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2014年(平成26年)1月7日朝、山形県の天童市立第一中学校の女子生徒(中学1年生•12歳)は、いじめに遭っていることを訴えるノートを自宅に残し、山形新幹線に飛び込み自死した。
ノートには「独りだった。中学に入学してからは、陰湿な『イジメ』にあっていた。何が悪いのかも分からずに、ずっと、陰口を言われていた」「本当ハ『死』ニたくなカッタだけなのに。ダレカ、タスケテよぅ」「幸せニシテよぅ」などの記述があった。
2015年10月5日 報告書(全134頁)は、クラスと部活動で続いた悪口や嫌がらせ、仲間外れを「集団いじめ」と断定し、いじめが自殺の主要な原因であると認定した。また、傍観した多くの生徒と教職員らの責任も問うた。
2016年7月26日 市が遺族に解決金500万円を支払う事を条件に、和解する方向で合意した。
事件の経緯
2013年9月 女子生徒は、学校が月1回行う調査で友人関係について不安を訴えて担任と面談した他、1学期には母親が担任に「ひとりぼっちになっていないか」などと相談したことが明らかになっている。
同年末 女子生徒は所属しているソフトボール部の冬休みの4日間の練習の内、2日間は参加し、残りは「家族の都合」「病院に行く」として休んでいた。
2014年1月7日 女子生徒は山形新幹線に撥ねられて死亡した。現場は単線区間で、高さ約1.3mの柵があり、最も近い踏切は北に約600m離れていることなどから、同生徒が自殺を図ったとみられる。
1月15日 同校校長は「いじめの存在は確認していない」と話していたが、全校生徒(532人)を対象にしたアンケートでは、いじめを「実際に見た、聞いた」と13人が回答した。「噂で聞いた」などの内容を含めると、100人以上の生徒がいじめについて記述している。
市教委は当初、いじめを把握していないとしたが、3月12日夜に女子生徒の両親が報道機関にノート(全4冊)の一部を公開したため、いじめの有無や実態を調査する第三者委員会を設置することを決めた。
調査委員会
調査委員会の設置•調査内容
2014年1月17日 市教委は、第三者委員会設置要綱を告示した。
2月中旬 要綱案を遺族に文書で提示した。
2014年9月24日 全面改訂して再告示。全15の条項(従来は全9条)で構成した。
• 委員数を4人以内から6人以内に変更する
• 会議ごとに調査や審議の内容を遺族に報告する
• 調査委員が公平で中立な調査を実施できないと遺族が判断した時、市教委に文書で解任を求めることができる
• 調査委員会が市教委から独立し、主体的に調査の方針を決定する
• 学校の保護者や卒業生を含めた調査範囲の設定
• 調査を補助する調査員の配置
• 最終的な報告書を速やかに市民に公表する
などが盛り込まれた。
13回の本委員会、28回の部門別会議。6回経過等について、直接、遺族に説明。
調査委員
市教委が4人の委員候補を遺族に提案。市の法律相談員の弁護士も入っていた。
2014年2月18日 市教委が各市議に配布した報告書には、第三者委員会に関し「委員確定後も(委員名の)公表は当面差し控える」と明記されていた。
2014年9月 調査委員会の委員6人の構成を、県内外の弁護士3人と、いじめ問題に詳しい県外の学識経験者3人とする。
遺族側は、「学校事件事故被害者全国弁護団」に推薦を求めるよう要望したが、「中立性に欠ける」として拒否。
弁護士は、県弁護士会と仙台弁護士会、日本弁護士連合会に推薦を依頼。学識経験者は、教育と臨床心理、発達心理の各分野の団体に推薦を依頼。団体が推薦した人物が自動的に選任されることで合意。
委員長:野村武司弁護士(日本弁護士連合会推薦)
副委員長:阿部定治(あべていじ)弁護士(山形弁護士会推薦)
調査報告書•その後
2015年10月5日 報告書(全134頁)は、クラスと部活動で続いた悪口や嫌がらせ、仲間外れを「集団いじめ」と断定し、いじめが自殺の主要な原因であると認定した。また、傍観した多くの生徒と教職員らの責任も問うた。
学校の対応として
• 部活動においていじめ防止等の対策を取る義務の認識に欠けていた。
• 教師のいじめに対する理解が十分ではなく、クラスや部活動でのいじめのリスクを的確に評価できず、場当たり的な対応に留まり、クラス及び部活動において人間的な重なりから、学校生活全面においていじめが起きているとの認識に欠けていた。
• 教師が知らず知らず情報の重要性を選別し、(いじめの)兆候となる情報を組織的に共有する意識に欠けていた。情報の価値、重みを選別せず全ての情報を共有すべきだった。
などと指摘した。
報告書によると、クラスには遠慮なく大声で喋り、誰彼構わず悪口を言う女子グループがあり、いじめを主導した加害生徒らが中心にいた。所属したソフトボール部でも、加害生徒ら重複するメンバーがグループを結成し、クラスと部活動で影響力を持った。
女子生徒は大人しく、1人で小説を読むことも多かったが、話せば面白い印象を持たれていた。個性の強いグループには気後れし、嫌悪感もあった。グループはそんな態度が「異質」に思え「気に食わず」「いら立ち」を覚えたとみる。
2013年5月下旬、女子生徒への悪口が始まった。「いじめは部活動とクラスで複数の生徒により行われ、身体的攻撃は認められない悪口や陰口、集団からの排斥といった集団いじめ」があったと判断した。
女子生徒は表情を変えることなく、聞いていない、気にしていない雰囲気を漂わせた。だが、7月上旬、「私何か言われてる?」とクラスメートに尋ね、普段は感情を顕にしないが、悪口への不満を漏らした。
ソフトボール部では、ペアを組む多くの練習でいつも1人余る存在にされ、相手を探し回る姿を嘲笑された。捕球できないボールをわざと投げられる光景も見られた。
2学期になり、女子生徒は誰も名乗りを上げないクラスの役職に立候補し、積極的な様子を見せていた。
ところが、9月10日前後にあった部活動のミーティングをきっかけに、いじめはエスカレートしていく。
顧問は「陰口でなく、みんなの前で」言うよう指導し、女子生徒は「仲間外れをしないでください」と泣きながら訴えた。だが、加害生徒の悪口や問題行動を非難する声が上がり、加害生徒は逆恨みの感情を持って行動を激しくした。
11月になると、悪口は言葉や黒板への書き込みを含め「常態化」した。他の生徒には無視や、仲間外れにするよう働き掛け、話しているだけで干渉した。
女子生徒は授業中までノートに絵や小説を書くことに没頭するようになり、教師に注意されている。友人と喋らなくなり、「見て分かるくらいの孤立感」があった。悪口は、冬休み前最後の練習まで続いた。
女子生徒が自死した2014年1月7日は、新築した校舎を初めて使う日だった。遺族側は、新校舎に来ないよう言われたことが引き金になったと見ている。
報告書は「一生懸命やってみたが状況の改善につながらず、自分を押し殺して心を閉ざしたが、孤立しただけでいじめは収まらず、追い詰められ、自殺を選んだ」と結論付けた。
2015年10月5日 「「天童市立中学校に通う生徒の死亡事案に関する調査委員会」報告書【概要版】」(PDF:20MB)
関係者の処分
2016年3月16日 県教育庁は、女子生徒の学級担任だった20歳代の男性教諭と30歳代の部活動顧問を減給10分の1(3カ月)、学年主任だった50歳代教諭と50歳代の教頭を戒告処分。自殺当時の校長は既に退職し、懲戒処分はできないが、県教育庁は重大な管理監督責任があったとしている。
和解
2016年7月26日 市が遺族に解決金500万円を支払う事を条件に、和解する方向で合意した。市長は、和解条項に書いていないことを理由に、遺族側が和解協議を通じて強く求めていた謝罪の記者会見を行わない考えを表明した。
解決金の額について市教委は「(独立行政法人日本スポーツ振興センターが運用する災害共済給付制度の)死亡見舞金(2800万円)に上乗せする額との意味合いもある」と説明した。500万円は全国市長会の自治体が加入する学校災害賠償補償保険から支払われるという。
遺族側代理人の安孫子英彦弁護士は「まだ市から正式な話は聞いていないが、解決に向け前進したことはうれしい。発生からこれまで、(女子生徒の)お父さんが亡くなったこともあり、残された家族は非常につらい思いをしていた。ようやく一安心だろう」と話していた。
2015年12月22日 「学校におけるいじめ防止等対策の推進について(追加)」(PDF:420KB)
参考資料
“山形県天童市•市立第一中学校いじめ自殺” 地上の涙 他