岡山県立岡山操山高校野球部員自死事件

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2012年(平成24年)7月26日、岡山県立岡山操山(そうざん)高等学校の野球部のマネージャーの男子生徒(高校2年生•16歳)は、監督の教諭(45歳)から体罰を含む行き過ぎた指導と、日常的に人格を否定する暴言を吐かれることを苦にして自死した。

県教委は当初の調査で自死の原因を「不明」としたが、男子生徒の両親は独自の聞き取りにより顧問の言動を問題視し、第三者委による調査を繰り返し要望した。男子生徒の自死から6年後の2018年8月にようやく調査が始まり、2021年3月に「自殺の原因は野球部監督の激しい叱責」とする報告書がまとめられた。

事件の経緯

2011年(平成23年)4月 男子生徒は岡山県立岡山操山高校に入学して野球部に入部した。野球部の顧問の教諭は、練習中に部員に対して「殺すぞ」「死ね」や「帰れ」など人格を否定するような発言をしたり、パイプ椅子を振りかざしたりするなど、感情的になって怒鳴ることが多かった。部員の態度が気に入らなければ体罰やパワハラを行っていた。

男子生徒は1年生の3学期に野球部の日誌に「自分はチームにとって存在価値がない」「目標も分からなくなった」と書き、練習を休むようになった。

2012年春以降、男子生徒は顧問から練習試合中に「声が出せないなら、帰れ」「いらんわ。おまえなんか制服に着替えて帰れ」などと叱責され、練習試合はバックネット裏で見るしかないようになった。その日以降も男子生徒は顧問から罵倒され続け、男子生徒は6月11日に退部した。

7月23日 男子生徒は同級生に野球部への復帰を誘われ、3年生の引退でマネージャーがいなくなることもあり、男子生徒はマネージャーとして復帰した。復帰する時に顧問に威嚇するような態度を取られていた。復帰した日も顧問から「マネージャーなら黒板くらい書け」「マネージャーらしい仕事をしろ」「声を出せ」と厳しい口調で叱責され、翌日にも怒られたり怒鳴られたりした。

復帰して3日目の7月26日にも足が攣った1年生部員のために氷を持ってくるのが遅かったなどとして男子生徒は顧問から怒鳴られたり叱られたりした。練習後、顧問が男子生徒を大声で呼んだが、部室の掃除をしていた男子生徒は気付かなかった。そのことから男子生徒は練習後に炎天下のグラウンドの本塁付近に一人呼ばれて「マネージャーならグラウンドから目を離すな」「きちんと仕事をしろ」などと大声で叱責された。一緒に下校した同級生の部員にこれからもマネージャーを頼むと声を掛けられた男子生徒は、「もう俺はマネージャーじゃない。存在してるだけだ」と返答した。その数時間後、男子生徒は自死した。男子生徒は部員に対して、野球部を一度辞めた理由を「先生に怒られるのが嫌。野球が面白くない」と説明し、復帰した時は「マネージャーなら叱られない」と話していた。

県教委は男子生徒の自死の直後に部員や学校関係者から聞き取り調査をし、指導と自殺の因果関係は不明だとした。2012年から2013年にかけての県教委の調査では、顧問が「マネジャーらしい仕事をしろ」などと繰り返し叱責したことが判明したが、体罰やいじめは確認されず、「自殺との因果関係は不明」と結論付けた。

2013年2月、同校のPTA会長は事件を新聞の報道で初めて知った。そして遺族と初めて対面し、「事件の重大性とPTAとして遺族に寄り添う必要性を感じた」というPTA会長は、同年3月に遺族と共に岡山県教育委員会の職員と面会した。男子生徒の一周忌が過ぎた同年8月に顧問はPTA会長に促されて遺族と面会したが、顧問は話をしている途中に声を荒げて遺族に謝罪をしなかった。

2015年12月25日 男子生徒の両親による「人権救済」の申し立てを受け、岡山弁護士会が「生徒に対する教育的配慮を欠く、行きすぎた叱責が人権侵害にあたる」として、再発防止のための措置を求める要望書を高校と県教育委員会に提出した。
要望書は、野球部監督の教員について、日常的に「殺すぞ」などと暴力的な発言をしたり、パイプ椅子を振りかざしたりしたほか、自殺した生徒に叱責を繰り返していたと指摘した。「自己肯定感を低下させ、いたずらに自責の念を募らせるものであって、教育的配慮を欠いていた」「人格権、ひいては学習権を侵害する違法なもの」とした。一方で、生徒の遺書がなかったことなどから、自殺と監督の指導との因果関係は「不明」と結論付けた。

調査委員会

調査委員会の設置•調査内容

2012年8月 男子生徒の遺族は公平中立性を確保した調査を求めたが、第三者委員会の設置主体を巡って遺族と県教委の意見が対立した。

2013年8月 男子生徒の遺族は県教委に第三者委員会の設置を求めるが、県教委は設置を拒み続けた。県教委は遺族との調整もついていない中、「自殺予防と発生時対応マニュアル」を県立岡山操山高校での自殺問題を受けて作成したと同年10月に地元紙で公表した。男子生徒の父親は、「今の教育長も、子どもの気持ちに気づける環境整備をする、子どもの悩みを聞くと言う。そうではなくて、そういう気持ちにした先生が悪かったと原因を探らなければ、学校や部活動での暴言やパワハラはなくならないはずだ」として、「そうやって論点をずらす姿勢は、ずっと変わらない」と県教委に対する不信感を隠していない。

2017年5月 男子生徒の遺族が第三者委員会の設置を求めた。
2018年8月13日 県教委が第三者委員会を設置すると発表した。
8月16日 初会合が開かれた。
12月 元同級生ら130人にアンケートを送付した。

調査委員

委員長:新阜(にいおか)真由美弁護士(大阪弁護士会)

男子生徒の両親は、不適切指導に関する専門家など外部有識者を含む6人の加入を求めたが、その半数は受け入れられなかった。不適切指導に詳しいとされる有識者も、遺族には相談されることなく変更されていた。

調査報告書

2021年3月26日 第三者委員会は、監督である男性教諭が体罰を含む行き過ぎた指導で萎縮させた上、直前に厳しく叱責したことが自殺の原因であると認定した。また、以前から監督を怖がっていた男子生徒が、グラウンドでの激しい叱責で「自分自身の存在価値を改めて否定したものと考えられる」と指摘し、自殺の主な原因になったと結論付けた。

教諭の当該生徒に対する言動は、「教員という立場を利用したハラスメントであったとも言える」と認定した。また、問題発覚後の学校や県教委の対応についても、「遺族の心情に寄り添っていない」「調査が不十分」などと批判し、第三者委員会の発足まで6年以上経過したことなどを理由に「遺族が知りたいと考える事実すべてを解明することはできなかった」として、学校や教育委員会に原因究明の姿勢が欠けていたことを指摘した。

事件のその後

2023年3月15日に岡山県教育委員会は、この事件から県立校で自殺が発生した場合の調査に関わることなどの基本方針を公表した。今後はこの方針に沿って再発防止策を策定する。教育委員会は前年の8月に基本方針を示すことを目指していたが、そこでは原因究明に第三者が関わるか否かが示されていなかったことから遺族から不十分と指摘されていた。

事件後、再発予防対策について話し合う面談には男子生徒の両親と弁護士、当時のPTA会長が出席していた。男子生徒の母親が亡くなってからは代わりに親族や友人が出席を希望し、県教委の許可は下りたが、2024年9月の面談に出席した8人は発言を規制された。

関係者の処分

2021年11月19日 岡山県教育委員会は野球部監督の教諭を停職3ヵ月の懲戒処分とした。(処分後、教諭は同校通信制に異動し、軟式野球部の監督として活動している。)
県教委は、教諭が日常的に「殺すぞ」などの暴言やパイプ椅子を振り上げるなどの体罰を繰り返し、自死した生徒にも激しく叱責していた行為を、「教員という立場を利用したハラスメント」とし、「生徒の自殺という重大な結果になったことを踏まえ総合的に判断した」と処分理由を説明した。教諭は「自らの野球経験から間違っていると思わなかった。深く反省している」と話している。

また、当時の野球部長ら3人については「監督に任せきりにし、不適切な指導を抑止することができなかった」とし、県教委の担当職員4人は「指導や調査が不十分で、遺族が求める第三者委設置に向けた努力を怠った」などとして厳重注意などの処分にした。当時の校長や教育長については、既に退職していることから処分の対象外とした。

これらの処分について、男子生徒の遺族は「あまりの軽さに驚いています。息子を死に追いやった体罰やハラスメント、私たちを9年以上も苦しめてきた県教委、学校の保身行為に対する第三者委員会の判断との問題意識の表れであると感じています」、「この程度の処分であれば今後の再発は避けられない、処分の理由について詳しい説明を求めたい」とコメントした。

関連資料

県教委が遺族に対応や認識を説明 岡山操山高校の生徒自殺で


出典:KSB瀬戸内海放送

参考資料

“野球部監督の叱責で16歳少年が自殺、遺族の訴え” 東洋経済ONLINE (2021年7月4日) 他

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