岩手県立不来方高校バレーボール部員不適切指導自死事件

ADDRESS & CONTACT


GPS

39.608861, 141.155111


OPENING HOURS

CLAIM LISTING


Is info on this listing outdated? Are you owner of this business? Register and claim it now.

2018年(平成30年)7月3日、岩手県立不来方(こずかた)高等学校のバレーボール部の男子生徒(高校3年生•17歳)は、顧問の教諭に「背は一番でかいのに何もできない」「男子生徒のせいで負けた」などと繰り返し暴言を浴びせられたことを苦にして自宅で自死した。

自死から5日後の同月8日に発見された遺書には「ミスをしたら一番怒られ、必要ない、使えないと言われた」「高校でこれなら大学で生きていけるはずがない」などと書かれており、顧問の教諭から厳しい指導や暴言を受けて、バレーボールが嫌いになっていたことが記されていた。

県教委によると、部顧問の男性指導主事は2015~2018年度にかけてバレーボール部の複数の生徒に対し、不適切な言動を行った。そのうち、男子生徒には2018年5~6月にかけて「バレーやめたら」「脳みそ入ってんのか」「幼稚園児だ」などの暴言を浴びせたり、試合敗退の責任を押し付けて叱責したりした。県教委の聴取で、元顧問は「激励のつもりで発言したが、そう捉えてもらえない部分があった。申し訳ないと思う」と述べたという。県教委は部員や教員に聞き取りなどをした結果、「通常の指導の範囲で教諭に落ち度はなかった」と主張した。

2022年7月22日 調査委員会は、「教諭の叱責や発言が絶望感や孤立感を深めさせた可能性は否定できない」とする報告書を公表した。顧問が前任校での言動が裁判で争われていたにもかかわらず県教委と高校の情報共有が行われていなかった点についても「適切な対応をとるべきだった」と指摘した。

事件の経緯

男子生徒は中学では日本選抜(12人)入りし、2018年3月には高校日本選抜を決める最終合宿まで残るほどの逸材だった。事件の半年前には全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高バレー)に出場していた。

県教委によると顧問の教諭は2015年度から2018年度にかけてバレーボール部の複数の生徒に対し、不適切な言動を行っていた。そのうち、男子生徒には2018年5~6月にかけて「バレーやめたら」「脳みそ入ってんのか」「幼稚園児だ」などの暴言を浴びせたり、試合敗退の責任を押し付けて叱責したりした。県教委の聴取で、元顧問は「激励のつもりで発言したが、そう捉えてもらえない部分があった。申し訳ないと思う」と述べたという。県教委は部員や教員に聞き取りなどをした結果、「通常の指導の範囲で教諭に落ち度はなかった」と主張した。

2018年7月1日、男子生徒の所属するチームは、天皇杯•皇后杯全日本バレーボール選手権大会予選の決勝を実業団と戦って1セット取ったが負けていた。

7月3日、男子生徒が朝になっても起きてこないため母親が起こしに行ったところ、自宅の自室で自死していたのが発見された。

自死から5日後の同月8日に発見された遺書には「ミスをしたら一番怒られ、必要ない、使えないと言われた」「高校でこれなら大学で生きていけるはずがない」などと書かれており、顧問の教諭から厳しい指導や暴言を受けて、バレーボールが嫌いになっていたことが記されていた。

7月下旬から8月初旬にかけて県教委が文科省通達の「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂版)」に則りまとめられた調書には、バレーボール部の顧問による男子生徒への暴言や、心理的に追い込む行為がいくつもあったと書かれていた。

民事損害賠償請求訴訟

提訴

男子生徒の保護者は遺書や調書の事実から顧問の教諭の間違った指導が自殺の原因であると主張するが、学校や教諭はこれを認めず、保護者は教諭らを提訴した。

一審(盛岡地裁)

2017年11月、盛岡地裁は顧問の教諭の指導は社会的相当性を欠いていたということは認めたが、教諭が日常的に暴力や暴言を行っていたということは認められなかったとした。
男子生徒の保護者は判決を不服として控訴した。

二審(仙台高等裁判所)

2019年2月2日、仙台高等裁判所は顧問の行っていた指導は指導とは程遠く、教員としての裁量を逸脱した違法な行為と認めた。保護者が主張していた指導によりPTSDになったということは退けられたが、保護者はこの判決に対して、息子が受けた暴力や暴言が認められたことから良い判決であったとした。

調査委員会

調査委員会の設置•調査内容

遺族は「指導が原因」と訴えていることから、県教委は第三者委員会を設置し、自殺と指導の因果関係について調査した。

2019年1月6日 第1回調査委員会
高校や部活動の関係者にアンケートを実施して調査を進めるとした。

人選は遺族に発表直前まで知らされなかった。

第三者委員会は、自殺に至るまでの事実経過や背景と、学校の対応、自殺と学校生活の関係性、学校や県教委の対応の妥当性、再発防止策など5項目について検証し、県教委に報告するとした。

第三者委員会は23回開かれ、遺族や顧問ら計73人から聞き取り調査をした。全校生徒対象のアンケートも実施して、部活動での指導と自殺との因果関係などを調べた。

調査委員

教育学者や弁護士、医師の6人で構成した。遺族から要望があったいじめ問題や指導死に詳しい専門家も選出したという。

委員長:佐々木良博弁護士
委員:神谷拓宮城教育大学准教授
栗林徹岩手大学教授
藤田祐子弁護士
伊藤欣司平和台病院長
大御均山形県臨床心理士会長

実務を担う3人の調査委員を置いた。

調査報告書

2020年7月22日 調査委員会は、「教諭の叱責や発言が絶望感や孤立感を深めさせた可能性は否定できない」とする報告書を公表した。また、全国選抜チームの合宿に参加した経験もあった男子生徒に対して浴びせられた「背は一番でかいのにプレーは一番下手」「使えない」「お前の代わりなんていっぱいいる」などの発言や叱責、「◯◯(男子生徒の苗字)のせいで負けた」とチーム敗退の責任を男子生徒に押し付けた発言について、「いずれも、いたずらに威圧•威嚇し、人格を否定し、意欲や自尊感情をも奪うものであり、指導としての域を超え、教員としての裁量を逸脱した不適切な発言」と認定した。遺書の内容などからも「顧問の発言で増大した自己否定感や孤立感などが自殺の背景•原因と裏付けられた」とした。

高校や県教委にも「適切な対応をとるべきだった」と指摘した。顧問が過去に在籍していた高校での言動が裁判で争われていたにもかかわらず、県教委と高校の情報共有が十分でなかったとして批判し、「県教委は顧問の指導の内実を軽視し再発防止に生かそうとする姿勢に欠けていた」と指摘した。指導や対応を怠ったことが本件事案につながった可能性は否定できないと強調した。

顧問が投げたり打ち付けたりしたボールが顔面に当たったことを、直ちに故意にボールをぶつけたと断じることは困難としながらも、当該生徒が「顧問から故意にボールをぶつけられたと感じていた可能性を否定することはできない。」とした。

2020年7月22日 「調査報告書【概要版】」(PDF:3MB)

2023年4月19日、県教育長はこのような自殺事件の再発防止策を策定する方針を示した。

2025年7月、岩手県立盛岡第一高等学校バレーボール部に関する検証委員会設置を求める請願が県議会で採択されたことから、県教委は新たな第三者委員会の調査費300万円を補正予算案に盛り込んだ。可決後、弁護士などで構成する第三者委員会を速やかに設置する方針。

刑事裁判

遺族は「ボールを顔などにぶつけられた」として、暴行容疑で男性教諭を告訴した。
2020年4月 盛岡地検は不起訴処分とした。

加害教諭らの処分

2022年6月24日 県教委は、男子生徒ら複数の生徒に暴言を繰り返し、重度の精神的苦痛を与えたとして、当時の部顧問を懲戒免職処分とした。2015年度の指導についても不適切として、減給1か月の懲戒処分とした。ただし、元顧問は激励のつもりで発言していたのだがそのように捉えられていない部分があり申し訳ないと述べたが、元顧問の暴言と自殺との因果関係については認定しなかった。また、管理監督が不適切だったとして、この間の副校長5人を戒告の懲戒処分とした。自殺当時の校長は退職済のため処分対象にならなかった。

職員の懲戒処分について(令和4年6月教育委員会臨時会) (議案第10号関係)

2023年3月13日、県教委は元顧問は前任校で体罰を行っていたものの、このことを不来方高校の管理職に伝えていなかったことから県教委の職員2人を戒告処分とした。情報が共有されていれば自殺を防ぐことができたかもしれないとした。

外部リンク

男子生徒のXアカウント(@arayang283)

関連

バレーボール部顧問は、同校に異動する前に勤務していた岩手県立盛岡第一高等学校でも2008年から2009年にかけて顧問を務めていたバレーボール部での暴言や暴力行為でPTSDを発症し不登校になったとして、元部員に提訴されていた。

2019年2月1日、仙台高裁は、一審で認定した鍵を壁に投げつけて叱りつけるなどの行為の他、教諭が部活動中に男性に平手打ちした事実や、男性の人格を否定する暴言を言い放った事実を認定し、県に計40万円の賠償を命じた。(確定)

参考資料

“顧問暴言で「絶望感」 バレー部員自殺で第三者委” 朝日新聞岩手版 (2020年7月23日) 他

この記事をSNSでシェア!

FEATURES & SERVICES

LOCATION ON MAP

CONTACT OWNER

NEW SEARCH

この記事をSNSでシェア!
テキストのコピーはできません。