松戸市立中学校教師によるわいせつ事件

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千葉県松戸市立中学校に通っていた男子生徒は、1988年(昭和63年)、中学1年生の2学期から3年生の2学期の終業式の日まで3年間にわたり、担任で男子バレーボール部の顧問教諭から同性間の性的行為を強要された。

生徒は周囲の大人に相談したが、生徒の両親や他の教師は誰も生徒を助けなかった。生徒は、高校卒業後にPTSDやストレス傷害、適応障害などに似た精神の病的症状を呈するようになり、25歳の時には、精神科への通院を要するほど精神状態が悪化した。

2022年2月、公的機関に事件を認定してもらうことが自身にとって最終的な解決になるという思いがあった生徒は、中学時代の生徒の下着を所持していた加害教諭に対して返還を求める本人訴訟を起こした。

同年9月、松戸市簡易裁判所は加害教諭に生徒の下着の返還を認め、わいせつ行為などの事実だけでなく、「被告によるスクールセクハラ行為は、原告が人生で様々な幸福を経験する機会を奪い、原告の人生を破壊した」などとして、生徒が長年抱えてきた苦悩も認めた。(加害教諭は控訴せず、判決は確定した。)

事件の経緯

男子生徒は、中学1年生の2学期から担任で男子バレーボール部の顧問教諭に月に2回ほど放課後に残され、校内の会議室など人目のない場所で、勉強や生活指導は一切無く、代わりに担任教諭は「お前には問題がある」と繰り返し、生徒を精神的に追い込んで行った。そして、その年の10月頃には生徒の股間を触るようになった。

生徒が嫌がると「お前は我儘だ、クラスから出ていけ」とか「俺がいないとお前は何もできないし、いじめられる」と夜10時頃まで詰り、精神的に衰弱させて抵抗できないように仕向けていた。生徒は周囲の大人に相談したが、両親は親しみを込めて触っているのだと思い、「熱心な先生だし、下手に揉めると内申点に響くよ」と言い、学年主任も「あの先生がそんなことをするわけがない」と取り合わず、誰も生徒を助けなかった。

11月になると担任教諭による加害はエスカレートし、生徒は長時間詰られた後で、「何をしたいか言ってみろ」と問われ、何を答えても許されず、錯乱した頃に誘導される形で「キスしてください」と言わされた。そのことが新たな脅しの材料となり、更に言いなりにさせられるようになった。

生徒は中学2年生になってすぐに、登校せず他県の親類宅へ逃げたことがあったが、自らも学校を抜けて生徒の母親から生徒の居場所を聞いた担任教諭は、その日の午後にその親類宅にまで現れた。生徒は、もう逃げ場はないと絶望し、度々自殺を考えるようになった。

被害が最も酷かったこの時期、生徒は職員室で泣きながら実情を訴えたことがあったが、教頭をはじめ、その場にいた教師は目を丸くするだけでただ黙っていた。担任教諭は他の教師の黙殺をいいことにして、生徒へのわいせつ行為を重ねていた。

生徒が3年生になっても担任は変わらなかった。担任教諭からのわいせつ行為は、2学期の終業式の日に担任教諭から「これからは自由にしてやる」と一方的に宣言されるまで続いた。

中学入学直後は「積極的」な性格だった生徒は、3年間の性暴力を経て、対人関係をうまく構築できなくなっていた。高校も大学も地元の学校は精神的に辛くなって退学し、どちらも遠方の学校に入り直した。大学を卒業し、資格試験の勉強をしていた25歳の時には、精神科への通院を要するほど精神状態が悪化した。

2017年7月に改正刑法が施行され、強制性交等罪に口腔性交も処罰対象になり、被害者の性別も不問になったことを知った生徒は、地元の警察署へ初めて相談に行った。

生徒が塾講師をしていた2006年に、加害教諭の当時の勤務校に通う男子生徒から「部活でもクラスでも男子生徒は全員、◯◯(加害教諭の苗字)から股間を触られたことがあります。他の先生たちも見ているし、知っているのに何もしてくれません」と聞き、2016年に教員を退職した加害教諭には、その直前まで自分と同じような被害者がいたのではないかと案じていた。

2017年10月、生徒は千葉県教委と松戸市教委に自身の被害を伝え、調査を依頼した。千葉県の条例では、在職中に懲戒免職処分を受けるべき行為をしたと認められる場合には、退職後でも一定期間、退職金の返納を命じる処分を行うことができると定めており、生徒はその処分を求めた。

松戸市教委学務課によると、調査は加害教諭が定年前に勤務していた直近3校の学校長への聞き取りと、千葉県教委による生徒へのアンケート調査の確認だったが、わいせつ行為が疑われる事案は見つからなかったという。加害教諭本人にも簡易書留で調査依頼を送付したが、期日までに返答はなかった。既に退職している私人であり、市教委には強制力のある調査権がないとして、調査は同年末に終了した。
この調査結果に納得がいかなかった生徒は、主要新聞社などメディアに100通を超える情報提供のメールを送ったが、記者からの反応はなかった。

2018年2月、Yahoo!ニュース特集で「教師から『支配』のわいせつ――『スクールセクハラ』実態と構造」に掲載された記事を書いた秋山千佳記者に生徒はメールを書き、秋山記者は生徒の話を、雑誌「保健室」(現在は廃刊)同年6月号とYahoo!ニュース特集、月刊文藝春秋などで取り上げた。生徒はそれ以降、様々な媒体の求めに応じて証言してきた。他の被害者たちの告発と相まって、教員による性暴力を許してはならないという世論が高まり、2021年5月には「わいせつ教員対策法」が成立した。

生徒は、公的機関に事件を認定してもらうことが自身にとって最終的な解決になるという思いがあったが、民事裁判で一般的な損害賠償請求は、不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」がネックとなり、弁護士に相談しても難しいと断られ続けていた。

2022年2月、生徒は同じ松戸市の男性が同市立中学生のいじめ自殺への対応を巡り一人で訴訟を起こし、市に一部勝訴したという記事を読み、市教委に再調査を訴える材料にしようと加害教諭の連絡先を探し当て、2018年に探りのメールを入れた際に、本人からの返信で中学時代の生徒の下着を所持していたと認めていたことを思い出し、その下着の返還を求める訴訟を起こし、判決文で動機にあたる部分を事実認定してもらおうと考え、提訴した。

5月に松戸簡易裁判所で裁判が始まり、口頭弁論が3回開かれたが、加害教諭は便箋に鉛筆書きした粗雑な答弁書を提出しただけで、一切姿を見せなかった。加害教諭は生徒から奪った下着について、転居の際に焼却炉で燃やしたため無いと弁明し、中学時代のわいせつ行為にについては全く争わなかった。これについて、生徒は「争わないということは被告側が認めていると解されるので、普通ならあえて判決文には書かないそうです。ただ、裁判官は、私が下着そのものより事実認定を重視していると察したようで『中学時代のことも認定したほうがいいか』と尋ねてくれました」と取材に答えている。

2022年9月 裁判所は、加害教諭に生徒の下着の返還を認めた。「事実及び理由」は5ページにわたり、わいせつ行為などの事実だけでなく、「被告によるスクールセクハラ行為は、原告が人生で様々な幸福を経験する機会を奪い、原告の人生を破壊した」など、生徒が長年抱えてきた苦悩が認められていた。

加害教諭は控訴せず、判決は確定した。松戸市教委は、判決を受けて「原告の方は、身体的にも精神的にも非常におつらい思いをされたと承知している。今後の対応については県と協議してご本人にお伝えしたい」と取材に応じた。生徒への謝罪は2022年11月末現在もされていないが、加害教諭には再調査依頼を送付したという。

松戸市では、2022年に市立小学校内で男性教師が女児の体育館靴に体液を掛け、器物損壊容疑で逮捕される事件が起きている。

参考資料

“教師から性暴力、34年後の勝訴 「重い扉」開けた男性の願い” Yahoo!ニュース特集 (2022年11月29日)

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