神戸市立桃山台中学生自死事件

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2016年(平成28年)10月6日午後2時55分頃、神戸市立桃山台中学校の女子生徒(中学3年生•14歳)は、中1の頃から同級生にインターネット上で中傷される、仲間外れにされるなどのいじめを受けたことを苦にして、桃山台の川で橋の欄干に首を吊って自死した。

女子生徒の保護者からの「いじめが原因ではないか」との訴えを受け、市教委は第三者委員会を設置したが、第三者委員会は、容姿を中傷する発言や、廊下で足を掛けられたりしたことを「いじめ行為」と認定したものの、自殺の原因は「特定できない」とし、いじめとの因果関係は認めなかった。

女子生徒の自死の5日後の10月11日に、教員が生徒6人に聞き取りをしたメモは、実際には同校に保管されていたにもかかわらず、「事務処理が煩雑である」という理由で、一貫して遺族対応に当たっていた市教委の首席指導主事の指示により隠蔽された。遺族の問い合わせ及び神戸地方裁判所からの証拠保全命令に対してもメモの存在は否定された。

2019年4月、再調査委員会は、いじめと自殺との因果関係を認めた上で、「寄り添える教師が1人でもいたら命を救えた可能性がある」と指摘した。

2020年2月25日、市は、いじめ調査メモを隠蔽した問題で、遺族に約2000万円の解決金を支払って和解することを決定し、市議会で、訴訟を経ずに和解するための議案が全会一致で可決された。

事件の概要

2016年10月6日、兵庫県の神戸市立桃山台中学校の女子生徒(中学3年生•14歳)は、桃山台の川に架かる橋の欄干で首を吊って自死した。
友人との交換ノートやTwitterの記述などに、いじめを示唆する内容があり、「2年生のころから同級生に悪口を言われる、仲間はずれにされるなどのいじめを受けていた」という。
亡くなった当初、「家庭内トラブルを記した遺書があった」との誤った情報に基づく一部報道があった。

2017年6月 複数の同級生が新聞社の取材に、女子生徒は2年の時から「顔面凶器」と呼ばれたり、「告げ口をした」と根も葉もない噂を広められたり、足を掛けられたり、授業中に消しゴムを投げられたり、趣味の絵や服装を「きもい」と言われたりしていたという。
3年生になって腕を傷付けるなどの自傷行為を始め、2016年夏には仲の良い同級生に「死にたい」「学校に行きたくない」と漏らすようになったという1

調査委員会

調査委員会の設置•調査内容

2016年10月20日 女子生徒の保護者が、学校と市教委に「いじめがあった」と調査を要望していることを受けて、市教委が第三者委員会を設置した。
同年11月上旬までに、全校生徒へのアンケートや、同級生や教職員への聞き取りを終えた。
同年12月13日 第三者委員会が調査していることが判明した。「在校生や調査に影響がある」などとして、調査に入ったことを公表していなかった。
市教委はアンケートや聞き取りの結果について、「調査内容に関わるので一切話せない」とし、調査結果についても「遺族には説明するが、公表するかどうかは未定」とした。
同年12月26日 同校は学期ごとに、生徒に生活状況のアンケートを実施しているが、前年度までに実施されたいじめの有無や悩みに関する生徒アンケート(中1、中2分)は学期毎に廃棄しており、保管されていないことが判明した。
市教委は「問題のある記述は教員が記録するなどして把握している。第三者委の調査であらためて生徒にアンケートもしており、支障はない」とした。
2017年3月中旬以降、家族の希望を受けて、卒業生を含む一部生徒を対象として再度の聴き取りが行われた。

調査委員

大学教授や弁護士、臨床心理士ら7人。
名簿は公平中立な調査のためとして公開しなかったが、後に、市教委の付属機関「神戸市いじめ問題審議会」(常設)が、第三者委員会として調査していることが判明した。

委員長:添田晴雄大阪市立大学大学院文学研究科准教授
副委員長:中村豊東京理科大学教職教育センター教授
委員:今塩屋登喜子兵庫県臨床心理士会(臨床心理士)
田中究兵庫県立ひょうごこころの医療センター院長(精神科医)
田邊哲雄兵庫県社会福祉士会(社会福祉士)
藤本久俊弁護士(兵庫県弁護士会)
正木靖子弁護士(兵庫県弁護士会)

報告書•その後

2017年8月 調査委員会が遺族に報告書案を示した。
容姿を中傷する発言や、廊下で足を掛けられたりしたことなどを「いじめ行為」と認定したが、自殺の原因とは特定しなかった
母親は原因究明が不十分として2度にわたって質問書を送ったが、第三者委は回答せず、調査終了の意向を示した。

2017年8月8日 全165頁
調査委員会は、容姿を中傷する発言や、廊下で足を掛けられたりしたことなどを「いじめ行為」と認定したが、学校側は全く気付いていなかったと指摘した。他の生徒らから女子生徒の異変の申し出がなかったことを理由に「(自殺の兆候を)教職員が察知するのは極めて困難」とした。自殺の原因も「特定できない」とし、いじめとの因果関係は認めなかった。

報告書は、市の情報公開条例により、個人の特定につながるとして、全5章の内、自殺の経緯や要因、いじめの内容などを記した第3章(64頁分)は黒塗り。

市教委による聞き取りメモ隠蔽の調査

2017年8月下旬 報告書に自殺から数日後に生徒6人に聞き取りをしたメモが「破棄」との記載があるのに気付いた後任の校長らが、実際には教職員の1人がメモを保管していると市教委に報告した。
2018年4月22日 市教委は第三者委員会の調査報告書で「破棄された」としていた、自殺直後に学校側が友人らに聞き取った内容のメモが残っていたと発表した。

調査委員会の設置•調査内容

市教委は、2016年10月11日に、教員が6名の生徒と面談した際の資料が、実際には同校に保管されていたにもかかわらず、遺族の同資料の存在についての問い合わせ等及び神戸地方裁判所からの証拠保全命令に対して、同校がそのような資料は存在しない旨の回答ないし、存在しないことを前提とした対応をしていたこと、及び、その後の教育委員会の当該事実への対応状況に関して、事実経過を調査し、同校及び教育委員会がそのような対応をした背景や理由を明らかにするよう、弁護士に調査を依頼した。

聴き取り対象者:平成28,29年度に在籍していた教職員22名(当該中学校、教育委員会事務局)

調査委員

羽田由可弁護士
村上英樹弁護士

報告書•その後

2018年6月1日 調査委員会は市教委に報告書を提出した。

平成29年3月6日に、当時の校長が遺族に対し、面談の資料乃至メモは存在しないと回答した理由について
①首席指導主事の指示に従った。
②■■は、同メモの存在が明らかになれば遺族からの再度の情報開示請求等が出されることが考えられ、その場合の事務処理が煩雑であると考えていた模様であり、また、第三者委員会の報告完成について当時は平成28年度末(平成29年3月)が目標とされていたこともあって、同メモの存在を回答することにより教育委員会としての事務が増大することを避けたいという思惑を有していたと推測される。
一方、校長は、事故後5ヶ月近く経過した時点で同メモの存在を明らかにした場合の遺族の反応を心配し、できれば同メモがないことにしてやり過ごしたいという思いを有していた模様である。
「校長が10月11日面談のことを意識的に省いたことはない」と述べているから。そして、このことを「学校から教育委員会に伝えられていたから」同面談内容を学校が基本調査報告書に置いて意識的に隠そうとしていたとは認められない」と結論付けた。

[追補]
当時の校長が、メモ隠蔽調査の弁護士に話したとされる内容について、本人が言っていないことが書かれていたり、重要な部分が落とされているという陳述書を提出した。

再調査委員会

2017年8月下旬 報告書に自殺から数日後に生徒6人にヒアリングしたメモが「破棄」との記載があるのに気付いた後任の校長らが、実際には教職員の1人がメモを保管していると市教委に報告した。
同年11月20日 第三者委員会が調査対象の生徒の一部から聞き取りができていないことが判明した。
遺族は、文部科学省のいじめ調査ガイドラインで再調査の条件として記載されている「十分な調査が尽くされていない場合」に当たるとして、「自殺との関係やいじめの経緯の解明が不十分」として、市教委に追加調査を申し入れた。
同年12月26日 第三者委員会は、母親が求めていた追加調査の申し入れを拒否した。
2018年3月 遺族が報告書への所見を提出した際、校長が改めて市教委にメモの存在を報告した。
市教委は遺族に謝罪し、弁護士による調査で経緯を調べるとした。
同年4月3日 遺族の代理人弁護士が、市教委が設けた第三者委員会の調査内容が、自殺との因果関係やいじめが起きた背景などは明記しておらず不十分として、市長宛に再調査を求める申し入れ書を提出した。

調査委員会の設置•調査内容

2018年4月22日 市教委は第三者委員会の調査報告書で「破棄された」としていた、自殺直後に学校側が友人らに聞き取った内容のメモが残っていたと発表した。

同年4月26日 市長は、「破棄された」とされていた友人らへの学校の聞き取りメモが見つかったことを受け、いじめに関する調査委員会を5月にも設置し、再調査すると発表した。事務局は子ども家庭局に置く。

同年7月16日 「神戸市いじめ問題再調査委員会」が発足した。

女子生徒の母親の意見陳述書(全文)

 まず、各方面においてご活躍中でご多忙の皆さま方が再調査委員会の委員としてご就任をご承諾いただき、心から感謝を申し上げます。また、神戸市長さまにおかれましては再調査の決断をしていただいたこと、こども家庭局や弁護士の先生方には、再調査開始にむけての段取りにおいて遺族の意見に耳を傾け、丁寧な協議を積み重ねていただき、感謝しております。皆さま本当にありがとうございます。

私の娘は、動物や絵を描くことや手芸が大好きな、素直で穏やかな心の優しい子でした。また優しさだけではなく、人に流されない自分の考えをしっかりもっていた強さもありました。

そんな娘が一昨年の10月6日の朝、いつものように『行ってきます』と家を出たまま、登校途中に自宅近くを流れる小川で自らの命を絶ってしまいました。私たちは、学校から、娘が登校していないとの連絡を受け必死に探しましたが、自宅のすぐそばである現場の近くまで行きながら見つけてあげることはできませんでした。

娘に対しては本当に申し訳なく思っております。

娘の死後、どうしてこんなことになってしまったか訳がわからず、現実のこととして受け止めきれず涙もでなかったのですが、娘の同級生たちからいじめがあったことを聞いた時は本当に驚きました。

たくさんの聞いたこともない生徒の名前、男子生徒の名前、担任の先生のパワハラ、学校におけるスクールカーストの話。

娘が生きている時に気付いてあげることができなくて本当に娘には申し訳なかったです。

それから私はいろいろな立場の生徒から、高校受験を控える中何度も足を運んでもらい、たくさん話を聞かせてもらいました。

娘がつらかった様子、いじめの話を聞くことは親として本当に言葉では言い表すことができないくらい、悲しく、悔しく、つらいことでしたが、それでも私は『娘に何があったかを知りたい』一心で聞き取りをしました。

その一方で第三者委員会も立ち上がり、私も当初はきちんと調査をしてくれるものと期待しておりました。

しかし、第三者委員会とさまざまなやりとりを重ねるうちにだんだんと不信感に変わっていきました。それでも私が聞き取ったようないじめに関することは第三者委員会も把握できているはずとの思いで昨年8月に受け取った報告書は、いじめの事実をいくつかは認めているものの、いじめの背景もわからない、いじめの広がりについてもふれられていない、自殺といじめの関係も明らかにしない、などいろいろな点において納得できるものではありませんでした。

また、その後の追加調査に応じないという第三者委員会の消極的な対応や、教育委員会によるメモの隠蔽など信じられないこともたくさんありましたが、今回、再調査という機会を与えていただきました。

新しい調査委員会の方々にお願いがあります。

娘の同級生によると、娘へのいじめは仲間はずれや陰口など陰湿でわかりにくく、周りの雰囲気や態度によるいじめと言っていました。分かりやすい暴力とかではないので、娘に対するいじめは、なかなか分かりにくいかもしれませんが、陰口や仲間はずれなどの陰湿ないじめによって精神的に追い詰められるつらさをいじめられる子の立場になって考えていただきたい、また親が思うように『何があったのか知りたい』という思いで調査をしていただきたいと願っております。

また、2年生の時の仲間はずれ•悪口•陰口といういじめは既に他の同級生•部活•男子生徒にまで広がっていたのではないか、それが3年生になった後にも継続し、さらに広がっていったのではないか、そして容姿中傷発言や身体的攻撃にまでつながっていったのではないか、を深く調査してほしいと思います。

2年次のいじめの一部は当時学校の知るところとなっていましたが、特定の生徒とのクラス分けで対応が終わってしまっています。この時に、いじめの広がりを学校がきちんと把握していれば、3年次にいじめが継続し、娘を苦しめ、絶望に追いやることはなかったのではないか、と悔やまれてなりません。2年次から、いじめ防止対策推進法や神戸市•学校のいじめ対策の指針に基づいた対策が取られていなかったことが、3年次のいじめの継続•広がりを招き、娘の自殺につながっていったのではないか、学校の対応の問題点も明らかにしていただきたいと思います。

私も娘の自死に対しては反省や後悔はたくさんあり、娘には申し訳ない思いでいっぱいです。しかしどんなに考えても、いじめがなかったらこんなことにはならなかったという考えにたどり着きます。

早いものでもう娘の死から1年9カ月が過ぎ、関係者はそれぞれの道を歩んでいる中で再調査の運びとなり、また事情を知っている生徒の記憶もあいまいになってきたりして、難しい面もあると思います。

しかし私は、もう二度と娘のようないじめに苦しむ子をだしてほしくはないです。

本件の再調査の事例が全国で同じようないじめで苦しんでいる人たちへのいじめ対策の一考となり、いじめの解決に少しでも寄与できればと願っております。

再発防止策につながる報告書となるよう、委員会におかれましては、娘に対して、どのようないじめがなぜ行われたのか、その背景を含めて、明確にしていただくとともに、娘がなぜ自ら命を絶つことになったのかを明らかにしていただくように切にお願い申し上げます。

以上よろしくお願い申し上げます。

調査委員

有識者2人、弁護士2人、精神科医1人の計5人
委員長:吉田圭吾神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授(臨床心理士)
職務代理:春日井敏之立命館大学大学院教職研究科長/文学部教育人間学専攻教授
委員:曽我智史弁護士(尼崎駅前法律事務所)
三木憲明弁護士(いぶき法律事務所)
山﨑信幸京都府立洛南病院精神科医長(精神科医師)
調査補助委員:足立友季世弁護士
藤田翔一弁護士

報告書•その後

2019年4月16日 報告書提出
調査委員会は、いじめと自殺との因果関係を認めた上で、「寄り添える教師が1人でもいたら命を救えた可能性がある」と指摘した。
報告書では、生徒は中1の頃からインターネット上で中傷されるなどのいじめを受けた。中2が終わる時点で「強い喪失感などを抱き、心理的にかなり脆弱な状態になっていた」とした。
一方、教職員はいじめと認識せずに「よくある女子同士の人間関係のトラブル」と捉え、「様子をみる」「けんか両成敗」といった対応でいじめが深刻化した。生徒の1、2年時には学校から市教育委員会へのいじめの報告は0件だった。

調査報告書(概要版)」(PDF:15MB)

2020年2月25日 市は、いじめ調査メモを隠蔽した問題で、遺族に約2000万円の解決金を支払って和解することを決定し、市議会で、訴訟を経ずに和解するための議案が全会一致で可決された。

参考資料

日本の子どもたち2

  1. 毎日新聞 (2017年6月17日)
  2. 2016年6月5日に武田さち子様より掲載許可を頂きました。
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