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2014年(平成26年)8月20日、鹿児島県立武岡台高等学校の男子生徒(高校1年生•15歳)は、夏季課外授業の期間中、自宅で首を吊って自死した。
自死後、保護者は始めて学校から男子生徒が1学期末から夏休み中の夏期講習にかけて計7日欠席していたことを知らされた。学校が男子生徒の友人を中心に聞き取りし、「学校生活に問題はなかった」と結論付けた。
2015年3月 半年後、遺族の要望で、同学年の生徒や同じ部活動の生徒にアンケート調査を実施した結果、「かばんに納豆を入れられていた」「(男子生徒の)棚にゴミが入れられていた」「持ち物を隠されていた」「葬式の時に生徒がトイレで『ばれたらやばくない』と話していたのを聞いた」などの回答が複数寄せられた。学校は「いじめがあったかどうかは分からない」とした。
2019年3月27日 再調査委員会は、男子生徒がかばんに賞味期間切れの納豆巻きを入れたりしたことなどをいじめと認定し、他に「いじり」や「からかい」など「心理的苦痛を感じるいじめがそれなりの頻度で繰り返されていた」とした。その結果、男子生徒は、「(学級内)のグループから排除されるのではないかという強い不安感を持つに至った」と指摘した。うつのような精神状態になったとし、「学校が苦痛になり、自分が、家族や学校の負担になるという考えもあって、自殺に至ったと考えられる」と結論付けた。また、学校の対応に問題があったとした。
調査委員会
調査委員会の設置•調査内容
2015年6月 保護者が「いじめによる重大事態が発生したと思われる」として第三者委員会の設置を申し立てる。
2015年12月17日 県教委が第三者調査委員会を設置した。
計27回の委員会を開催した。
聞き取りの対象は、教員や県教委関係者が95人(内教職員88人)。家族、生徒は6人(内生徒3人)。
同学年の生徒にアンケート調査をした。
記名式で、①事案発生時の学級、②事案発生時の部活動、③出身中学校、④当該生徒との関係性、⑤当該生徒に関わるエピソード、⑥何らかの情報を得ている場合の情報入手経路、⑦自由記述
調査委員
弁護士や臨床心理士ら5人
委員長:大坪治彦鹿児島大教授(学校臨床心理学)
委員:赤崎安隆病院理事長•委員長(精神医学)
片平眞理鹿児島県臨床心理士会
鴨志田佑美弁護士
地頭方匡(じとうほうたくみ)鹿児島県人権擁護委員連合会会長
調査報告書
2017年3月30日
かばんの棚に未開封の納豆巻きが置いてあった、隠されたスリッパがトイレから見つかった–などの事実を認定した。しかし、葬式の時の生徒発言は「発言者や意図が不明」として「いじめがあったとは断定できない」と結論付けた。「いじめが疑われるエピソードについて、当時の在校生や教職員らに聞き取り調査などをしたが、(裏付けるまでの)材料はなかった」として、いじめを受けたと断定することはできず、自殺との因果関係も認定できないと結論付けた。
一方、スマーフォンを持っていなかった男子生徒が、SNS(ソーシャル•ネットワーキング•サービス)でやり取りをする多数の生徒たちの中で疎外感を感じていた可能性があったなどとして、学校の対応不足を指摘した。生徒が自殺直前に夏季補習を3日連続で欠席していたことを保護者に伝えなかった点などに触れて、「保護者との情報共有が不足し、生徒の状態の把握が不十分」であると、生徒の自殺前の学校の対応を批判した。
「鹿児島県いじめ調査委員会調査報告書(概要)」(PDF:766KB)
2017年12月5日 遺族は、「生徒へのアンケートなどでいじめの事実が出てきたのに調査が不十分」と主張した。
• 聞き取り調査は、教職員88人に対し、生徒は3人。教職員の回答を、いじめを否定する方向で引用しており、公平性を書いている。
• 男子生徒のスリッパがトイレから見つかったことなど、調査で把握した事実をいじめと認定しない判断に誤りがある。
• 男子生徒は亡くなる直前に欠席が続いていたことを保護者に知らせなかったことなど、学校の対応の是非について十分な検証がされていない。
• トイレでの発言を再度アンケートするなど徹底的に調べるべきだった。
などの内容の意見書を県教委に提出した。
再調査委員会
再調査委員会の設置•調査内容
2017年12月21日 知事が、県教育委員会に対し、報告書は不十分として再調査を要請した。
知事部局で調査委員会を設置した。
「いじめの有無が断定されていないので、さらなる調査が必要」「遺族の思いに寄り添う調査」を要請した。
2018年6月24日 初会合
4か月後をめどに再調査結果をまとめる方針。
当時の同級生ら計135人に、より詳細なアンケートを実施した。同級生など31人に聞き取り調査を実施した。
調査委員
2017年4月2日 県は日弁連など5団体に計6人の委員推薦を4月27日を期限に依頼した。
期限までに3団体から計4人の推薦を受けたが、日本児童青年精神医学会が、「推薦する態勢が整っていない」として4月中旬に推薦を辞退した。他の1団体は、推薦の期限を5月中旬まで延ばすように申し出た。
5人。
委員長:甲木(かつき)真哉弁護士(福岡県弁護士会)
委員:板井俊介弁護士(熊本県弁護士会)
河内祥子福岡教育大教育学部准教授
河崎酵二くまもと親と子の教職員の教育相談室代表
福田みのり鹿児島純心女子大国際人間学部准教授
調査報告書
2018年11月18日 中間報告
調査に対し生徒の多くは「いたずらや遊びの延長だった」と答えたが、県の第三者委は「これらの生徒は男子生徒の心理的苦痛を感じ取れていない」と指摘した。かばんに賞味期限切れの納豆巻きを入れられたり、スリッパを隠されたりした他にもいじめが繰り返されていたと結論付けた。今後、いじめが自殺に与えた影響などについてさらに詳しく調べる方針を確認した。
2019年3月27日 全55頁
再調査委員会は、男子生徒が6月から7月頃、かばんに賞味期限切れの納豆巻きを入れられたりしたことをいじめと認定した。
他に「いじり」や「からかい」など「心理的苦痛を感じるいじめがそれなりの頻度で繰り返されていた」とした。
結果男子生徒は、「(学級内)のグループから排除されるのではないかという強い不安感を持つに至った」と指摘した。うつのような精神状態になったとし、「学校が苦痛になり、自分が、家族や学校の負担になるという考えもあって、自殺に至ったと考えられる」と結論付けた。また、学校の対応に問題があったとした。
「鹿児島県いじめ再調査委員会調査報告書」(PDF:873KB)
再発防止策等検討会
会長:高谷哲也鹿児島大教育学部准教授
再調査委員会の報告書を受けた遺族の要請で、再発防止策を協議する検討会が、知事と教育委員会で構成する県総合教育会議の元に設置され、教育の専門家と弁護士の4人が委員を務めて2019年11月に始まり、2021年3月11日の会議で提言の素案を示した。
提言では、自殺直後の学校による基本調査で「学校生活の要素が自殺の背景にあることを否定できない」いう内容が指摘されていたにもかかわらず、県教委が詳細調査へ移行しなかったと指摘した。当該事案にとどまらず、県教委、学校側が国のガイドラインで示された「自発的•主体的に調査の提案をしていると判断できない」とした。
また、事案が公になることから、詳細な調査をする委員会が新たに立ち上げられることに生徒の家族がためらう例が多いなどとして、調査委の常設化を提案した。県教委のいじめ防止の対策が実効性をもって行われるよう、継続的に検証する常設機関の設置も求めた。
提言の冒頭では、いじめの定義にふれた。再調査委の報告で男子生徒への多くの「からかい」「いじり」があったが、「いじめではなかった」と振り返る元生徒の回答が複数あったことから、「いじめ」を狭くとらえることの危険性に言及した。「いじめかどうかは児童らが『苦痛を感じているかどうか』という視点での把握が必要」と指摘した。