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2012年(平成24年)7月31日、新潟県立高田高等学校の男子生徒(高校3年生•17歳)は、所属しているラグビー部の他の部員の部活動への取り組み方についてインターネットの交流サイトで批判したことを顧問教諭に厳しく叱責されたことを苦にして自死した。
2016年7月26日、調査委員会は、顧問が男子生徒の言い分を聞かず、一方的に書き込みを削除させたことで「『何を言っても無駄』という学校側への強い不信感」を形成し、「生徒の内面に十分な配慮を欠いたまま、問題行動に対する批判だけを行った学校の一連の生徒指導が、(自殺の)最大の要因だったことは否定できない」と結論付けた。
事件の経緯
男子生徒は高校で始めたラグビーが楽しく、ラグビーをやるために学校に通っていた日々を送っていた。将来は数学教師になるという目標も定め、志望大学も決めて勉強にも励んでいた。熱心に部活に取り組むリーダーのような存在だった。
ラグビー部に所属していた部員による別の部員に対するいじりを機に部内の雰囲気が悪くなった。
2012年7月下旬、男子生徒は部活にまとまりが無いことの不満をインターネットの交流サイト(SNS)に書き込み、それをきっかけに批判された部員が部活を休むようになった。
7月26日、顧問教諭は3人の部員を呼び出し「何で直接言えないんだ」と男子生徒を叱り、全部員の前で謝らせた。また、顧問教諭は男子生徒に、他の部員に優しくできていないこと、この状況では部活を行うことはできないと発言した。(顧問教諭は第三者調査委員会に、この時に意図的に強く言ったために3人は厳しく言われたと思ったのではないだろうかと証言している。)
顧問教諭も交えて部活動に関する話し合いが続けられ、まとまりの無い状況や、だらだらした練習をどうするのかの話し合いが数日間にわたって続けられていたが、男子生徒がこのようになったのは自らの責任であるため、責任を取る形で部活を辞めると発言した。この時点でもSNSの書き込みが生徒間で拡散され続けており、批判されて部活を休んだ生徒の保護者が学校に対処を求めに来ていた。それを受けて顧問教諭は男子生徒に批判されて部活を休んだ生徒に謝罪のメールを送信させた。
7月31日、男子生徒は再び顧問教諭に呼び出され、1対1の指導を受け、書き込みを消すように指示されたため削除した。この時に男子生徒は顧問教諭から、教師を目指しているようだがうまく行かない生徒に愚痴を言っても何も始まらないため、どうしたら人がうまく動くか考えた方が良いと言われていた。男子生徒は帰宅後、夕食を取らずに自室に閉じ籠り深夜に自死し、翌8月1日の午前2時頃に亡くなっているのが発見された。
遺書には生徒同士のトラブルや顧問の教員の指導に抗議する内容が書かれており、何を言っても信じてもらえず、最終的には自分が悪いことにされるということが書かれていた。
遺族の情報公開で、学校が県教委に「トラブルによる自責の念で自殺した」と報告していたことが判明した。
調査委員会
調査委員会の設置•調査内容
学校は生徒や教員から聞き取り調査を実施し、2012年9月に調査報告書をまとめて、この内容を遺族に伝えた。
2013年3月、遺族は調査報告書の内容が遺書の内容と学校の主張がかけ離れており納得できないとして、2回にわたって県教委から独立した第三者調査委員会の設置を要望した。
9月24日、県教委は県教委所管の第三者委員会の設置要綱を説明した。
遺族側は公平な調査のために知事部局に置くべきと求め、調査の方法や内容、委員の半数を遺族側が推薦することなどを盛り込んだ修正案を提出した。
11月5日、県教委は遺族の要望を拒否し、教育関係者や弁護士などで構成される「調査検証委員会」を教育委員会の中に設置し、学校がまとめた調査報告書を検証すると回答した。
要綱案に調査目的を具体的に書くなど、一部要望は採用されたが、第三者委の調査結果が事実と異なる場合に再調査を申し立てられる仕組みは盛り込まれなかった。
2014年1月21日、学校と県教委が、「平成24年7月新潟県立高等学校生徒の自殺事案に関する第三者調査委員会」を設置した。
「平成24年7月新潟県立高等学校生徒の自殺事案に関する第三者委員会設置要綱」(PDF:96KB)
事務局は新潟県教育庁総務課に置き、学校がまとめた調査報告書を検証し、自殺後の対応の調査•検証並びに今後の再発防止を図ることを目的とする。
遺族や学校関係者などから聞き取り調査を行う。
21人に聞き取り調査を行った。
調査委員
委員7名。氏名公開。
委員長:川上耕弁護士(弁護士会推薦)
副委員長:近藤明彦弁護士(遺族推薦)
委員:勝又陽太郎新潟県立大学人間生活学部子ども学科講師(日本心理臨床学会推薦)
斎藤環筑波大学医学医療系•社会精神保健学教授(日本思春期学会推薦)
林泰成上越教育大学副学長(上越教育大学推薦)
世取山洋介新潟大学教育学部教育学講座准教授(新潟大学教育学部推薦)
藤川大祐千葉大学教育学部教授(日本教育工学会推薦)
※事務局は県教育庁総務課に置く。
※要綱で、委員が中立かつ公平な調査を行うことができないと疑うに足る相当な理由があるときは、県教委や遺族が当該委員を解嘱することができるとした。
調査報告書•その後
2016年7月26日 報告書
報告書は、顧問が男子生徒の言い分を聞かず、一方的に書き込みを削除させたと指摘した。「『何を言っても無駄』という学校側への強い不信感を形成する結果となった」、「生徒の内面に十分な配慮を欠いたまま、問題行動に対する批判だけを行った学校の一連の生徒指導が、最大の要因だったことは否定できない」と結論づけた。一方で、「指導は常軌を逸したものとは言えない」とし、指導は自殺の重要な契機の一つであるが、唯一の原因とまでは言い難いとした。
顧問の教諭が一方的に書き込みを削除するように指示したことは、追い詰められていた生徒に絶望感を抱かせるには十分な対応であったと指摘し、この指導をきっかけに、自らが自殺をすることをもってこの問題を終わらせるしかないと決断するに至ったと推測されるとした。
学校の対応としては、インターネットに係るものだけ、ゼロ•トレランス策のうち、事前ルール化を除く部分が実行され、罰の重さに一貫性がないものになっていたとした。
なお、学校側が遺書を恣意的に解釈し、動機を「自責の念」と結論付けていたことを「ずさん」と批判し、遺族にも伝えず「あまりにも自己保身的だった」と批判した。
記者会見で調査委員会の委員長は、行き過ぎではない指導であっても、生徒の気持ち次第ではそのことで残念な結果を招くということを社会に呼びかけるべきであると述べた。男子生徒の父親は真実を究明するという一つの願いが叶い、今後は新潟件教育委員会や学校は報告書を実効性のある再発防止策にどのようにして結びつけるかであると指摘した。新潟県教育長は、悲しい出来事が繰り返されないために再発防止に全力を尽くすと述べた。
2016年7月25日 「平成24年7月新潟県立高等学校生徒の自殺事案に関する調査報告書」(PDF:3MB)
9月、男子生徒の父親は事件から4度の夏が通り過ぎた時点でも、ああすれば良かった、こうすれば良かったといろいろ考えていると話し、あの時に何か一つでも歯車が違っていれば違う結果になっていたと思っていると話している。
2017年9月、県教委は、「教員の生徒指導が要員の一つであることを否定するものではないが、主因であるとは考えていない」「自殺には複数の要因が関係しているとして『主因は特定できない』などとの見解を文書で示した。
11月下旬、遺族から意見を問い糺された米山隆一知事は、「顧問の指導は常軌を逸したものではない」「教員の一連の生徒指導が主たる『法的責任を負うべき逸脱行為』であったとは考えていない」などの見解を示した回答書を遺族に送った。
参考資料
“高田高校ラグビー部生徒自殺事件” ウィキペディア 他