9月28日、校長は記者会見を行い、男子生徒に対するいじめがあったことを認め、「いじめが自殺につながった可能性が高い」との見方を示した。
校長によると、男子生徒は2012年4月下旬、「シャープペンシルがなくなった」と担任の男性教諭(55歳)に訴え、5月には「シャーペンが壊された」と2回相談。担任教諭がクラス全員に注意したが、壊した生徒は特定しなかった。校長は「担任がクラス全体に指導し、問題が起こらなくなったので解決したと考えた。当時はいじめでなくいたずらと認識していた」と説明し、「十分な対応ができず、申し訳ない」と謝罪した。
暴行の有無については「調査中で答えられない」としつつも、そうした情報があることを認めた。複数の生徒は朝日新聞の取材に対し、「教室で暴力を振るわれていた。相手は主に1人。多くて一度に3人ぐらい」「昼休みに殴られていた」などと話した。
共同通信の取材にも同級生が「9月上旬、男子生徒が休み時間に廊下で複数の生徒に殴られたり、蹴られたりしているのを見た」と証言した。同級生によると、男子生徒は1学期にも複数の生徒から暴力を受けていたが、その際は「嫌がっているようではなく、じゃれているようにも見えた」という。だが、夏休み明けの9月上旬の暴力は「一方的でひどかった」といい、いじめがエスカレートした可能性がある。学校は暴力の状況を明らかにしていないが「事実関係をしっかり調査したい」とした。
学校が夏休み前の7月18日に実施したいじめに関するアンケートにも、男子生徒は「シャープペンを壊されたことがある」などと回答していた。学校などによると、アンケートは、いじめに遭った大津市の中学生の自殺を受け、品川区教育委員会が区内の小中学校を対象に実施。困っていることなどを記述や選択肢で聞いた。学校はアンケート結果から、いじめと疑わしい内容を含め4件について、区教委を通じて都に報告した。
男子生徒は「物を壊された」と書いたが、現状を選択肢で尋ねた設問には「解決しそう」と回答した。学校は、生徒がアンケートに5月の件を書いたため、6月以降は壊されたことはないと判断した。問題が解決したとしていじめの認知件数に含めず、都には報告しなかったいう。校長は9月29日、東京新聞の取材に「適切な対応ができなかったことは否定できない」と対応の甘さを認めた。
その後、区の調査委員会が発表した報告書によると、男子生徒は「困ったことはあるか」の質問に「ある」に「◯」をし「2度ほど物を壊されている」と回答していた。「今はどうなっているか」という質問には「解決できそう」に「◯」をした上で「?」もつけ「今はおさまったが、次にまた起こらないとも限らない」と回答。その後、担任が声を掛けたところ「大丈夫」と回答があり、「いじめの事例」から除外した。
2012年11月5日、学校は午後6時半から約600人の保護者に調査報告書の内容を説明した。質問や要望を尋ねるアンケートを配布し、22日にまとめて回答するという。参加した保護者の男性は「自分が把握しているいじめ内容が報告書に盛り込まれていたので、一定程度、きちんと調べていると安心したが、もう少し調査が必要そうだ」と話した。
2013年1月31日、遺族が警察に、暴行容疑で被害届を提出した。
調査委員会
調査委員会の設置•調査内容
2012年9月27日、区は、教育長、教育次長、当該校校長からなる「緊急調査対策委員会」を設置した。(1~6回会議)
10月1日、7回会議から、外部の委員2名を追加した。
10月9日、委員を全て入れ替え、外部委員6名に変更し、「調査対策委員会」とした。
10月11日、新委員による第1回調査対策委員会開始した。
10月16日、区教委は調査対策委員会のメンバーを全て入れ替え、男子生徒の遺族や、第三者の学識経験者ら6人を変更したことを明らかにした。自殺した子供の調査に遺族が参加することは極めて珍しい。区教委の太田元指導課長は「調査の客観性と透明性を保つため。遺族の気持ちに沿うことを考えた」と説明した。一方で調査中を理由に変更の時期や各委員の職業は言わなかった。区教委は10月中を目処に結果をまとめる意向を示した。
計5回会議の会議で、報告書をまとめた。
調査委員
区は当初、校長ら学校関係者と区教委で調査委員会を構成していたが、その後、メンバーをすべて入れ替えた。
委員6名。氏名非公開。
遺族1人、学識経験者4人、都教委1人(学識経験者のうち1人は遺族が推薦)
調査報告書•その後
2012年11月5日、報告書46頁。資料133頁。
調査対策委員会が報告書を区議会に提出した。
「当該校の7年生において、4月からAに対するいじめが始まっていた。」「Aをいじめる状況は学級を中核にして広範囲に広がり、長く続いていた」と認定した。いじめと自殺との因果関係について、「密接な関係があった」「自殺の誘因」と判断した。学校•教委の責任について、組織的な機能を果たしていない、教職員の人権感覚のなさ、教職員の優越意識を起因とする油断と指摘した。行政指導が十分になされていなかったとした。教委、学校の「責任は重い」と結論付けた。
2012年11月5日に区教育委員会は、男子生徒がクラスのほとんどからいじめを受けており、「生徒を追い詰め自殺の誘因となったと判断せざるを得ない」との調査報告書を区議会文教委員会に出した。報告書は、学校がいじめに対応できなかった点も問題視し、「命を失わせた教育的責任は重い」と指摘した。一方で、いじめへの対応について遺族と担任の主張が食い違い、事実関係に両論が併記される部分も残った。
報告書によると、いじめを受け自殺した男子生徒は4月の中学校入学当初から、「きもい」「避けたほうがいい」などと小学校の同級生らに吹聴され、いじめのターゲットとして目を付けられていた。
当初は「からかい」程度だったが、4月下旬から6月にかけて、被害生徒が筆箱に入れていた赤ペン、ボールペン、シャープペン、ホッチキスがなくなったり壊されたりした。
5月から「きもい」「うざい」「死ね」などの暴言を受けるようになり、5月中旬には担任がこれらの暴言を耳にしている。けんかをきっかけに、同級生から突き飛ばされたり、わざとぶつかられたりするようになった。
5月から6月にかけて「きもい」「○○菌」などの暴言や物を壊すことが日常化。こうした「言葉の暴力」や「ばい菌扱い」にクラスのほとんどの生徒が関わっており、調べでは同学年の28人の男女が暴言を言ったという。
具体的には、被害生徒に触れたときに汚いものに触れてしまったようなそぶりを見せる、「被害生徒が使った水道は使わないほうがよい」と言う、被害生徒と話すことを異常なことのように扱う、給食中に机を離すなどの行為があった。同時期に、被害生徒は濡れた靴下を投げつけられたり、上履きが女子トイレに投げ入れられたりといったいじめも受けていた。
同じころ、特定の男子による身体的ないじめも始まった。調べでは、クラスの6人の男子生徒を中心として暴力行為が行われるようになった。すれ違いざまに殴る、くるぶしを蹴る、腹を殴る、かかと落としをする、転ばせるなどの行為がなされた。
6月には、同級生の一人に家の裏までつけられ「学校で殺すぞ」と脅迫まがいのこともされていたという。7月には10人ほどの男子生徒から蹴られる事態にまで発展し、教員が指導したこともあった。この月に男子生徒の母親は学校の担任に相談したと証言するが、担任は脅しの相談は「記憶にない」としている。男子生徒が同級生に小突かれている行為を見た教諭もいたが、それ以上の対応にはつながらなかった。
9月になると、暴力を一方的に受けるようになった。特定の男子生徒が転ばせる、蹴るなどのいじめを継続。同時に周囲の男女が「きもい」「○○菌」などと言ういじめも増加した。
また、いじめはクラスだけでなく、小学校からいじめていたメンバーを中心に他クラスや部活動にも拡大。男子生徒は他クラスの男子生徒から追いかけられて転ばされたり、蹴られたりするようになった。クラス内での暴力は減ったというが、ある男子からは柔道技を掛けられるなどしていた。清掃中に机をじかに触れないようにモップに引っ掛けて運ばれる、ノートがなくなるなどのいやがらせも止まず、「ばかじゃん」といった言葉の暴力はむしろ増えたという証言もある。
部活動ではボールをぶつけられるなどのいじめがあった。計32人から暴力や暴言を受けており、学年全体で「攻撃してもいい」とする雰囲気があったという。すれ違いざまに殴ったり、腹を蹴ったりしたと同級生6人が認めている。事後アンケートの回答では、同学年の生徒190名のうち約半数にあたる98人が悪質ないじめの存在を知っていたとした。
こうした事実関係から報告書は「いじめる状況は学級を中核にして広範囲に広がり、長く続いていた」と結論付けた。
警視庁大井署も報告を受け、今後、暴力などいじめの事実関係を確認するとした。
2012年11月15日、品川区長が「さらに調査すべきことがある」として、調査の継続を表明した。
加害生徒の処分
2013年7月12日、警視庁は暴行の非行内容で同級生だった少年(13歳)を児童相談所に送致し、13~14歳の5人の少年(いずれも元同級生)を同相談所に通告した。1月に男子生徒の父親が大井署に被害届を提出し、警視庁は生徒約120人と中学の教諭約20人から事情聴取していた。
非行内容は2012年5~9月、校内外で男子生徒をペットボトルで叩いたり、濡れた靴下を投げつけたり、殴る蹴るの暴行を加えたりしたとしている。いずれも内容を認め「遊びの延長だった」などと話しているという。
少年事件課は「不法行為の有無について調べており、いじめと自殺の因果関係は判断できない」としている。送致された少年は日常的に暴行を繰り返していたとされ、家庭裁判所で審判を受けるよう意見書を付けた。
民事損害賠償請求訴訟
提訴
2014年4月、男子生徒の両親は男子生徒が自殺したのは同級生のいじめが原因だったとして、東京都や品川区、当時の担任、当時の校長、加害者の同級生14人とその保護者らを相手取り、約9000万円の損害賠償を求めて提訴した。生徒の父親は「いじめという行為による結果の重さを認識してほしい、同じ犠牲を繰り返さないでほしい、との思いから提訴を決断した」と話した。
第1回口頭弁論が2014年4月16日にあった。
区教委が設置した調査対策委員会は、いじめが自殺の「誘因」と認める報告書をまとめていたが、被告の多くは争う姿勢を示した。
和解(東京地裁)
2019年1月9日、東京地裁(中吉徹郎裁判長)は、①同級生側と区が解決金を支払う②同級生らは自分たちの行為で生徒の心が傷ついたことを認める③当時の担任は、生徒がいじめを複数回訴えたのに十分に調査しなかったことを認める④区は再発防止策を誠実に実施する-などの内容で和解が成立した。
原告側によると、いじめと自殺の因果関係は盛り込まれなかったが、「解決金を支払う和解なので、因果関係はあったと評価している」と述べている。
和解成立後に会見をした男子生徒の父親は「被告の生徒に自分の行為を考えさせる内容になっており、納得している」と評価し、「いじめは命に関わる重大な過ち。教師や親はいじめを受けている子の目線に立ってあげてほしい」と求めた。
区教委は「改めて心からの哀悼の意を表します。いじめ問題への取り組みを進め、安心して学べる学校づくりに全力を尽くします」とコメントした。
参考資料
“東京都品川区•区立中学校いじめ自殺” 地上の涙 他