熊本県立高校生自死事件

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2013年(平成25年)8月17日、熊本県立高等学校の女子生徒(高校1年生•15歳)は、夏休みに実家に帰省中、自宅で首吊り自死した。背景に複数の同級生の女子生徒からのいじめがあったと指摘された。LINEでの中傷など「ネットいじめ」もあったと指摘された。女子生徒は普段、熊本市内にある高校の寮で生活していた。

県教委が設置した調査委員会は、校長が含まれていたなど公平中立な調査ではなく、改めて知事部局による調査委員会が設置された。報告書では6件のいじめが認定されたが、いじめと自殺の因果関係は不明とされた。

熊本県を相手取った裁判では、担任教諭と舎監の安全配慮義務違反が認められ、加害生徒に対しても不法行為が認められ、それぞれ損害賠償を命じる判決が出た。

事件の経緯

2013年4月 女子生徒は同校に進学した。県内の遠隔地出身だったため、学校の生徒寮に入寮した。

入寮後、寮の同級生が女子生徒に対して、食事や風呂などの当番を一方的に押し付けた。女子生徒がLINEで「雑用をさせられるのがつらい」との趣旨の書き込みをしたことをきっかけに、複数の生徒からLINEのグループチャット上で、「レスキュー隊を呼んでおけ」などと脅迫めいた書き込みをされたり、女子生徒への強制的な呼び出しや身体的特徴をからかう内容の言葉も書き込まれていた。他にも私物の入浴セットを隠され、卒業アルバムに落書きされるいじめも受けていた。

6月 女子生徒の両親から相談を受けた学校側は、生徒同士で1回話し合いをさせただけで解決したと判断していた。しかし、トラブルは解消されず、女子生徒は7月に「もう死にたい」と保護者に伝えた他、帰省中、保護者に「学校をやめたい」と打ち明けていた。

8月17日 女子生徒は夏休みの帰省中に上天草市内の自宅で自死した。

2014年8月 女子生徒の父親が自死した。

9月 学校が校内に設置した調査委員会は、LINEへの書き込みなど4件の行為をいじめと認定する中間報告を発表した。
警察がLINE上で生徒を脅迫する書き込みをした疑いで、同級生1人を書類送検した。

2014年10月(自死の1年2か月後) 熊本県教育委員会が女子生徒の自死を公表した。

2014年9月 学校が校内に設置した調査委員会は、ラインへの書き込みなど4件の行為をいじめと認定する中間報告をまとめた。

刑事処分

2014年3月、女子生徒の遺族は「加害生徒の行為は、被害生徒への脅迫罪にあたる」として、同校の女子生徒を脅迫容疑で熊本県警に告発した。同年8月、熊本地検は当該生徒を家庭裁判所に送致した。熊本家庭裁判所は、加害生徒のLINE送信について脅迫の非行事実として審判開始の決定を行ったが、2015年に加害生徒による脅迫の非行事実を認定した上で不処分とした。

調査委員会

調査委員会の設置•調査内容

2015年2月22日 県教委は、公平性と中立性を確保するため、県教委から派遣された臨床心理士を委員長とする専門家など3人を加えた「学校調査委員会」を設置した。
いじめと自殺との因果関係などを調べる。

調査委員会は、遺族や生徒、教職員ら計30人から聞き取りを実施した。

調査委員

臨床心理士の大学准教授の他、社会福祉士、弁護士、校長、保護者会会長の計5名。

委員長:園部博範崇城大准教授

調査報告書

2016年2月26日 調査委員会は「いじめの事実は認めるものの、遺書などから明確な資料が残されていないことから、自殺の直接的な原因とは認めがたい」という調査結果を遺族に報告した。

調査委員会は、学校が最初に設置した調査委員会がいじめと認定した内容4件に新たに1件を加えた計5件をいじめと認定した。

いじめと認定された行為
• 同じ寮の同級生による2013年5月頃からの身体的特徴をからかう言葉や「レスキュー隊呼んどけよ」と脅すようなLINEへの書き込み。
• 入浴セットを隠す。
• スマートフォンの無断使用。
• 中学の卒業アルバムに落書きをした。
• 生徒の身体的特徴を上級生が笑った。

調査委員会は加えて、LINEグループの画像に生徒の画像を使用し、生徒を中傷するようなグループ名をつけたことを、新たにいじめと認定した。
いじめは両親や寮の舎監長などの介入で現象面は解消したが、本人は本心から納得しておらず、心身の強度を低下させた。学校から「トラブルは解決した」と伝わっていた両親は、退寮の強い願いを叶える判断をせず、生徒は絶望感から「うつ状態」になり、何らかの理由で自殺に至った可能性が高いと結論付けた。
尚、いじめの大半は女子生徒と同級生の口喧嘩の延長だったと断定した。女子生徒は寮の上下関係に対する違和感や寮内の仕事への負担感から寮生活に適応できず、一部生徒との間でトラブルが続いていたとの見方も示した。
県教委が自殺を公表したのが1年2ヵ月後と遅れたことが、真相究明の障害になったと指摘した。

再調査委員会

2016年3月11日 遺族が、調査委員会に校長らが含まれていたことなどから、「公平中立な調査ではなかった」などと反発した。第三者委員会の報告を不服として、再調査を求める意見書を県に提出した。

調査委員会の設置•調査内容

2016年3月29日 熊本県は、調査の検証を含む第三者委員会の設置を決定した。

調査委員

大学教授や弁護士ら5人の有識者

委員長:古賀倫嗣熊本大学教育学部教授(専門分野:教育)
委員:坂本邦彦弁護士(専門分野:法律)
紫藤千子(しとうゆきこ)紫藤社会福祉事務所(専門分野:福祉)
高原朗子熊本大学教育学部教授(専門分野:心理)
横田周三医療法人横田会向陽台病院理事長(専門分野:医療)

調査報告書

2017年7月14日 報告書を知事に提出した。

女子生徒へのいじめを認めた上で、「自殺の直接の原因は特定できない」として、いじめと自殺の因果関係は不明とする調査結果を答申した。
第三者委員会は、学校調査委員会が認めたいじめ5件に加えてライングループのトップ画面に女子生徒の顔写真を掲載し、グループ名を屈辱的な名称に変更した1件を新たにいじめと認定した。
いじめと自殺の因果関係を不明とした理由については、「遺書など事実を明確化する資料が残されていない」などと説明した。
一方、いじめなどが「『寮生活を続けたくない』と思うきっかけになったことは否定できない」と指摘した。寮を出るのが難しいことから「うつ状態が改善されないまま自死につながったのではないかと考えられる」とした。

調査報告書概要版(平成25年8月事案)」(PDF:396KB)

調査委員会の設置•調査内容

県のいじめ防止対策審議会が、重大事案発生時の調査主体や寮の管理のあり方を審議した。

調査委員

岩永靖九州ルーテル学院大学准教授

調査報告書

2017年11月24日 答申では、公平•中立な調査をするために、第三者委員会などが調査を行うべきだとし、自殺には至らない重大事案についても、必要と判断すれば調査するとした。
寮の適正管理については、慣例化した寮規則を明文化して入学前の生徒や保護者に情報共有することなどを提言した。授業や部活を受け持つ教諭が寮まで管理するのは難しいとして、新たに寄宿管理業務職員を配置することも提案した。

県教委は、寮を設置している県内13校の校長会議を9月に開き、寮規則について調査を始めるなど、一部で対応を進めている。

民事損害賠償請求訴訟

提訴

2016年7月 遺族は、熊本県と、LINEに書き込んだ元同級生1人を相手取り、慰謝料など数千万円の損害賠償を求め提訴した。

双方の主張

遺族側は、「加害生徒側のLINEでの脅迫行為は重大な人権侵害」「学校側が適切な対応を取っていれば自殺は防げた。学校の対応は不適切だった」と指摘した。

熊本県は、「いじめではない」「学校側の対応も適切だった」として、加害生徒側は、「けんかにすぎず、いじめではない」として、請求棄却を求めて争った。

一審判決

2019年5月22日 熊本地裁は、加害生徒のネットの書き込みと、自殺した生徒の中学校時代の卒業アルバムに加害生徒が落書きをしたことについて不法行為と認定し、加害生徒に対して11万円の支払いを命じる判決を出した。加害生徒に対する部分はその後確定した。

一方で、熊本県への請求は棄却した。判決では、担任教諭の安全配慮義務違反については言及した。しかし、寮生の生活指導を担当する舎監の教員の対応については、教員が双方の生徒への指導を行ったことなどを挙げて、「適切さを欠くとはいえない」「いじめと判断しなかったからといって、安全配慮義務を欠くとはいえない」などとした。学校側の対応と自殺との因果関係についても認定しなかった。

原告側は、舎監の責任が認定されなかったことを不服として控訴した。

控訴審判決

2020年7月14日 福岡高裁は、舎監がいじめを「単なるけんか」と扱って校内で情報共有をしなかったことなどを安全配慮義務に違反すると指摘し、不適切な指導で生徒が精神的苦痛を受けた、いじめや不適切指導によって生徒の自殺を誘発した可能性が高いと認定して学校側の責任を認め、一審判決を変更する形で、熊本県に220万円の支払いを命じる判決を出した。一方で、自殺の予見可能性については認定しなかった。

熊本県は、福岡高裁判決を受け入れる方針を表明し、二審判決が確定した。

参考資料

熊本県熊本市•県立高校いじめ自殺地上の涙

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