尼崎市立園田東中学生自死事件

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2017年(平成29年)12月20日、兵庫県の尼崎市立園田東中学校の女子生徒(中学2年生•13歳)は、2学期からクラスや所属していたソフトテニス部で受けていたいじめに関連する部活動内でのトラブルの際、学校側は「トラブルの内容は口外しないように」と関係生徒に指導したが、「この女子生徒がトラブルの内容を言いふらした」と誤認した教諭が女子生徒を激しく叱責し、女子生徒は叱責直後に自死した。

女子生徒は学校が行ったアンケートなどで何度もSOSを出していたが、顧問や副顧問、担任、学年主任など少なくとも6人の教員は場当たり的な対応に終始し、根本的な問題解決に尽力しなかった。

2019年3月18日 第三者委員会は、学校でいじめがあった上、複数の教諭が生徒のSOSを受け止めず、教諭の一人が誤解をもとに理不尽に叱責したことが自殺に影響したと認定し、女子生徒の自殺後、いじめが疑われるのに学校側が「重大事態」のガイドラインに沿って対応せず、遺族の了解を得ずに生徒向けのアンケートを実施したことも批判した。

2022年12月20日 女子生徒の遺族による損害賠償請求訴訟に対し、市は当初、「第三者委の報告は法的な責任を追及するものではなく、教員には損害賠償に至るほどの安全配慮義務違反はない」として請求棄却を求めていたが、遺族に和解金150万円を支払う内容で和解した。

事件の経緯

女子生徒は、2017年10月頃からクラス内で特定の女子グループから「きもい」「ぶた」と陰口を言われ、次第に「死ね」など攻撃的な悪口を直接浴びるようになった。

女子生徒は、11月に2回行われた生活実態アンケートで「友達に嫌なことをされたり言われたりする」という質問に「すごく当てはまる」と回答していた。部活動も「嫌だ」と漏らしていたが、担任は女子生徒に具体的な聞き取りなどを行わず、女子生徒が亡くなる5日前の期末面談でも、「娘の人間関係について問題がないか」という女子生徒の母親の問いに対して、「問題ない」と答えていた。

女子生徒が所属していた女子ソフトテニス部は元々トラブルが多発していた。女子生徒はクラブ全体が仲良くなるように努力し続けていたが、部活動に不真面目な態度で臨む生徒に注意を促したところ、11月から12月にかけて女子生徒はいじめの標的になっていった。顧問や副顧問は場当たり的な対応に終始し、根本的な問題解決に尽力しなかった。(顧問は部員間のトラブルを認識し、部員や保護者から対応を求められたが放置し、女子生徒の学年の教諭にも情報を伝えなかった。副顧問は女子生徒が亡くなる2日前、女子生徒と別の部員から部活内のトラブルを伝えられたが、対処しなかった。また、同部の元副顧問も女子生徒が亡くなる前日、「クラブが嫌だ」と漏らしたが、対処しなかった。)

12月18日、ソフトテニス部で複数の部員が別の女子生徒Aさんに「死ね」と言って、クロスに打つべきサーブを同人に向けて放つという事態が起きた。Aさんと仲の良かった女子生徒は、LINEのステータスに何かを書き込んだところ逆恨みをされた。

12月19日、Aさんの母親は顧問にトラブルへの対応を依頼し、顧問は「死ね」と罵った複数の部員に事情を聞いた際、「Aの母親から連絡があったんや」と告げた。この日の部活動は、複数の部員が女子生徒とAさんの方を見ながら悪口を言ったり睨みつけるなど、極めて対立的な雰囲気が漂っていた。女子生徒は、夜からLINE上で部員の一部から集中攻撃を受け、クラスのグループからも誹謗中傷の書き込みをされた。

12月20日、Aさんは学校を休んだ。不確かな情報伝達により、Aさんの母親が学校に連絡を入れたことを女子生徒が言いふらしていると思い込んだ同学年で別のクラス担任のB教諭は方針を立て、2年生の各クラス担任と学年主任は事態を収拾させるために、関係する生徒にソフトテニス部のトラブルについて口外させないように指導した。放課後、女子生徒はB教諭に時間を取ってほしいと伝えたが、教諭は女子生徒がトラブルについて口止めしたにもかかわらず、口外したと判断し、女子生徒を厳しく叱責した。(報告書には、「本件生徒が発言しようとすると大声で言葉をかぶせて発言を阻止し、本件生徒を強く非難することを繰り返した」「興奮した様子で乱暴な言葉を使って大声で叱責し、一方の本件生徒は冷静に受け答えをしており、本件生徒の方が大人のようだった」と記載されている。ちなみに第三者委員会の調査によると、女子生徒が部活内の内情を言いふらしたという事実はない。)

女子生徒は学校のトイレの個室に篭ってしばらく泣き、「なんで私ばかり」と言った後、帰宅した。LINEのステータスに「限界、もう無理」と書き込んだ後、4時半頃にベッドで首を吊って自死した。女子生徒の部屋には、「学校がしんどいです。もう無理です。ゴメンなさい。たえれませんでした」と赤色の太字のマジックペンで書かれたメモが遺されていた。

学校は遺族に知らせずに、緊急アンケートを実施した。家族は当初、公表するつもりがなかったが報道された。

2018年2月14日 遺族が市長と教育長宛に申し入れ書を提出した。学校側が当初承諾したアンケート結果の開示を後に市教委が拒んだことや、調査結果の情報がわずかしか伝えられなかったことなどで不信感を持ったこと、調査の結果の速やかな開示、遺族の意向が確認されないまま生徒の死が報道された経緯の説明、在校生に対する十分なケアなどを求めた。

調査委員会

調査委員会の設置•調査内容

尼崎市教委は、第三者委員会の設置を遺族に打診した。
2018年2月14日 市教委は、学校による生徒への聞き取りやアンケートの結果、生徒間のトラブルが起きていたとの情報があったが、「いじめとは断定できない」として、第三者委員会を設置し調査する方針を明らかにした。

2018年5月21日 尼崎市いじめ問題対策審議会第1回開催
【諮問内容】
• 事実関係についての調査
• 自死に至る過程についての調査
• 本事案に対する学校や市教委の対応についての検証
• 再発防止のための取り組みの在り方についての意見

同級生や教職員にアンケートや聞き取りを行う。

調査委員

委員は、常設の組織から7名と、臨時委員2名が加わる。

委員長:根津隆男神戸松蔭女子学院大学教授(教育分野)
坂井希千与弁護士(兵庫県弁護士会、春名•田中法律事務所)
毎原敏郎兵庫県立尼崎総合医療センター小児科部長、周産期微視医療センター長
定金浩一大阪産業大学准教授(臨床心理士)
井上美智子兵庫県立尼崎総合医療センター精神保健福祉士
松岡時男白鹿メンテナンスサービス、警察官OB

臨時委員として弁護士2名を予定。

調査報告書

2019年3月18日 第三者委員会は、学校でいじめがあった上、複数の教諭が生徒のSOSを受け止めず、教諭の一人が誤解をもとに理不尽に叱責したことが自殺に影響したと認定し、女子生徒の自殺後、いじめが疑われるのに学校側が「重大事態」のガイドラインに沿って対応せず、遺族の了解を得ずに生徒向けのアンケートを実施したことも批判した。

当該生徒は少なくとも2017年10月ころから、クラスのグループに「ブタ」「死ね」「きもい」「うざい」などの陰口を言われるようになり、次第に、聞こえよがしに言われるようになった。
同年12月には、所属していた女子ソフトテニス部でもグループに悪口を言われ、LINEを使って中傷された。
同年11月に実施したアンケートで「最近、同級生から何か嫌なことをされたり命令されたり暴力を振るわれたりしたことがありますか」という質問に「時々ある」、「友達に嫌なことをされたり言われたりする」という問いに「すごく当てはまる」と女子生徒が回答したにも関わらず、担任は内容を確認せず、対処を怠ったと指摘した。部活動についても女子生徒は「嫌だ」と漏らしていたが、担任は状況を聞き取らず、女子生徒が信頼していた部活動の元副顧問も受け流していたとした。
生徒が亡くなる5日前の期末懇談で、学校での人間関係を尋ねた母親に、担任は「問題ない」と答えていた。
2017年12月20日 部活動のトラブルを女子生徒が言いふらしていると誤解した学年主任が女子生徒に口止めをし、さらに別の教諭が女子生徒を叱責した。報告書によれば「(女子生徒が)発言しようとすると大声で言葉をかぶせて発言を阻止し、強く非難することを繰り返した」「興奮した様子で乱暴な言葉を使って大声で叱責した」という。女子生徒はトイレの個室に篭って泣き、「なんで私ばかり」と言って帰宅した。その後、自殺した。

報告書は、「いじめがエスカレートし、精神的苦痛と孤立を感じるなか、信頼していた教員らにも話を聞いてもらえず、自分自身を否定されたと感じた結果、学校そのものに絶望した」とし、「これらの複合的な要因が絡み合って自殺した」と結論付けた。
また、事後対応の問題として、危機管理体制の整備などが不十分で、場当たり的な対応を取り、遺族や関係者らの不信感を強めた。指導の必要がある生徒に対しても、一切指導が行われなかったとした。

民事損害賠償請求訴訟

提訴

2019年6月17日 尼崎市が同級生らのいじめに対して適切な対応を取らなかったとして、女子生徒の母親は同市に慰謝料など約7900万円の損害賠償を求めて神戸地方裁判所尼崎支部に提訴した。
(女子生徒の家族は「特定の個人を責めるつもりはなく、幸せがあったはずの娘に対する行政の責任を問いたい」と話している1。)

一審(神戸地裁尼崎支部)

2019年7月30日 市側は答弁書で、原告が不適切と指摘した教員の対応などについて認否を一部留保し、請求棄却を求めた。
8月1日 弁論準備において、市側は訴状で指摘されたクラスや部活動のいじめについて原告側の立証を求め、教師はいじめを知らなかったと主張し、第三者委が調査報告で、いじめをうかがわせる女子生徒の言動に対応しなかったり、叱責したりしたと指摘した複数の教師についても「必要な対応をした」「生徒の今後のことを思った」などとして、教員や学校の対応に違法性はないと反論した。

母親の代理人弁護士は「第三者委の調査報告に基づかない主張で驚いた。(市側が謝罪した)3月の会見は何だったのか」と述べた。一方、同市は「いじめがなかったとは言わないが、第三者委の報告は法的な責任を追及するものではない。教員には、損害賠償に至るほどの安全配慮義務違反はないと考えている」としている2

2022年12月20日 市教育委員会は「裁判が長期化する中、一刻も早い解決をという思いで一致した。結果的に命を守れず、取り返しのつかない事態を招いた」として、市が遺族に和解金150万円を支払う内容で和解が成立した。市教委は再発防止に務めるとした。(田中健治裁判長)

関係教職員への処分

2020年4月3日 県教委は、いじめへの対応が不適切だったとして、当時の男性校長(50歳代)を減給10分の1(6カ月)、他男性教諭(30歳代)ら教職員計4人を懲戒処分とした。

4月30日 市教委は、事案を調査する担当課を指揮する立場だったにもかかわらず、十分指導せずに混乱を招いたとして、男性部長(60歳代)を減給10分の1(1カ月)の懲戒処分とした。男性教育次長(50歳代)を訓戒、当時同校の教頭だった男性課長(50歳代)を文書厳重注意、既に退職している前教育次長と元課長を「減給相当」の処分とした。前教育次長は月給10%の2カ月分、前教育長も同3カ月分を自主返納する意向。

参考資料

“尼崎市中2少女自殺 遺族置き去りの学校と教育委員会の対応に波紋広がる” Yahoo!ニュース (2018年2月13日) 他

  1. “尼崎中2女子いじめ自殺 遺族が市を提訴” 神戸新聞 (2019年7月5日)
  2. “尼崎中2自殺 市が謝罪一転、争う姿勢 訴訟弁論準備” 神戸新聞 (2019年10月1日)
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