熊本県立矢部高校生自死事件

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2013年(平成25年)4月11日朝、熊本県立矢部高等学校の女子生徒(高校3年生•17歳)が、体育会に向けたダンスの練習で受けていたいじめなどを苦にして自死した。携帯電話に、ダンスの練習で周囲の言動に悩んでいたことや「つらい学校生活を送る中で」などの言葉が残されていた。
女子生徒と顔見知りの生徒によると、亡くなる前から仲間外れにされているという噂があったという。

加害者氏名やいじめの状況が黒塗りされていない状態の調査報告書の開示命令が最高裁で確定するまでに約2年間を要した。

事件の経緯

2013年4月11日午前7時10分頃 女子生徒は自宅敷地内の納屋で首を吊って自死を図っていたところを家族に発見され、病院に搬送されたが死亡が確認された。

女子生徒は、携帯電話のメモに「つらい学校生活を送る中で」「皆の言葉が痛い、視線が痛い」「消えたい」などと、学校でいじめを受けていることを窺わせるような記述を残していた。いじめに関係した個人の名前などは記されていなかった。

女子生徒の家族は、メモの内容について「だれが読んでもいじめがあったとしか思えない」「中傷に悩んでいたようだ」などと訴えた。

新聞報道によると、下級生の女子生徒が当該女子生徒について「亡くなる前から仲間はずれにされているといううわさがあった」と話したという。

一方で学校側は、「いじめは把握していなかった。熊本県教育委員会が2013年1月に実施したいじめ調査でも、当該女子生徒に関する被害訴えは確認できなかった」として、調査の意向を示した。

調査委員会

調査委員会の設置•調査内容

設置主体:熊本県立矢部高等学校

2013年4月下旬から全校生徒へのアンケートや、生徒•職員への聞き取りをして、7月23日に結果を遺族に報告したが、遺族は「調査が不十分」として公表を拒んだため、再調査した。

調査委員

同校の校長や保護者ら6人

調査報告書

2013年9月10日 2013年3月下旬頃から自死した4月11日まで、女子生徒は同級生らと体育会のダンスの練習をほぼ毎日、5月の体育大会で披露するダンスを他の生徒らと練習していたが、その際にリーダー的な立場の生徒から上手く踊れない女子生徒に対し、「何でできないのか」「できないのに何で言わないんだ」などと厳しい口調で繰り返し注意されていたことが学校の調査で確認されていたが、報告書では「いじめがあったが、自殺との因果関係はない」とした。

再調査委員会

設置主体:熊本県

調査委員

委員長:古賀倫嗣熊本大学教育学部教授(専門分野:教育)
委員:坂本邦彦弁護士(専門分野:法律)
横田周三医療法人横田会向陽台病院理事長(専門分野:医療)
高原朗子熊本大学教育学部教授(専門分野:心理)
紫藤千子(しとうゆきこ)紫藤社会福祉事務所(専門分野:福祉)

調査報告書

2015年1月25日 「調査報告書概要版(平成25年4月事案)」(PDF:393KB)

知事部局が設置した第三者委員会は、自死のおよそ2週間前から行われていた体育大会のダンスの練習で、女子生徒が「全然踊れていない」「顔がキモイ、動きが鈍い」と言われたことや、当該生徒が泣き出すと「お前が踊れんとが悪かろがー」と言われたこと、踊れない様子を携帯電話の動画で撮影され「マジ受ける」と笑いものにされたことなど、9項目をいじめと認定した。そのうえで、「自尊感情が低下し、強い孤立•孤独感、つらい状況への絶望的な気持ちなどが重なり、死の選択につながった」「いじめが自殺の要因のひとつとなった」とする報告書をまとめた。
また、高校側の調査はいじめを認めながら、自殺との因果関係は明確にしておらず、第三者委員会は「調査や分析が不十分」と批判した。

民事訴訟

調査報告書では女子生徒へのいじめが認定されたものの、いじめと認定された内容はダンス練習との関係ばかりで、学校生活の状況についての記述は限定的だったという。いじめに関与したとされる生徒の氏名は調査報告書では黒塗りされ、遺族側にも通知されなかった。

また、事件発生当時、学校関係者が「いじめた生徒を仏前に連れていく」と遺族に約束していたが、その約束も果たされないままになっていた。

遺族は当時の同級生などに聴き取りを行い、いじめた生徒の氏名を特定した。しかし、生徒の住所が分からないとして提訴には踏み切れなかった。

2021年になり、同校の同窓会名簿を入手したことで、いじめた生徒の住所を特定した。

提訴

2021年5月17日 遺族は、いじめに関与したとされる当時の同級生8人と熊本県を相手取り、計約8,340万円の損害賠償を求める訴訟を熊本地裁に起こした。

加害者側の主張

2021年7月28日 第1回口頭弁論で、元同級生側はいずれも棄却を求めた。

調査報告書の開示請求訴訟

提訴

2021年8月 遺族側は加害者氏名やいじめの状況が黒塗りされていない状態の調査報告書の開示を求める文書提出命令を熊本地裁に申し立てたが、熊本県は「公務員の職務上の秘密に関する文書であり、公務の遂行に著しい支障を生じる恐れがある」と主張し、申し立ての却下を求めた。

一審判決

2022年5月 熊本地裁は「遺族が事実関係を知りたいと思うのは当然の心情」「外部への開示と異なり、遺族との関係では秘密性は低い」として、同級生らの氏名を開示した報告書の提出を熊本県に命じた。(熊本県は福岡高裁に即時抗告した。)

控訴審判決

2022年11月29日 福岡高裁は抗告を退け、文書開示命令を出した。(熊本県は最高裁に特別抗告した。)

最高裁判決

2023年3月31日付 最高裁は抗告を退け、文書開示命令が確定した。

原告側は、加害者の氏名などが開示された報告書が地裁に提出された場合、閲覧制限を申し出て、訴訟当事者以外は見られないようにしていくという。

朝日新聞の取材に対して、原告側の阿部広美弁護士は「いじめに関わったとされる同級生らの氏名が開示されることで、ようやく訴訟で具体的な主張を始められる」「訴訟をしたら県が当事者に氏名を開示すると思っていた。真相を解明しなければ再発防止にもつながらず、県は何のために抗告を続けたのか」と話した。

県教委の担当者は「最高裁の決定を受けて、今後の対応を検討していく」「第三者委の調査は関係者への任意の聞き取りで成り立っている。今後の調査に開示命令の影響が出ないよう、関係者に説明していきたい」と話した。

参考資料

熊本県山都町•県立矢部高校いじめ自殺地上の涙

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