福山市立小学校不適切指導冤罪事件

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2024年(令和6年)5月10日、福山市立小学校に勤める男性教諭(36歳)は、掃除の時間に校庭で上履きのまま遊んでいる当時6年の児童(11歳)を目撃し、逃げる児童を注意しながら追いかけ、右腕を掴むなどした後、児童が足で蹴って暴れたため羽交締めにした。

市教委は学校側が行った聞き取り調査結果などを踏まえ、「体罰には該当しない」と判断したが、男児の保護者は警察に被害届を出した。広島県警福山東署は被害届を受け、同年12月に男性教諭を傷害容疑で書類送検した。福山区検は暴行罪を適用した上で略式起訴した。一方、男性教諭は福山簡裁の罰金10万円の略式命令を不服として、正式裁判を申し立てた。

公判は2025年4月に始まり、検察側は男児が痛がっていたことや、大きな体格差があったことなどを挙げ、「羽交締めは過度な有形力の行使で、懲戒権の範囲を逸脱している」と指摘し、「被害者への積極的な加害意思が認められる」などとして正当防衛の成立も否定し、罰金20万円を求刑した。

これに対し、教諭側は「男児を落ち着かせて指導するための正当な行為で、懲戒権の範囲内だ」と主張し、「暴れる児童から身を守る必要もあった」と正当防衛にもあたるとし、無罪を求めた。その上で、「これが暴行と捉えられれば教育現場が萎縮する」と訴えた。

学校教育法は体罰を禁止する一方で、教育上必要な場合は教職員が児童•生徒に懲戒を加えることを認めている。公判では、男児を注意しようと腕を掴んで押さえたが、暴れたために羽交締めにした男性教諭の行為が、懲戒権の範囲内かどうか、正当防衛にあたるかが主な争点になった。

2025年7月11日、広島地裁福山支部(松本英男裁判官)は「問題のある行動を繰り返していた児童に対して口頭での指導を行うためにその場にとどめようとした」と指摘し、「法令によってなされた正当な行為で、暴行罪は成立しない」として男性教諭に無罪(求刑罰金20万円)を言い渡した。

裁判官は判決理由で、羽交締めそのものは「暴行罪の構成要件に該当する行為」と説明したが、学校現場では「体罰に当たるかは目的や態様、結果から個別、具体的に判断する」とし、羽交締めの前後の男性教諭と児童の動きを詳述し、児童を制止するための正当な行為であり、懲戒(注意、叱責など)の権利を逸脱したとは言えないと結論付けた。

また、男性教諭の行為は時間にして「2、3分程度」で、逃れようとしていた男児に終始抑制的に対応していたとして、暴行罪が成立するとの検察側の主張を退けた。一方、正当防衛だったとする弁護側の主張については「児童の抵抗行為は、(腕をつかむなどの)教諭の行為に起因するもの」として退けた。

教諭の弁護人は判決後、記者団に「これが暴行とされれば、教育現場が萎縮しかねなかった。望む通りの判決が出て満足している」と語った。広島地検は「判決内容を精査し、上級庁と協議のうえ適切に対応したい」とのコメントを出した。

市教育委員会は学校の調査などを踏まえ「体罰には該当しない」と判断していた。教諭は現在、別の市立小学校で勤務しているという。

体罰と正当な懲戒との線引きについて、文部科学省は2007年と2013年に通知で考え方を示している。
通知では、「個々の事案ごとに判断する」ことを前提とした上で、「肉体的苦痛を与えるものは体罰に該当する」と指摘している。指導の中で「ほおをつねる」「突き飛ばして転倒させる」などの行為を体罰と例示する一方、「放課後に居残りさせる」などは懲戒の範囲内としている。
また、児童•生徒からの暴力行為に対する防御のための正当防衛などは体罰から除外するとし、「反抗して教員の足を蹴った児童の背後に回り、体をきつく押さえる」などの行為は体罰ではないとした。

体罰と正当な懲戒との線引きを巡っては、過去にも裁判で争われたケースがある。
茨城県の中学校で生徒の言動をたしなめるため、拳で数回頭を叩き、暴行罪に問われた男性教員に対し、東京高裁は1981年に「外形的には有形力の行使だが、教師に認められた正当な懲戒権の行使だった」として無罪を言い渡した。一方、愛知県の私立高校で、野球部の練習中に部員を殴るなどして暴行罪に問われた男性監督に対し、名古屋地裁岡崎支部は2015年、「教育上必要な懲戒権の範囲を逸脱していた」として罰金2万円の有罪判決を出している。

参考資料

“暴れる児童を羽交い絞め、暴行罪に問われた37歳男性教師…違法な体罰か「懲戒権」の範囲内か” 讀賣新聞 (2025年7月6日) 他

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