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2013年(平成25年)4月10日、神奈川県の湯河原町立湯河原中学校の男子生徒(中学2年生•13歳)は、入学当初から同級生の男子生徒3人に柔道技で倒されたり、馬乗りになられたり、頬や頭などを平手で叩かれたり、物を隠されたり、かばんを持たされたり、部屋に閉じ込められたり、ハーフパンツを下げられたり、「きもい(気持ち悪い)」と暴言を吐かれるなど暴行を繰り返し受けたことを苦にして自宅の自室で自死した。部屋にはメモのような遺書があった。
2014年3月4日、第三者委員会は「いじめと自殺との間には関連性が認められる」と認定する調査報告書を公表した。報告書では、「正義感があり、優しかった」という生徒が自殺に至った心理状況を分析したほか、いじめに関するアンケートの保管期間を守らず破棄していた町教委や学校側の問題点についても言及し、「学校側が丁寧に対応していれば、未然に防げた可能性もあった」と指摘した。
事件の経緯
2012年被害生徒へのいじめは中学入学当初から始まり、亡くなるまでの約1年間、部活動や学校生活全般で複数の同級生から暴力や嫌がらせを受け続けた。
7月以降、同級生で被害生徒と同じ部活動に所属していた男子生徒3人は被害生徒を柔道技で倒す、馬乗りになる、頬や頭などを平手で叩く、物を隠す、かばんを持たせる、部屋に閉じ込める、ハーフパンツを下げる、「きもい(気持ち悪い)」と暴言を吐く-などのいじめを執拗にしており、冬休み前後からは毎日のように繰り返された。
12月と2013年2月に学校は被害生徒の母親から「(生徒の)帰宅が遅い」と相談を受けていた。1回目はすぐに帰宅したが、2回目は同じ部活の生徒と無理矢理一緒に居させられたとの証言があったため、部活の顧問が「人の嫌がることはよそう」と指導したという。
2013年2月下旬の正午頃から午後1時頃までの間の5~10分間、3人の加害生徒は、同校体育館で被害生徒の体を押さえ付けて背中などを紙筒で交互に数回殴打した。1人が被害生徒を壁に押し付けてシャツを捲り、画用紙を丸めてガムテープを巻いた筒を使って2人が殴った。
4月9日、加害生徒3人は被害生徒の腕を引っ張って教室に入れないようにするいじめをしていた。
4月10日午後3時50分頃、男子生徒が自宅の自室で首を吊っているのを帰宅した母親が発見し、生徒は病院に搬送されたが、死亡が確認された。この日の授業は午前中のみで、生徒は正午過ぎには帰宅していた。部屋にはメモのような遺書があり、「誰も僕の心をわかってくれない さよなら」と書かれていた。
4月11日、学校は男子生徒の同級生192人にアンケートを行った結果、約2割の生徒から「複数の同級生から叩かれたりしているのを見た」「かばんを持たされていた」などと、男子生徒がいじめを受けていることを窺わせる回答があった。同級生の実名を挙げた回答もあり、名前を挙げられた同級生の一部はいじめを行ったことを大筋で認め、「自分のしたことで、こうなってしまったのかもしれない」と話す生徒もいたという。
同校2年の男子生徒(13歳)は「人に頼まれると何でも引き受ける人で、先生からの信頼が厚かった。悩んでいる様子もなかったのになぜ……」とショックを隠しきれない様子だった。
また、男子生徒のある同級生は、取材に次のように答えた。「1年生の後期から殴られたり、肩パンとか、蹴られたりとか。黒板にちっちゃな紙に書いてあって、『助けてください』と」
4月14日、男子生徒の告別式が静岡県熱海市の潮音寺で営まれ、親族や同級生ら約100人が参列した。出席者によると、父親は「助けてあげられず、ごめん」と涙ながらに遺影に語りかけたという。
町教委によると、全国でいじめが社会問題化していることを受け、同校では、少なくとも3年前から2か月に3回のペースでいじめに関するアンケートを実施しているが、男子生徒がいじめに遭っているとの回答や男子生徒からの相談がなかったため、いじめには気付かなかったという。(但し、このアンケートは1年間の保管期間を守らず破棄されていたことが後に判明した。)
7月16日、町教委は「暴力や嫌がらせなど重大ないじめ行為が自殺につながった可能性が考えられる」との調査結果をまとめた。
調査結果によると、同級生の男子生徒3人が2012年7月から、柔道技で倒す、馬乗りになる、頬や頭などを平手で叩く、物を隠す、かばんを持たせる、部室に閉じ込める、ハーフパンツを下げる–などのいじめを執拗にしていたという。自殺前日の4月9日にも、腕を引っ張って教室に入れないようにするいじめを受けていた。
加害生徒の処分
神奈川県警は2013年7月10日、2013年2月下旬の正午頃から午後1時頃までの間の5~10分間、同校体育館で被害生徒の体を押さえ付け、背中などを紙筒で交互に数回殴打するなどしたとして、同級生の少年3人を暴行の非行事実で児童相談所に身柄と共に送致した。同課によると、3人と被害生徒は同級生で、同じ部活動に所属。1人が被害生徒を壁に押し付けてシャツを捲り、画用紙を丸めてガムテープを巻いた筒を使って2人が殴った。
県警は更にその後、別に5件の暴行をしていたとして3人を追送致した。
3人はその後、横浜家裁小田原支部での審判を経て、最終的に児童相談所送致が決定した。横浜家裁によると、児童相談所送致となった少年は、訓戒や誓約書の提出、児童福祉司による指導といった措置を受けるという。
調査委員会
調査委員会の設置•調査内容
2013年6月21日、「湯河原町いじめに関する調査委員会設置条例施行規則」を交付。
2013年8月10日、町教委の付属機関として、「湯河原町いじめに関する調査委員会」を設置。
①自死といじめとの関連、②自死に至るまでの事実調査の検証、③学校及び教委の事後対応の検証、④今後に向けての取り組みの検討、⑤学校及び教委が執るべき措置への提言、について検討を行う。
計10回の委員会開催。
「調査報告書」、アンケート調査、聴き取り調査の報告書、メモ、その他資料を調査。
調査委員
委員5名。氏名公開。
委員長:小林正稔神奈川県立保健福祉大学教授(臨床心理士)
副委員長:諸岡紀夫元神奈川県立高等学校校長
委員:清家洋二精神科医
影山秀人弁護士
西野博之NPO•フリースペース代表
調査報告書•その後
2014年3月2日、調査委員会は「町立湯河原中学校2年生の男子生徒の自死は、いじめの結果によるものと推認でき、いじめと自死の間には関連性が認められる。」と答申した。
3月4日、第三者委員会は「いじめと自殺との間には関連性が認められる」と認定する調査報告書を公表した。報告書では、「正義感があり、優しかった」という生徒が自殺に至った心理状況を分析したほか、町教委や学校側の問題点についても言及した。
報告書によると、生徒へのいじめは中学入学当初から始まった。生徒は部活動や学校生活全般で複数の同級生から暴力や嫌がらせを受け、自殺までの約1年間続いた。
特に7月からは「紙を丸めた棒でたたかれる」「『きもい(気持ち悪い』と言われる」など徐々にエスカレートし、冬休み前後からは毎日のように繰り返された。第三者委は「心身に与えた苦痛は相当なものだった」と指摘し、自殺との関連性を認めた。
遺族からの聞き取りも行い、生徒が自殺に至った心理状況も分析した。自殺時に見つかったメモには「誰も僕の心をわかってくれない さよなら」と書かれていたが、加害者への怒りや憤りは記載されていなかった。
生徒持ち前の「正義感や生真面目さ」も考慮し、メモの意味を「単にいじめへの苦痛や不安のみでなく、自分の力で解決できないことに苦しんでいることすらも伝えられずにいる自分を暗に大人たちに理解してほしかった」と推察した。
自殺発生後の校内アンケートでは、いじめの事実が多数明らかになったが、教員や生徒は誰も通報や指摘をしていなかった。第三者委は「中学校としていじめに対する明確な共通認識がなく、理解不足だった」と批判した。
生徒は担任に提出する自己紹介カードの裏面に「たまには悩みを聞いてください」と書いていたほか、部活動からの帰宅が遅れ保護者から学校に電話が入るなど、学校側がいじめに気付く機会はあった。こうした天から第三者委は「学校側が丁寧に対応していれば、未然に防げた可能性もあった」と指摘した。
また、学校が定期的に実施していたいじめに関するアンケートを1年間の保管期間を守らず、破棄していたことも判明し、学校のいじめに対する取り組み姿勢にも疑問を投げ掛けた。
2014年3月2日 「答申書」(PDF:55KB)
「湯河原町いじめに関する調査委員会調査報告書」(PDF:1016KB)
参考資料
“神奈川県湯河原町•町立湯河原中学校いじめ自殺” 地上の涙 他