宮城県石巻西高校教師間パワハラ自死事件

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2020年10月23日、宮城県石巻西高等学校に勤める女性教諭(30歳代)は、同僚の男性教諭(59歳)から「仕事は一切お願いしません。会議には出ないでください」と書かれたメモを机に置かれるなどのパワーハラスメントを受けて自死した。

2022年10月、女性教諭の自死は男性教諭のパワハラが原因だとして公務災害が認定された。

2024年2月2日、県教委は男性教諭のパワハラが自殺に繋がったと判断し、男性教諭を停職3か月の懲戒処分とした。全国的には懲戒免職に該当する事案であり、最大12か月まで課すことができる停職処分をわずか3か月としたことに対して県民からの抗議が殺到した。

2025年7月10日、県教育委員会は男性教諭のパワハラを改めて認定し、両者を職場内で引き離すといった対応を怠った管理職である当時の校長や教頭に「重大な過失があった」とする検証報告書を公表した。

事件の経緯

2020年6月、他の職員もいる校内会議の場で女性教諭が男性教諭から業務の進捗状況について執拗に問い詰められたことから、当時の校長の判断で2人の間の業務上のやり取りは口頭ではなくメモで行うようになった。その後、男性教諭から女性教諭の机の上にメモや手紙が置かれるようになった。7月31日の手紙には女性教諭が男性教諭を避けていると感じることについて「はっきり言って先生の私に対する態度は『失礼』だと思います」「正直『不快』です」といった内容や、「人としていかがなものかと思います」などと書かれていた。その後、学校の管理職からメモを出すことを止められたにもかかわらず、男性教諭は継続して行っていた。

10月22日の手紙には「教務部員としての自覚がないと思います。教務の仕事は一切お願いしません。教務部会にもでないでください」などと書かれていた。
10月23日、女性教諭は自死した。女性教諭の元には男性教諭から10数枚のメモ紙と2枚の手紙が届いていた。

2022年10月、地方公務員災害補償基金県支部は男性教諭のパワハラが自死の原因だとして公務災害に認定した。認定理由の中では「精神的な攻撃に当たるような言動などを繰り返し受けていたもので、強度の精神的または肉体的負荷があったものと認められる」と指摘されている。

2024年2月2日、県教育委員会は学校でのパワハラが自殺に繋がったと判断し、男性教諭を停職3か月の懲戒処分とした。佐藤靖彦教育長は「1人の大切な職員を失ったことに対し、慚愧の念に堪えない。ご遺族には心からお詫びを申し上げたい」と謝罪し、「教職員のパワハラに対する認識や理解が欠如してただけでなく、組織としての対応も不十分であったと認識している。このような痛ましい出来事を今後二度と起こさないという強い決意を持ってパワハラの防止に取り組む」と述べた。処分内容について県教委は「他県の例や処分基準に従った。自死という結果も重くみて判断した」とし、「妥当な処分と考えている」とした。県教委は2012年に定められた「教職員に対する懲戒処分原案の基準」を元に処分を下したとしているが、停職処分は最大12か月まで課すことが出来ると定められていることから、報道陣から処分の妥当性を問う声が相次いだ。会見後、県民から「処分が軽過ぎる」などの抗議が殺到したため、県教育委員会は2024年度中にパワハラを行った場合の処分の基準を見直し、現在は含まれていない免職処分を追加するなどの改定を行うとしたが、男性教諭の処分内容は変更しないとした。
県教委によると、懲戒処分が下された2月2日の前日まで学校で通常通りの勤務を行っていた男性教諭は停職期間を終えた後は教育現場に復帰する見通しで、女性教諭の自死について「本当に残念です。この度の一件を教訓として、教育公務員としての自覚を持ち行動することを再確認し、私自身このようなことが二度とないように決意している」と話しているという。

3月13日、女性教諭の両親と弁護士が初めて会見を開き、父親は「娘はこの学校が初めての職場で、学校が大好き、生徒が大好きでした。職場での嫌がらせを管理職も認識していたので、こんなことになるとは思っていませんでした。無念のひと言です」と述べた。また、当時の学校の対応について、父親は「学校の先生方は娘の状況を心配して当時の教頭先生に多くの情報を伝えていましたが、情報が共有されていなかったことなどが今回の事故に至った大きな問題だと、私どもは思っています」と指摘した。そのうえで「県教育委員会による懲戒処分は、なぜパワハラが続けられたのかなど事実認定が不十分で、適正な処分だったか疑問です。停職3か月という軽い処分は、娘に問題があったように誤解を与えるもので、とても遺憾です」と述べ、県教育委員会が両親の求めに応じてパワハラの事実認定の再調査をしていることを明らかにした。更に、今一番求めることを問われると「娘の死を無駄にしないために、まずは真実を解明して、二度とこのようなことが起こらないようにしてほしいです」と述べ、再発防止の徹底を強く訴えた。

調査委員会

調査報告書•その後

2021年3月、県教育委員会は調査報告書原案を遺族に示したが、その内容は弔問に訪れた複数の同僚の教師から聞いた話とはあまりにかけ離れており、「勝手気ままに振る舞う娘に問題があったかのような書きぶりだった」と遺族が愕然とする内容であり、女性教諭の父親は「おかしくなりそうだった。娘は死んでからもパワハラを受けた」と振り返っている。不信感を募らせた両親は、同僚教諭ら当時の様子を知る学校関係者数十人に原案を見てもらったが、「こんな人ではなかった」といった反応が相次いだ。原案のおかしい部分を11枚の紙にまとめた人もいたという。内部の人間だけによる調査では真相解明は遠のきかねないと考え、弁護士に相談した両親は同年5月に県教委に第三者委員会を設置した上で再調査するよう要望した。

再調査委員会

再調査委員会の設置•調査内容

女性教諭の両親は県教委の調査内容に「娘に問題があったかのような誤解を与える」と第三者委員会による検証を要求したが、県教委は第三者委員会の設置を拒否し、外部弁護士の監修の元で再発防止に向けた検証を行った。
当時学校に在籍していた教職員62人から聞き取りを行った。

調査委員

調査報告書•その後

2025年7月10日、県教育委員会は男性教諭のパワハラを改めて認定し、両者を職場内で引き離すといった対応を怠った管理職である当時の校長や教頭に「重大な過失があった」とする検証報告書を公表した。

2020年6月頃から女性が自死する10月23日までの男性教諭の行為がパワハラに当たると認定した。女性教諭の机に「どれだけ私の顔に泥を塗ったら気が澄むのですか」「自覚がないと思います。これから仕事は一切お願いしません」などと書いた手紙やメモを度々置き、業務上必要な範囲を超えて精神的苦痛を与えたとした。
当時の校長と教頭ら管理職は男性教諭に対し、女性教諭にメモや手紙を出すことを禁じたものの、指導を徹底しなかったと指摘した。男性教諭はメモ書きを繰り返し、自死の引き金になった。管理職は、すぐに両者を引き離すべきだったが実行せず、女性教諭がメンタル不全に陥った時に積極的に関与しなかったことも重大な過失だったとした。

県教育委員会は新任の校長や教頭を対象にハラスメントの具体的な事例を扱った新たな研修を実施するなど、再発防止策を進めるとしている。

2025年7月16日、女性教諭の両親は記者会見を開き、父親は「公表されたことは再発防止につながる」と評価する一方で「真実が明らかになっていない」と憤った。遺族の代理人弁護士は県を相手取った国家賠償請求訴訟の可能性について「検討中」とした。
代理人弁護士は、報告書は客観性を担保するために複数人から同一の話がなければ事実認定しないルールの下で作られたとして、「被害実態を網羅したものとは考えていない」と検証が不十分だと指摘した。再発防止策についても「特に管理職がパワハラに加担しているケースで、相談しにくいことが想定される。独立した外部の相談体制を構築するといった検討が必要だ」との見解を示した。
母親は「広く先生たちに報告書を見てもらい、どうすれば自分たちの職場が良くなるのかを考えて対策をしなければ同じことが起きる」と訴えた。更に、「少しの支えがあれば娘は死なないで済んだ。ぜひ、若い先生を支えるシステムを県教育庁や各学校で作ってほしい」と願った。

参考資料

“パワハラ受け30代教諭自死、管理職にも「重大な過失」 報告書公表” 朝日新聞 (2025年7月11日) 他

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