高知市立長浜小学生水泳授業死亡事故

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2024年(令和6年)7月5日、高知市立長浜小学校に通う男子児童(小学4年生•9歳)は、水泳授業中にプールで溺れ、救急搬送されたが死亡した。長浜小学校のプールは濾過ポンプの故障で使用できず、4~6年生は小学校のプールよりも水深が10cm以上深い近隣の市立南海中学校のプールで授業していた。

2025年3月31日、事故検証委員会は事故の直接の原因は教員が男子児童の位置を把握しないまま指導したことが最大の原因だったと指摘し、その背景には長浜小が水深の深い南海中のプールを使うのに「学校も市教委も何ら対策を講じていなかった」ことなど事故に繋がる複数の要因があり、実際には事故は複合的な要因で起きたことを明らかにした。

2024年7月、高知県警は当時の市教育長や校長ら7人を業務上過失致死の容疑で書類送検した。
2025年8月6日、高知地検は「事故は容易に予見できたが防止措置を何ら講じなかった」として、業務上過失致死の容疑で当時の校長と現場で指導した教頭、担任教諭2人の4人を在宅起訴した。

事故の経緯

1995年(昭和30年)5月11日に瀬戸内海で起きた乗客の小中学生ら168人となった紫雲丸事故で、高知市立南海中学校の修学旅行生28人が死亡した。
長浜小の卒業生の多くが南海中に進学するため、小中連携校でもあり、児童は紫雲丸事故について授業で教訓を学び、毎年、追悼慰霊祭に出席するなどしていた。

2024年6月4日、同校でプールの濾過器の劣化による故障が判明し、校長は5日のプール開きを中止し、代替策を考えた。市営や民間プールは費用面から、横浜小と横浜新町小は児童が多く除外した。浦戸小は児童が少なく、バスが手配できれば授業時間が確保できること、南海中には徒歩で行ける上に小中連携校で協力が得やすいため、同日夜にプールを借りる方法に絞った。

6月5日、校長は両校長から了承を得た。南海中校長に現地確認を求められ、校長は4年2組の担任と、5、6年担当の体育部教諭2人の計4人で訪ねた。水深表示が1.2m、1.4mと確認した。棒で推進を計ると最浅部98cm、最深部118cmだった。校長は水深が深くなる可能性は考えていなかった。
2組の担任は1組の担任と「4年の身長を考えると中学プールは難しいのでは」と話しており、現地で確認し、やはり難しいのではと印象を持った。
現地確認の際、南海中の校長が長浜小の校長に水位を下げることを提案したが、長浜小の校長は貸してもらえるだけでも申し訳ない、水位調節は現実的に困難との思いからその場で断った。
2組の担任が校長に4年の授業は難しいのではと伝えたが、校長は教育委員会と相談して決めるなどと答えた。(校長はこの会話はなかったと供述するが、あったと認められる。)
校長は、長浜小と水深が変わらない、南海中プールの南北の側面には底から数十cm上がった側段がある、徒歩で移動できる-などから4~6年生は南海中で授業ができると確信した。
教頭は、4年生も浦戸小で授業ができないか確認したが、校長は水深があまり変わらず、4年生も浦戸小にするとバスの台数や往復を増やす必要があり、予算がかかるため難しいのではないかとしたため、それ以上反対しなかった。

6月6日午前、校長は市教委学校環境整備課の主査補に、1~3年生は浦戸小で、4~6年生は南海中で授業したい旨を伝えた。
同日午後、校長は主査補から両校使用決定のメールを受信し、保護者連絡用アプリ「すぐーる」で保護者、教職員に「南海中プールは水深1.2~1.4mですが、水を浅く張っているため長浜小のプールの深さ(1.0m~1.2m)とあまり変わりません。尚、細心の注意を払い水泳指導を行いますのでご安心ください」と送った。

長浜小は教員を1人増やし3人体制で指導すると決めた。校長は6月11日、南海中プールでの5年生の授業に同行した。降水の影響からか、確認時より水位は上がっていた。
11日以降、長浜小の教職員間で水深が深くなった事実が共有され、対応策が協議されたとは認められず、深くなった理由や対応策を協議した事実も認められない。南海中は12日か13日、17日か18日に追加給水をした。

6月21日、4年生の1回目の授業は、担任2人と養護教諭が参加した。3年生時の担任は転勤し、水泳に関する引き継ぎがなく、両担任は各自の泳力を把握できていなかった。両担任は水深が5日の確認時と異なり、ほぼ満水だと認識した。
1組担任の指示で児童らが入水し、プールに立って頭まで水に浸かった。この時、「深い」と声を上げる児童がいた。2組担任は最も浅い東端にいた1組の男児が「足が底まで届かないかも」と言うのを聞いた。男児は水に頭を浸けられなかった。
2組担任は男児と一緒に潜った。男児の顔は水上に出ず、絶対に東側のプールサイドの方にいるように伝えた。その後、けのびバタ足やビート板バタ足の際、男児ら児童3人が溺れかけ、担任に救い上げられた。
授業後、両担任は校長にプールが満水で深く、3人が溺れかけたと報告した。4年生の泳力は全体的に低く、浦戸小で授業する方がいいかもしれないと伝えたが、校長は重要視せず、保護者に事態を連絡しなかった。
校長は担任から、28日の2回目の授業では特に3人に注意して見るよう言われた。

6月28日、4年生の2回目の授業は、児童を泳ぎが苦手な基礎グループと泳ぎが得意なチャレンジグループに分けた。グループ分けは本人の意思で決めた。当日、男児の母が「大丈夫やった?」と確認すると、男児は「大丈夫やった。校長先生が前におってくれた」と話した。

7月5日、4年生の3回目の授業は、担任2人と教頭が参加した。児童は両組で各18人で、午前10時10分頃始まった。午前11時頃、泳ぎの練習をしていた男児が、水深約130cmのプールサイド付近で溺れているのを他の児童が見つけ、児童2人で引き上げた。教員らは、男児が引き上げられるまで溺れたことに気付かなかったという。(事故検証委員会の報告書には「男児は5分以上もの長時間、プール内で溺水していた可能性がある」と書かれている。)

男児は1600gの低出生体重児で生まれ、身長は110cm台で学年で一番小さく、脂肪が少なく水になかなか浮かぶことができず、泳ぎが得意でないグループに属し、プールサイドに捕まってバタ足の練習をしていた。市教委の6日の説明によると、男児は事故前にも同じプールで教員に水中で抱き抱えられたことがあり、教員は校長に男児の泳力に問題があると伝えていた。

中学校のプールの水深は132.5cmから114cmで、故障中の小学校のプールは、事故後に市教委が測定したところ、深いところで水深119cmだった。

溺れた場所は、小学校のプールの最も深い水深より更に10cmほど深く、同学年の複数の児童が授業中に「溺れかけた」と話している。死亡した児童は「一番浅い所もかなり深い」「溺れないか不安」などと教諭に伝えていたが、学校側は見守りの教諭を増やすなどの特別な対策を取っていなかった。

7月6日 午後3時から保護者説明会を行うとして全校児童の保護者に連絡し、86人が集まったが、同3時30分頃、「遺族に対する経緯の説明や謝罪ができていない中で保護者会を開くのは筋違いだった」として延期を告げた。同校によると、連絡は5日夜に学校と保護者の連絡アプリを通して配信していたが、死亡した児童の保護者には開催について説明していなかったという。

7月7日 市は臨時の校長会を開いて対応を協議し、教育長はプールのある小中計54校を含む市立学校での本年度の水泳授業を中止すると明らかにした。第三者委員会による事故の検証が終わるまで続ける方針。

7月9日 同校が南海中学校のプールを利用するにあたり、市教育長はこれまで会見で「学校と協議して安全だと判断した」「何度もやり取りした」と説明してきたが、実際は協議せず、長浜小が発案した中学プール利用を2日後に認めただけだったことが明らかになった。授業が始まり、学校側は児童から不安の声が出ていることを認識しながらも、従前と同じ体制のまま授業を続けており、安全性を考慮していない実態が浮かび上がった。

7月11日 担任らは、死亡した男児が水泳の苦手なグループに分かれた後、溺れているのが見つかったバタ足練習まで10分余り姿を確認しておらず、「◯◯ちゃん(男児)がどこにおるか分からん」と児童に探させていたことが明らかになった。

7月12日 事故が起きた当日、教諭が「事故のことは誰にも言わんとってね」と児童に口止めしていたことが明らかになった。教諭は発言を否定しているが、中には約束を守って親にも打ち明けなかった子もいた。保護者は「苦しかったと思う。なぜ口止めする必要があるのか」と憤っている。

9月1日 学校は全学年対象の保護者説明会を南海中学校で開いた。会は非公開で約2時間半にわたり、保護者からは同校が安全対策を取らずに深い中学プールで授業をしたことに批判や疑問が噴出した。また、担任らが事故の際に児童の点呼を取らず、人数も把握せずに授業をしていたことが新たに分かった。

2025年11月26日、市が男子児童の遺族に損害賠償金を支払って和解することが分かった。市側と遺族側の双方が和解案に合意した。市は12月4日開会の市議会12月定例会に和解議案を提出し、可決されれば示談が成立する見通し。
市教委の重大事案検証室は事故後、学校側の過失を認めた上で、裁判所を介さず遺族と示談交渉を進めていたが、2025年11月26日の市議会運営委員会で、学校設置者の市が賠償金を支払うことで合意したと執行部が報告した。
議会側は執行部の「一日も早くお支払いしたい」との意向を受け、和解議案を開会日に採決する方針。賠償額は議案提出時に示される。

調査委員会

調査委員会の設置•調査内容

2024年8月24日 第三者による「高知市立長浜小学校児童プール事故検証委員会」の初会合が開かれた。
市教委から検証委員会に対して、「プール事故に係る事実関係の把握、発生原因の分析及びプール事故の再発防止策」について諮問を行い、検証委員会はプールの現地調査、関係者へのヒアリング、各種資料の調査等を行い、8回の会議を開催した。

調査委員

2024年8月23日 市教委は事故検証委員会の委員7人を決定した。

委員長:中内功弁護士(高知弁護士会)
委員:松井敦典鳴門教育大学大学院学校教育研究科教授(京都市立養徳小学生水泳学習死亡事故の調査委員会委員)
石丸茂偉(高知県臨床心理士会会員)
斎藤秀俊(一般社団法人水難学会理事、長岡技術科学大学教授)
皿田幸憲弁護士(高知弁護士会)
廣瀬大祐(一般社団法人高知市医師会副会長)
松本貴行(成城学園中学校高等学校専任教諭(保健体育科)、公益財団法人日本ライフセービング協会副理事長•教育本部長)

調査報告書

2025年3月31日、事故検証委員会は「高知市立長浜小学校児童プール事故検証報告書」(全331頁)を市教委に提出した。事故検証委員会は、事故の直接の原因は教員が男子児童の位置を把握しないまま指導したことが最大の原因だったと指摘し、その背景には長浜小が水深の深い南海中のプールを使うのに「学校も市教委も何ら対策を講じていなかった」ことなど事故につながる複数の要因があり、実際には事故は複合的な要因で起きたことを明らかにした。また、教育委員会、学校はプール設備の故障など不測の事態に対応できるよう余裕をもって準備することや、他校プールを借りることを検討する場合は同一校種とし、水深を確認するなどの再発防止策を提言した。

高知市立長浜小学校児童プール事故検証報告書」(PDF:10MB)
高知市立長浜小学校児童プール事故検証報告書の正誤表」(PDF:72KB)

事故検証委員会最終報告を受けて、男子児童の父親は「自分たちが知りたかった部分を詳しく書いてくれた」とコメントし、一方、中学校の校長がプールの水位を下げることを提案したのに小学校の校長が断ったことについて「メンツや体裁の話だ」「命を軽んじている」と怒りを言葉に込めた。

刑事裁判

2024年7月、高知県警は当時の市教育長や長浜小校長ら7人を業務上過失致死の容疑で書類送検した。

2025年8月6日、高知地検は「事故は容易に予見できたが防止措置を何ら講じなかった」として、業務上過失致死の容疑で当時の校長と現場で指導した教頭、担任教諭2人の4人を在宅起訴した。
起訴状によると、事故があった2024年7月5日は、長浜小のプールが故障していたため近くの中学校のプールを使用。現場で指導した教頭と担任教諭2人は、より深い中学校のプールでは泳ぎが苦手な児童が溺れる危険があると予見できたのに、浮具を使わせるなどの自己防止策を怠り、男子児童を水死させたとされる。

一審(高知地裁)

2025年11月26日、当時の校長の初公判(稲田康史裁判長)が開かれ、検察側は冒頭陳述で、被告はこの中学校のプールで初めて4年生の水泳授業があった2024年6月21日、男子児童を含む3人の児童が溺れかけたと担任教諭から報告を受け、4年生の授業では別の小学校のプールを使うべきだという意見も聞いたのに、事故防止措置の指導やプールの変更をしなかったと指摘した。
被告人質問で当時の校長は、6月の報告を受けた際に危機感を持たなかったか裁判長から問われ、「危機感とまでは思わず、そのままにしていた」と述べた。

被害者参加制度を利用して法廷に入った男子児童の両親は閉廷後、報道各社の取材に心境を語った。当時の校長が初公判で話した内容は男子児童に報告したくない内容だったとして、父親は「安全対策をしてなかったということを、あんなに胸を張るように言うもんじゃないな」と漏らし、事件に関わる供述調書を読んできたことも踏まえ、「教師をやってきた勘に頼ったり、指導要領に目を通さなかったり。そういうのがまかり通っている」と感じているといい、「責任感がない」と批判した。

裁判は2026年1月28日に結審する予定。

安全教育の専門家のコメント

桐蔭横浜大学(横浜市)の井口成明教授=安全教育学=は、中学プールを利用するに当たり、長浜小も高知市教育委員会も対策を取っていなかったことに「命を軽視しているとしか考えられない」と強い疑問を投げ掛け、「小学生のプールの水深は一番身長の低い子の半分が基本。なぜ、それすらできていなかったのか」として、長浜小で起きたプール事故を「起こるべくして起きた」と語っている1

参考資料

“高知市•水泳の授業で児童が溺れ、意識不明で救急搬送 水深が深い中学校のプールで” 高知さんさんテレビ (2024年7月5日)

【随時更新】高知市プール事故の関連記事高知新聞PLUS (2024年7月6日)

  1. 「命軽視、安全意識欠如」安全教育の専門家指摘 水深は身長の半分が基本―高知市プール事故を考える高知新聞PLUS (2024年7月23日)
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