名古屋市立神丘中学校ソフトテニス部員自死事件

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2018年(平成30年)1月5日、愛知県の名古屋市立神丘中学校の女子生徒(中学1年生•13歳)は、所属するソフトテニス部で複数の部員に練習相手を頼んだが、手伝ってくれず無視されたりするなどのいじめを苦にして、合宿の初日にマンションから飛び降り自死した。

2019年4月12日 報告書ではいじめ行為を認定せず、自殺の原因を「部活動の疲労が蓄積し、合宿へ行くことに不安を感じ、行き場を失った」と結論付けた。

2021年7月30日 再調査委員会は、いじめがあったと認定し、それが自殺の一因になったとの判断を示した。

事件の経緯

2017年9月1日 女子生徒は県外から同校に転校した。女子生徒が所属していたソフトテニス部は土日も平日もほぼ休みなしで、土日は午前8時から午後4~5時まで練習があり、病気や怪我で休んだとしても、グランド3周を走らなければならず、休む度に3周ずつ増えるため、休みにくい雰囲気があり、休むと行きたくなくなるので退部した生徒もいた。挨拶が他の部活よりも厳しく、先輩が気付くまで挨拶するというルールもあった。

11月後半から女子生徒は複数の部員に練習相手を頼んだが、手伝ってくれず、無視されることがあった。

10月11日 学校は「こころのSOS」によるテストを行った。女子生徒は「最近、悲しいことやつらいことがあった」「朝、こころやからだがだるくて動きたくない」「泣きたいような気持ちになる」「友達は本当の自分のことをわかっていないと思う」などの項目にチェックしていた。心理テスト「ハイパーQUテスト」では、総合評価は2番目に低い「不満足群」だった。学校は、女子生徒がこうした心理状態だと把握できていたが、何も対処しなかった。

2018年1月5日、女子生徒(中学1年生•13歳)は、部の合宿で自宅を出た後、マンションから転落死した。この日は7日までの2泊3日の予定でソフトテニス部の合宿があり、早朝に家を出ていた。

2018年1月~3月 市教委は、女子生徒の遺族の要望を受けて教員や生徒を対象にアンケートや個人面談を実施した。記名式で行われたアンケートには「部活はいじめがひどいと聞いている」「上下関係が厳しく、いじめがある」「(女子生徒が)ある生徒を怖れていた」「ある生徒が(女子生徒の)入部に反対した」「無視されているのを見た」など、いじめがあったという回答があり、加害者の生徒の実名も書かれていたが、市教委は「直接的な自殺の原因は特定できない」との調査内容をまとめた。

当初、学校や市教委は「いじめ重大事態」と認定していなかったが、2018年5月になって「重大事態」と認定した。

2018年8月17日 事件が報道された。

調査委員会

調査委員会の設置•調査内容

市教委の調査結果に納得ができなかった遺族側が第三者委員会による調査を要求した。

2018年5月18日 市教委の第三者委員会「名古屋市いじめ対策検討会議」(常設)が調査を始めるとした。
いじめの有無も含めて原因を調べ、当年度中に報告書をまとめる方針とした。
8月に遺族や学校から話を聞き、9月から部活動の仲間や同級生らに聞き取りをした。検討会議は、臨床心理士や精神科医などで構成され、13回の会議が行われた。

調査委員

臨床心理士や精神科医ら6名。
会長:山田敦朗名古屋市立大学大学院医学研究科講師(精神科医)
副会長:犬飼敦雄弁護士(犬飼法律事務所所長)
委員:小竹佑一元名古屋市立中学校長(学識経験者)
杉原里子春日井市スクールソーシャルワーカー(社会福祉士)
坪井裕子人間環境大学人間環境学部教授(臨床心理士)
鈴木真佐子名古屋市立大学大学院医学研究科助教授(精神科医師) (本事案の検証期間中、欠席)

調査報告書•その後

2019年4月12日 報告書ではいじめ行為を認定せず、自殺の原因を「部活動の疲労が蓄積し、合宿へ行くことに不安を感じ、行き場を失った」と結論付けた。

2018年1月に実施した生徒を対象にしたアンケートでは、「力士と呼ばれていたそうだ」「無視をされていたりしたとは聞いたことがある」とのいじめがあったことを窺わせる回答があり、加害者とされる生徒の実名も書かれていたが、報告書では「いじめ行為があったとまでは認められない」とした。

2019年8月6日、河村たかし市長と鈴木誠二教育長が、8日には当時の校長と担任、部活動顧問らが遺族宅を訪問し、それぞれ謝罪したが、これまでの学校や市教委の対応に不信感を抱いていた女子生徒の父親は「社交辞令」との印象を受けた。

遺族は、第三者委には調査される側でもある市教委の職員が居合わせ中立性、公平性が保たれていない上、いじめがなかったとする根拠が乏しいなどとして、報告書の内容を不服と主張した。「1年以上にわたり2度も調査を実施したにもかかわらず、何一つ遺族が納得できるものが提示されなかった」として、市に対し再調査を求めた。

再調査委員会

再調査委員会の設置•調査内容

2019年6月 市長は遺族と面談し、再調査する方針を伝えた。

2019年9月10日 名古屋市は再調査する費用など約1億4000万円の補正予算案を提出した。内600万円は当該再調査費。

2020年3月14日 初会合が行われた。
当時の同級生100人以上から聞き取りを行う方針。
前回の調査結果の検証も同時に進めるとした。

調査委員

委員長:安保千秋弁護士

調査報告書•その後

再調査委員会は、いじめがあったと認定し、それが自殺の一因になったとの判断を示したが、女子生徒が合宿のユニフォームに名前を安全ピンで付けるのをボタンで止めるように嘘を言われたり、雨の日は練習が休みであることを知らされずに一人だけ登校したことなどは報告書では触れられなかった。

2021年7月30日 「調査報告書(公表版)」(PDF:1MB)

名古屋市いじめ問題再調査委員会答申(概要)」(PDF:263KB)

2021年8月 再調査報告書を受け、名古屋市と市教委の担当者は女子生徒の自宅を訪れて遺族に謝罪した。市教委は遺族に対して「学校を通じて連絡をしてください」と言うが、遺族が学校に言っても何の反応もなく、事件の原因と責任の所在を明らかにすることを求める遺族との話し合いを拒み続けた。

2021年10月2日 再調査報告書を受けて「学校でのいじめによる自死防止対策検討プロジェクトチーム」(座長:廣澤一郎副市長)が市長の指示で立ち上がったが、遺族はZoomによる会議で父親が20分ほど話しただけで、全3回の会議でまとめられたレポートには「勝利至上主義、競争主義の下で、途中入部の転入生の練習に付き合っていたら自分の練習ができず、競争から脱落するという心配があった可能性もある(だから当該生徒の練習を手伝うのを厭うことを「いじめ」と即断することは酷なこと)」という記述があった。(女子生徒の父親は、「競争主義の部活では無視するのは当たり前だと言うようなメンバーがいるプロジェクトだったんです」と話している。)

2022年6月 女子生徒の遺族と市の話し合いの後、再調査報告書の中で、独立性があり、実効的な権限があるような検証組織の必要性が指摘されたのを受けて検証委員会が設置された。しかし、再調査報告書で指摘された問題をきちんと深掘りして検証することを求めた遺族の希望は拒否され、遺族には資料が送られてきただけで、委員の人選も含めて口頭の説明もなく進められた。

民事損害賠償請求訴訟

提訴

再調査委員会の報告書の公表後、遺族は市教委との話し合いを求めたが実現せず、裁判外紛争解決手続(ADR)の申し立てもしたが叶わなかった。(河村たかし名古屋市長は「市教委が対応しないから」という理由で遺族に訴訟を勧めた。)
2022年7月19日、女子生徒の遺族は、学校がいじめに「何も対処しなかった」ことが自死の原因だとして、名古屋市に対して1540万円の損害賠償を求めて提訴した。

和解の不成立

裁判の結審後、裁判所は和解案を示し、2024年2月7日に非公開で協議が行われた。遺族は和解案に応じようとしたが、市側が応じなかったため、和解は不成立となった。

一審判決(名古屋地裁)

2024年3月19日、齋藤毅裁判長は遺族らの請求を棄却した。
判決で名古屋地裁は「(女子生徒が亡くなる前の)17年12月当時、本件いじめを具体的に認識することができたとはいえないから、直ちに本件生徒に丁寧な面接をしたり、養護教諭に引き合わせたり、本件生徒の両親に十分な説明をしたり、教員同士で十分な情報共有をしたりすべき義務を負っていたものとはいえない」「体制を準備したとしても、直ちに今回のいじめを予防したり発見したりすることができたとは認めがたい」などとして訴えを退けた。

また、女子生徒の死亡直後に校長が女子生徒の父親に対して「(女子生徒は合宿に行こうとして)誰もこないので、あれおかしいなということで一旦家まで戻って(中略)あれどこかなと思って結局9階まで上がって皆の集合場所どこかなと思って無防備にあそこから見(て落ち)たのかなと僕は思ったんですよ」という自殺を否定する発言をしたことについて、裁判所は「遺族に対する配慮が不足していた」としながらも、「その時点においては、不適切であったとは必ずしも言えない」と判断した。

判決後、ジャーナリストの渋井哲也氏の取材に対して女子生徒の父親は「判決文は、“問題があってもいい”と、学校がいじめに対応しないことを容認している内容になっている。“たしかにおっしゃるような事実はあるけれど、法的責任はないんだよ”の繰り返し。娘も、『やっぱりね』って言うと思います。名古屋市からは、子どもの命に対しての真剣度や重大性みたいなものを感じたことがないですが、それが露呈した裁判じゃないかと思っています」と話している。

女子生徒の父親は「僕らもやりたくてやっている裁判ではない。和解協議にしても、我々は(裁判所の案を)全面的に飲みますと伝えましたが、市側は一切飲まないと。その理由を聞くと、名古屋市は個別の案件には対応しないというもの。それと、私と『約束するのが重いから』などと言っていました。さすがに裁判所も理解できないと言っていました。結局、最初から最後まで市側は全否定。判決の時、被告席には誰もいませんでした。」と話し、「気持ちとしては今すぐ控訴したい」としつつ、「戦うにも精神力や資金など体力が必要です。家族とも相談します。」と控訴についてはこれから検討するとしている。

女子生徒の父親は「声を上げるのをやめたら、結局、何も変わらない。“それっておかしいよね”と誰かが言わないといけない。私はやっぱり、生涯、言い続けるんだと思います。第2第3の娘(と同じ状況の子ども)が生まれ、悲しむ遺族が増えることは防ぎたい。いじめ防止対策推進法は10年以上も改正されていません。ないよりはマシですが、自治体ごとにいじめの解釈も違う。今のままでは絵に描いた餅ではないでしょうか。」と話している1

事件のその後

2021年9月21日 事件発生当時、名古屋市教委「子ども応援委員会」制度担当部子ども応援室主席指導主事だった高原晋一氏は、「(事件が)調査前から“家庭の問題”と決め付けていた」とし、名古屋市では毎年複数の子どもの自殺があることについて、「(自殺の理由を)わからなくしておきたいのでは、と思ってしまいます」と告発している2

2022年6月13日の参議院決算委員会にて、日本維新の会•梅村みずほ議員の質問に答えて岸田文雄総理は「いじめを背景とした自殺の事案が発生した場合、ご遺族の事実関係を明らかにしたい、何があったのかを知りたい、こうした切実な思い、これを理解し、ご遺族に寄り添い対応に当たることはきわめて重要な姿勢であると認識をいたします」と答弁した。

2022年7月14日 文科省初等中等教育局児童生徒課長を経験した坪田知広氏が教育長に任命され、市議会で同意された。就任直後、坪田教育長は女子生徒の父親に会いに来たという。

事件の報道

「娘を返せ!歯を食いしばってきょうまで来た」父の心の叫び‥それでも教育委員会は‥責任はどこに?


出典:CBCドキュメンタリー

参考資料

“名古屋中1女子いじめ自殺「アンケートには加害生徒の実名が書いてありましたが…」” 文春オンライン (2021年8月27日) 他

  1. “名古屋中1いじめ自殺訴訟、市が和解案に応じず賠償請求も棄却…「娘も『やっぱりね』って言うと思う」遺族の失望” 弁護士JPニュース (2024年3月22日)
  2. “《名古屋中1いじめ自殺》元市教委職員が実名告発「調査前から“家庭の問題”と決めつけていた」” 文春オンライン (2021年9月21日)
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