神奈川県立高校野球部員傷害事件

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2017年(平成29年)5月頃から神奈川県立高等学校の野球部に所属している男子生徒(高校1年生)は、他の複数の部員から不快なあだ名を付けられたり、部内の荷物持ちを一方的に押し付けられたり、約10mの距離から硬球を「故意に」投げつけられて左骨盤部座礁の怪我を負わされるなどの暴行を受けた。

同年8月、男子生徒は部内の連絡手段であるLINEグループから「意図的に」外され、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断を受け、不登校の後、転校を余儀なくされた。

2018年3月、調査委員会は男子生徒に対して複数の野球部員が行った一連の行為は「単発的偶発的なもの」ではなく、「継続的差別的」であるとして、いじめと認定した。また、学校側の保護者への対応についても、保護者の意図を理解せず、信頼を得られなかったことを指摘した。

事件の経緯

男子生徒は、2017年(平成29年)4月に同校に進学し、硬式野球部に所属した。
5月頃、他の部員から不快に感じるあだ名で呼ばれたり、部内の荷物持ちを一方的に押し付けられた。(不快なあだ名をつけられた背景には、男子生徒の背が高いことと、小学校2年生の頃に親に打ち明けられた「緊張するとひらがなが書けない」という発達障害傾向のある特性があったと思われる。)

6月初旬、いじめの発覚があり、男子生徒と男子生徒の母親、担任教諭が三者面談を行った。母親は適切な対応を取ることを要請し、担任は翌日、野球部顧問に伝え、クラス全体にも注意した。野球部の保護者会でもチームワークの重要性を訴え、事件や事故を予測して注意喚起したが、いじめは止まらなかった。

同月、ダブルプレーの練習中、男子生徒の後頭部に硬球が当たり、脳震盪を起こす事件が起きた。学校は「偶然の事故」であり、いじめではないと判断した。この頃、元気がなかった男子生徒に声を掛けた顧問に、「嫌なあだ名で呼ばれたり、部内の役割を押し付けられている」と訴えた。顧問は部員を注意した。

7月24日、キャッチボール中に他の部員から揶揄された加害生徒は、咳払いをしただけの男子生徒からも笑われたと感じ、男子生徒に対して約10mの距離から硬球を投げつけた。男子生徒は左前腕部と左足付け根付近を強打し、左骨盤部挫傷の怪我を負った。
男子生徒の両親は学校側に警察に被害届を出すことを伝えたが、学校側は「やるならどうぞ」と言うだけだった。警察は学校へ立ち入り、現場検証も行ったが、加害生徒が初犯で非行歴がないことから、家庭裁判所では「悪質だが、不処分」となった。本来は、学校側は高野連に報告しなければならないが、何事もなく練習を継続し、男子生徒だけを排除した形になった。

8月24日、2年生部員6人が集まった際、男子生徒をLINEのグループから外した。
同月30日、顧問は全部員を集め、事実を確認した上、「◯◯(男子生徒の名前)さんに対して気にかかることがあれば相談するように」と指導した。

男子生徒は野球部への復帰を断念し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断を受けた。
8月末から男子生徒は高校へ通学することができなくなり、11月に不登校による留年などの可能性を示唆された。

12月31日、男子生徒は同校から通信制高校へ転学し、加害者と県に代理人を通じて通告書を送付した。

2018年2月末、同校は県教委に対して、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」の発生を報告した。

調査委員会

調査委員会の設置•調査内容

2018年3月、県教委は神奈川県いじめ防止対策調査会調査専門部会を設置した。

関係者からの聞き取りのほか、7回の会議を開催した。

調査報告書•その後

男子生徒が野球部内で、①約10mの距離から硬球を「故意に」投げつけられた。②部内の連絡手段であるLINEグループから「意図的に」外された。③インターネットの閲覧履歴を見られて揶揄われた。④部員から「俺がいる限り、◯◯(男子生徒の名前)をマウンドに上げさせない」と言われたこと、などの一連の行為は「単発的偶発的なもの」ではなく、「継続的差別的」であるとして、いじめと認定した。

これらの行為により、被害生徒は精神ショックを受け、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断され、不登校•転学の原因について、いじめである可能性を否定できないとした。

いじめの原因が「継続的差別的」であるとした上で、「単に問題となった行為を禁止するだけでなく、何故にかかる行為がなされたのか理由を問い、その上で如何なる理由も相手に敢えて苦痛を加えることを正当化しないことを明確にした上で、その理由となった事情についてどのように解決するか考察させること」とした。

学校側の保護者への対応についても、保護者の意図を理解せず、信頼を得られなかったことを指摘した。

民事損害賠償請求訴訟

2018年3月、男子生徒の両親は損害賠償請求訴訟を提起した。

校長や教育委員会は、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態の基準を両親から告げられても無視し続けたが、代理人から訴状を受け取って隠蔽できないと感じ、重大事態の認定をしたと思われる。また、情報開示請求された「重大事態報告書」には、怪我やPTSDの診断については記載項目がありながら校長は一切記載しておらず、在学中の事実認識も多くは男子生徒側の資料と異なっていたが、学校は調査や確認をしたりその差を埋める事はせず、学校に都合良くまとめていた。

2020年10月、男子生徒と両親は加害者と和解した。和解条項の中には「謝罪」の言葉が入った。

同年12月、男子生徒と両親は学校設置者の神奈川県と和解した。和解内容は「原告が不登校になり、転学に至ったことについて遺憾の意を表明する」ほか、いじめ防止に向けて引き続き取り組むとした。

高野連への虚偽報告など

学校側は、男子生徒側が認めていない「時系列メモ」を「報告書」として高野連に提出していた。男子生徒側が開示請求をした結果、きちんとした報告書でないことが判明した。更に1年後にも内容が不十分な恣意的な「報告書」を提出していた。

いじめ防止対策推進法では、調査委員会が首長や関係機関に報告書を提出する際に、きちんと報告がなされているのかを監視する機関はない。但し、文科省が定めた「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」では、首長などに報告する際には、被害児童生徒•保護者は、調査結果に関する所見をまとめた文書を添えることができ、予めそのことを被害児童生徒•保護者に伝えることが明記されている。

報告書が公表された際、男子生徒の保護者は「所見」も提出しているが、県のホームページには所見の有無については書かれていない。「神奈川県いじめ防止基本方針」では、「いじめを受けた児童•生徒やその保護者に対して、公表の方針について説明を行う」としているが、男子生徒の父親は「所見を公表するかどうかの説明はありません」と話している。

参考資料

“10メートルの距離から硬球を投げつけ…神奈川県高校野球部の「いじめ」で不適切対応” 文春オンライン (2021年4月26日) 他

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