Is info on this listing outdated? Are you owner of this business? Register and claim it now.
神戸市立六甲アイランド高等学校で、男子生徒(高校1年生)は、友人に嫌がるあだ名をつけた「いじめ行為」と、他の生徒を騙ったTwitterのアカウントを作成して書き込みをしたことの聴取を理由に、2日連続で計約16時間の別室指導を受けた。
2017年(平成29年)12月22日、男子生徒は教員から追及を受け続けた上、退学処分を告げられたことで追い詰められ、校舎5階から飛び降りて重傷を負った。
2019年12月11日 調査委員会は、長時間の別室指導や教員の発言によって「退学になると思い込み、自死を決意するほどの精神状態に追い込まれた」とする報告書を提出した。委員長は同校では威圧的、権力的な指導が行われており、人権上問題がある生徒指導も常態化していると指摘した。
2022年6月24日 元生徒は、市が教員の言動を認めず謝罪を拒んだなどとして、神戸市に約6000万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴した。
2025年3月10日 神戸地裁(野上あや裁判長)は、市が指導の一部を不適切だったと認めて謝罪し、解決金150万円を支払うことで和解した。
事件の経緯
2017年当時、自死未遂した生徒も含む4人の仲の良い生徒が同じクラスにいた。だがこの中の1人の私的な話を聞いたことで残りの3人はこの1人に対して距離を置くようになり、動物に例えた悪口となるあだ名で呼ぶようになる。この後に自死未遂する生徒でもある残りの3人のうちの1人は、距離を置いた生徒のTwitterの攻撃的な書き込みを自分に対する書き込みであると考える。そこからこの生徒は他の生徒を騙ったアカウントを作成し、この距離を置いた生徒の書き込みに対する仕返し、反論を行っていく。
教員はクラスの生徒から聞き他の生徒を騙ったアカウントが作成されていることを知り、クラスの生徒から提供された情報から本人によるアカウントではないことを確認。このことから3人の生徒に対する別室指導を行うこととした。別室指導は12月21日に行われ、騙った生徒ではない2人の生徒に対しては1時間程度で終わったものの、騙った生徒に対しては朝8時から夕方3時半頃まで7時間半かけて行われ、された生徒は退学になると示唆されたとしているが教員はこれを否定。だが退学と受け止めざるを得ない発言は教師から行われていた。この日の指導後に指導された生徒は遺書を書き、退学となれば自死するとした。
翌12月22日にも別室指導が行われ朝の8時から8時間半かけて、教員の面談による事実確認と指導を各30分~1時間と、残りの時間は反省文の作成や自習をさせた。男子生徒は指導終了後、保護者の迎えを待っていたが、午後5時頃に指導していた教員がカウンセリングルームを離れていた間に校舎の窓から飛び降りた1。12月25日と26日は面談予定だった。
市教委は今回の指導を「比較的軽いもの」と説明している。同校では月に数回、「学年指導」より重い「特別指導」として、問題行動を起こした生徒に対し、別室で行動を説明させたり、反省文や日記を書かせたりしており、長い時は2週間程度に及ぶという。
その後、男子生徒は転校した。事件の後遺症で現在(2025年3月)も左脚に麻痺が残っており、松葉杖を使っている。
調査委員会
調査委員会の設置•調査内容
2019年4月19日 生徒側は「『退学や』と脅迫的な指導を受けた自殺未遂」と主張しており、市教育委員会への不信感から市長部局下での第三者による調査委員会で、当時の指導実態を明らかにするよう求める要望書を提出した2。
5月30日 市長は、教育委員会の元に第三者委員会「平成29年12月22日に発生した神戸市立高等学校における学校事故に係る調査委員会」を設置し、調査権限を市長部局の行財政局に委任し、主な業務は市の行財政局が行うとした。
〔参照〕学校事故対応に関する指針(平成28年3月31日文部科学省公表) (PDF:703KB)
2019年7月16日から12月11日にかけて全15回開催された。
調査委員
委員長:折出健二愛知教育大名誉教授 学識経験者(教育)
委員:徳田仁子京都光華女子大学健康科学部心理学科教授 学識経験者(心理)
野田哲朗兵庫教育大学大学院学校教育研究科教授 精神科医師
宮島繁成弁護士
職務代理:吉田竜一弁護士
委員一覧(PDF:132KB)
調査報告書
2019年12月11日 調査委員会は教員による一方的な指導が原因で自殺を決意させたとする報告書を提出した。委員長は同校では威圧的、権力的な指導が行われており、人権上問題がある生徒指導も常態化していると指摘した。
男子生徒はTwitter上で問題行動を起こしたなどとして12月21、22日の2日間で計約16時間、カウンセリングルームで聞き取りや説諭、反省文を書かせるなどの別室指導を受けた。男子生徒は21日の指導後にLINEで「退学になったら死ぬ予定だから」と同級生に送信し、22日夕方の指導終了後、校舎5階から飛び降り、一時意識不明となった。その後に転校し、後遺症で嗅覚を失い、松葉杖を使って生活している。
生徒側は、別室指導の際に弁解の機会がないまま教員に「退学や」と言い渡されたなどと主張。報告書では「(退学には結び付かない)年次指導で終わらない」と教員が繰り返し発言したとし、生徒が「退学になるかもしれないと受け止め、自死を決意するほどの精神状態に追い込まれた」として、教員による一方的な別室指導が生徒に自殺を決意させたと結論付けた。
生徒は自由に出入りできないよう監視され、トラブルを認めて反省するよう何度も求められたという。第三者委はこれらの指導を「体罰には該当しないが、限界に近い事例」と指摘した。
さらに、長時間隔離して指導を行ったことについて「事実確認より、自分の行為を認めるよう強要している」「個人の尊厳を脅かし、指導目的を超えた一種のハラスメントと解釈できる」などと批判。「一方的な追及ではなく、事実関係を見詰めさせることこそ優れた指導力」と改善を求め、市教育委員会にも学校現場への助言を促した。また、別室指導に当たっては時間や日数を必要最小限にし、原則事前に管理職に承認を得るよう提言した。
会見で調査委の折出健二委員長は、同校の生徒指導について「威圧的、権力的な指導が背景にあり、人権上問題がある別室指導も常態化していた」と指摘した3。
平成29年12月22日に発生した神戸市立高等学校における学校事故に係る調査報告書 概要(PDF:1MB)
翌12月12日、生徒の代理人弁護士は、この調査委員会の報告書を十分満足できるものであると評価した4。
民事損害賠償請求訴訟
提訴
2022年6月24日 元生徒(24)は、市が教員の言動を認めず謝罪を拒んだなどとして、市に約6000万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴した。
市側は調査報告書で指導を違法と言及していないことなどから謝罪や賠償を拒否した。元生徒側は神戸簡裁に民事調停を申し立てたが、13日に不成立となった。
会見で元生徒側の代理人は「報告書は退学を仄めかす行為を認定したが、市は調停でこの行為を否定した」と明かし、元生徒は「事実を捻じ曲げ、指導の問題点から目を逸す神戸市の対応が許されることのないよう、真実を認めてもらいたい」とコメントを出した5。
一審(神戸地裁)
2025年3月10日 神戸地裁(野上あや裁判長)は、市が指導の一部を不適切だったと認めて謝罪し、解決金150万円を支払うことで和解した。
元生徒側の代理人弁護士や市によると、「長時間にわたる別室指導で、ほどんどの時間を(男性)1人にさせるなど一部適切でない対応があった」と市が謝罪し、解決金150万円を支払う内容で合意した。報告書で不適切とされた教員の発言には触れられなかった。
和解を受け、元生徒は「教師の発言により退学の恐怖を感じ、一生消えない傷を負ったという事実を認めて謝罪してほしかった」とコメントした。市教委は「早期解決を図るため和解することとした」としている6。
- “六甲アイ高生飛び降り問題 調査委の報告書要旨” 神戸新聞 (2019年12月11日)
- “神戸•六甲アイランド高生転落 市が第三者委設置へ” 神戸新聞 (2019年5月)
- “六アイ高生飛び降り 調査委、別室指導との因果関係認める” 神戸新聞 (2019年12月11日)
- “報告書は「十分満足」 六アイ高飛び降りで生徒代理人” 産經新聞 (2019年12月13日)
- “六甲アイランド高校舎飛び降り 重傷の元生徒が神戸市に賠償求め提訴” 神戸新聞 (2022年6月24日)
- “高校で長時間指導後に飛び降り 元生徒と市が和解 六甲アイランド高校” 神戸新聞 (2025年3月10日)