青森県立八戸北高校生自死事件

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2014年(平成26年)7月4日、青森県立八戸北高等学校の女子生徒(高校2年生•17歳)は、医療機関受診後に登校し、昼休みに行方不明になり、8日に八戸沖で遺体が発見された。
女子生徒は「存在自体がうざい」などと中傷されたことを記したと思われる表現をノートに残していた。

2014年12月に公開された調査報告書では、無視や嫌がらせとLINE上での悪口など7項目をいじめと認定したが、摂食障害の原因が高校入学後のいじめである事実を認めず、いじめと自殺の因果関係を認めなかった。

2015年3月に公開された再調査報告書では、摂食障害の原因が高校入学後のいじめであることを認め、摂食障害の重症化が自殺の主たる要因であるとした。

事件の経緯

2014年7月4日、女子生徒は、医療機関を受診後に登校し、学校の昼休み後に行方不明になり、8日に八戸沖3kmの場所で、遺体となって貨物船に発見された。

県教委によると、女子生徒は4日、通院のため遅れて登校したが、午後の授業の際、教室にいないことに担任教諭が気付いた。放課後、担任が保健室などを探したが見つからず、両親に連絡した。死体検案書によると、死亡日時は「7月4日頃」で死因は「溺水」とされた。発見されるまで目撃情報はなかった。10日に火葬、13日に通夜、14日に葬儀が行われ、通夜には400人が参列した。

女子生徒はLINE上で「存在自体がうざい」などと中傷されたことを書き記したノートを遺していた。ノートには「あのクラスいやだな。てか、もー、人生がいやだな。ばいばいしたい」という言葉もあった。

女子生徒は1年生の時から交友関係の悩みを抱えていた。LINEで悪口を書かれたり、無視されたりするトラブルがあり、「お母さん、私の何が悪いの? どこか変? なんで笑われるの?」と問いかけたこともあった。2014年1月には、女子生徒の母親は「(複数の生徒との)人間関係に悩んでいる」と学校に相談していた。

調査委員会

調査委員会の設置•調査内容

2014年7月22日、体育祭が行われた後のPTA役員会で、学校側は「いじめはなかった」と説明したが、翌23日に地元紙の取材に答えた両親の記事が掲載され、PTA総会での遺族の「娘の自殺はいじめが原因では」という主張を受けて、学校は重大事態の発生を県教育長に報告した。県教委は、施行されたばかりの「いじめ防止対策審議会条例」(審議会が事実関係の調査の最終報告を出した後、県教委が知事に報告。知事が専門家の意見や遺族の意向などから再調査が必要と判断した場合、知事付属の「県青少年健全育成審議会いじめ調査部会」において再調査が始まる仕組み。)に基づき、有識者でつくる第三者機関「県いじめ防止対策審議会」を設置し、調査に入った。委員の任期は2014年7月30日から2016年7月29日までの2年間。学校の調査と並行して、いじめの有無や問題の背景、再発防止策を検討する。

審議会の調査では、LINEのやり取りなど「人間関係のトラブル」の中で、いじめと認定した事実があった。女子生徒は高校入学時に友達と『ちーむおべんと。』というLINEグループを結成していたが、捜索では携帯電話は発見されておらず、内容を知るにはメモや証言に頼らざるを得なかった。メモには摂食障害になった背景を自分なりにまとめており、「距離をとり始めると逆にはぶかれるように。」「ムシ、つめたい声。」など、グループ内のトラブルを思わせる内容も記されていた。これらの記述は、LINEのグループのメンバーの生徒からも類似の内容の証言が得られ、女子生徒が心身の苦痛を感じていたと推察、いじめと判断された。「うざい」などの言葉も女子生徒がLINEのグループを抜けた後、他の生徒5人で悪口を言い合っていたことが確認できた。「小さいいやがらせは続き、全て自分が悪いとせめる。」などの記述は、誰がどんな嫌がらせをしたのかは確認できなかったが、いじめと認めた。

2014年8月26日 会長は摂食障害と死亡の関係を精査すると表明した。
11月 当初予定していた中間報告をとりやめ、最終報告を上げた。

調査委員

会長:内海隆(うちうみたかし)青森大学教授
会長職務代理者:関谷道夫(青森県臨床心理士会会長•学校法人弘前厚生学院長)
委員:沼田徹(弁護士)
田中治(青森県立精神保健福祉センター所長•医師)
奈良秀雄(青森県社会福祉士会会長)
住吉治彦(青森県高等学校PTA連合会会長)
臨時委員:荒谷雅子(医療法人芙蓉会芙蓉会病院精神科医師) (第3回審議会(2014年8月21日)から参加)

調査報告書

2014年12月23日 審議会は、いじめが自殺の直接的な原因ではなかったと結論付ける報告書(全95頁)を県教委に提出した。報告書は、いじめが疑われる21項目中、無視や嫌がらせ、LINE上の悪口など7項目をいじめと認定した一方、「いずれも顕著な悪質性を認めるには至らず、程度の差はあれ、集団生活の中で不可避的に生じる人間関係上の衝突の範疇にある行為、あるいはその延長線上にある言動であると判断した。

「死に至った過程や背景」として、「『人間関係のトラブル』において、いじめに相当する行為はあったと判断するが、自殺はいじめにより直接的に引き起こされたものではなく、重度の摂食障害と抑うつ、体調不全、友人関係、学業成績、孤立への不安、自尊心や自己評価の著しい低下などの幾重にも重なった複合的因子により惹起された」と結論付けた。そして、「本事案によるいじめと摂食障がいの直接的な因果関係は認められなかった」「本生徒の死を『いじめられたから自殺した』と考えるのは、むしろ本生徒の17年間の人生を正当に評価していないと考えられる。本生徒は、もっと多くの困難と必死に闘っていた」とした。

摂食障害については、養護教諭の見解として「“中学時の少しやせた時期があり、うれしくなったため、それからあまり食べないようにした”と話しており、中学時より摂食障害となる素地はあった」と判断されたが、母親によれば、女子生徒が摂食障害だと分かったのは高校1年の夏であり、「高校受験前、私と娘で牡蠣を食べ、下痢をして“おなかがぺったんこになった”と喜んだことがありました。やせることのエピソードはこのときとインフルエンザでやせたときだけ」としている。

報告書には2014年4月頃、「自室でスカートの紐を首にかけたのを母親発見」ともある。自殺企図が以前からあったように思わせるが、それについても母親は「ハンガーにスカートの紐がぶら下がっているのを見つけました。娘に問いただしたら、“本気で死ぬ気はないんだけどね。ギュッとやれば楽かな…って”と言っていました。県教委に指摘しましたが、“1度できたもの(報告書)は変えられない”と言われました」と話している。また、受診時のメモや、『ゆっくりでいい。』と題されたブログから、女子生徒はうつ症状が悪化していたとも見做されていた。

いじめと自殺との因果関係について報告書では、「いじめられたから自殺したと考えるのは、むしろ、本生徒の17年の人生を正当に評価していないと考えられる。本生徒は、もっと多くの困難と必死に闘っていた」としている。七海さんが、重い摂食障害や学業への不安を抱えていたことなどを挙げ、いじめが自殺の直接的な原因ではなく、複合的な要因が重なったためと結論付けているが、女子生徒の父親は「複合的っていうのも、全てはやっぱりその、いじめが発端となって出てきているものなので。(自殺に)関連づけてないっていうのが、一番、納得いかない部分かなっていうふうに感じました」と話している。母親は「娘にとって、いじめよりつらい困難は、なかったって、こちらは思います」と話している。

2014年12月23日 「「県立八戸北高等学校の重大事態に関する調査報告書」の概要」(PDF:261KB)

再調査委員会

再調査委員会の設置•調査内容

県教委第三者機関は女子生徒の摂食障害について、「中学時から素地があった」としていたが、両親は「いじめで摂食障害が始まった」と主張した。中学時から摂食障害の素地があったことの根拠が全く説明されていない。中学時にはそれに該当する言動や行動はなく、「いじめと摂食障害の直接的な因果関係は認められなかった」とする見解は到底認められるものではないとした。
報告書の内容に遺族は納得できず県知事に申し立て、県青少年健全育成審議会いじめ調査部会が再調査することになった。

2014年8月1日 いじめ防止対策推進法に基づき、青森県青少年健全育成審議会が知事付属の第三者機関「県青少年健全育成審議会いじめ調査部会」を設置した。

2014年12月28日 県知事が、「両親の心情を第一に考え、再調査が適切と考える」として、再調査に着手した。
県教委の最終報告書を基に、独自の追加調査を行う。
疑問が残る部分に焦点を当てて審議する。追加調査として以下の項目を行う。
• 遺族への聴き取り
• 県教委対象以外の生徒を含む生徒の聴き取り
• 無記名アンケート
• 高校入学以前からの親しい友人や関係者の聴き取り

再調査委員

部会長:宮﨑秀一弘前大学教育学部教授
部会長職務代理者:石橋修八戸学院大学学長補佐•ビジネス学部教授(子どもの権利論)
委員:船木昭夫青森大学社会学部教授(精神保健) (精神保健福祉士)
栗林理人弘前大学子どものこころの発達研究センター特任教授 (精神科医)
髙橋育子(臨床心理士)
田村良(弁護士)
佐藤江里子(県PTA連合会理事)

再調査報告書

2015年3月3日 報告書(全60頁)
摂食障害の重症化が自殺の主たる要因と判断した。
• 高校入学後に、いじめや友人関係のトラブル、学業成績といったストレス要因が発生し、その一方で、居場所や絆といった環境要因が弱体化したことにより、摂食障害が発症し、重症化していったと判断した。
「いじめは自殺の直接原因とは言えず、摂食障害の重症化が自殺の主たる要因と考えられるが、高校入学後のいじめなどのストレス要因の発生と、居場所などの環境要因の弱体化により、摂食障害が発症し悪化していったと考えられることから、いじめと自殺の間には、一定の因果関係があったものと推察する」と結論付けた

最初の調査ではいじめの「悪質性」が問われたが、「再調査」ではいじめを受けた生徒の立場に立つため、「いじめの行為の質」の評価はしなかった。その結果、「出来事」が11個に整理され、8個が「いじめ」と認定された。摂食障害も「高校入学後」とされた。
女子生徒の父親は再調査について、「いじめや摂食障害や自殺の因果関係はあったと認められました。最初の報告書よりは良かった」と評価した。女子生徒の両親は、学校側の他、LINEグループないで悪口を言っていた生徒たちやその保護者からの謝罪を求めてきたが、未だにどこからもないという。
県教育委員会は、県教委の調査と知事部局の調査は、「今の法律から言ってふたつの報告書は独立した機関の出した結果であって、後に出されたほうが優位とされる訳ではない」としている。

2015年3月3日 「「県立八戸北高等学校の重大事態に関する調査報告書」の概要」(PDF:597KB)

事件のその後

2016年11月5日、NPO法人ジェントルハートプロジェクトが主催したシンポジウムで、女子生徒の両親は、「亡くなって2年以上経ち、娘のことを忘れられるのが辛い」「いじめを身近な問題として考えてほしい」として、それまで非公開だった女子生徒の実名と写真を公開した。母親は8月に青森県内で2人の中学生が自殺したこと(東北町立上北中学生自死事件青森市立浪岡中学生自死事件)にも触れ、「娘の事件で生かされたことはなかったのか。これ以上、遺族を傷つけることのないように心ある調査と報告をしてほしい」「いじめの認識不足や情報共有の不備を何度繰り返したら学校は気づくのか」と憤りを語った。

女子生徒が遺した文章

「小さいいやがらせは続き、全て自分が悪いとせめる」
「迷惑かけないようにと1人になる。今も1人登校」
「私は生きていることがつらいです。どんなに考えても良い将来が見えません」

LINEの書き込み
“××といるのやめて。” “存在自体がうざい。”
“ひがい者ぶんないで。” “(私をぬかした)××サイコー”
“自殺は迷惑。”

タイムラインやツイッターへの書き込み。
ムシ、つめたい声。
おかしなどは私にくばらない。

夏やストレスで食欲減
太ってると感じたため ムリなダイエット。

あのクラスいやだな。てか、もー、人生がいやだな。ばいばいしたい
<1年生の12月、『摂食障害を直して ストレスないココロに。健康な身体に。素敵な女の子に。』と題されたノートに>

参考資料

青森県八戸市•県立八戸北高校いじめ自殺地上の涙

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