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大阪市立桜宮高等学校2年生でバスケットボール部主将のの男子生徒(17歳)が、顧問教諭(当時47歳)から体罰を受けた翌日の2012年(平成24年)12月23日、自室で桜宮高校指定のネクタイで首吊り自死した。生徒は顧問教諭に宛てた手紙に「なぜ僕だけがしばき回されなければならないのですか」と書き残していた。顧問教諭は日常的な体罰を認め、懲戒免職となった。
2013年9月26日 大阪地裁は体罰が自死の一因と認め、傷害と暴行の罪で懲役1年、執行猶予3年の判決を言い渡し確定。
2016年2月25日 遺族が損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は大阪市に約7500万円の支払いを命じ、確定した。
事件の経緯
男子生徒はキャプテンに就任してから、顧問教諭から「試合でミスをした」などとして数十発平手打ちされるなど集中的に暴力を受けるようになり、またキャプテンを辞めるように迫られていた。
2012年12月19日 男子生徒が指導方法に疑問と私見を書き連ねた文書を顧問に渡そうとするが、他部員から引き止められたため文書が顧問に渡ることは無かった。家族への謝罪と部活動継続が困難な旨をルーズリーフに纏めた遺書が同文書と共に葬儀後に自室で見つかった。
僕は今、キャプテンとして部活に取り組んでいます。先生が練習や試合で、自分ばかりに攻めてくるのに僕は不満を持っています。たしかに、自分は先生に言われたことができないし、ルーズボールもしなかったです。でも、それをしていないのは僕だけですか?僕はそうではないと思います。一年の●●や、●●が一回ミスしただけでは言わないのに、僕が一回ミスしたら必ず怒られます。昨日の話を聞いていても、こういうことをする人がキャプテンになる人と言っていましたが、どこのどんなチームでも、そんな完璧な人いないと思います。僕は先生に言われたことをしようとは思っています。考えようと努力もしています。でも、なかなかできないです。リーダーの本も読んだのですが、それがすべてできるとも思っていないです。先生は僕に完璧な人間になれと言っているようにしか僕は聞こえないです。僕は、先生がキャプテンが必要とすると言っている、多くのことができていないです。やろうとはしています。僕は僕なりに、その場の出来事をどうやったらいいだろう。と考えています。先生は僕に、何も考えていないと言いますが、僕は考えています。いつもその場で答えることができませんが、じゃあ逆に、それを完璧に答える人はいるのですか?たまにはいると思いますがたいていの高校生にはいないと思います。●●さんが講演会をしてくれた日に僕は●●さんが言っていることを自分なりに理解して一生懸命やりました。なのに、なぜ、翌日に僕だけがあんなにシバき回されなければならないのですか?一生懸命やったのに納得いかないです。理不尽だと思います。僕は、今正直、何をやっても無駄だと思います。キャプテンをしばけば何とかなると思っているのですか?毎日のように言われ続けて、僕は本当に訳が分からないとしか思っていません。先生は僕に、専攻の授業前に、ポケットに手を突っ込む奴がいるから止めろと言いました。でも、次週の朝礼の帰りに、先生はポケットに手を突っ込んでいました。それは、言っている人は言ったことを守るべきではないですか?と僕は思います。僕は問題起こしましたか。キャプテンしばけば解決すると思っているのですか。もう僕はこの学校に行きたくないです。それが僕の意志です。(●●は名前)
出典:朝日新聞DIGITAL
12月22日 男子生徒は暴力を苦にして家族にも相談し、キャプテンを降りることも検討していたが、顧問教諭は「キャプテンを辞めるのならレギュラーか今まで通り殴られ続けろ」と迫った。
顧問教諭が男子生徒に恒常的な怒号と暴行(を伴う指導)を与え続け、男子生徒の顔面や頭部を数十回程度殴打、この暴行傷害の現場は一般観覧者によって撮影され動画に収められた。同男子生徒は帰宅前に実母の気分を害さないよう血痕による汚れが無いか確認して帰宅した。
12月23日 男子生徒が自死した。
学校と教育委員会の対応
2013年1月8日 大阪市教委は事実関係を公表した。学校はバスケットボール部員に対し「体罰」の調査を行い、「自分も暴力を受けた」「自殺した生徒への暴力を見たことがある」などの証言が得られたという。また大阪市教委の聴取に対し、顧問教諭は生徒を殴ったことを認め、「強いチームにするためには『体罰』は必要」などと話した。
2013年2月13日 大阪市教委は、顧問教諭を懲戒免職処分にした。
3月26日 大阪市教委は、体罰を見過ごし、他の教諭からの調査を求める進言を放置するなど適切な監督責任を怠ったとして、前校長を停職1か月、教頭(55歳)を同10日の懲戒処分にした。
この教諭については以前にも、大阪市教育委員会に、体罰をしているのではないかという情報が寄せられたが、学校からは「体罰はなかった」との報告があったという。
2013年4月30日 大阪市外部監察チームが報告書を提出した。平成23年にバスケットボール部の顧問だった元男性教諭に関する体罰情報が外部から寄せられながら放置されたことについて、学校内の不祥事を外部ではなく校長が調査し、教員畑の市教委職員が校長を指導することから「調査に限界がある」などと批判。学校側と市教委側とのなれ合いの調査となった可能性があると指摘。大阪市教育委員会に速やかに調査方法を見直すよう求めた。
大阪市のホームページに報告書を掲載した。http://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000217951.html
「外部監察チーム報告書(p1‐p14)」 (PDF:480KB)
「外部監察チーム報告書(p15‐p26)」 (PDF:465KB)
「外部監察チーム報告書(p27‐p38)」 (PDF:422KB)
「桜宮高等学校生徒アンケート調査結果1」 (PDF:111KB)
「桜宮高等学校保護者アンケート調査結果2」 (PDF:124KB)
「桜宮高等学校学校教職員アンケート調査結果3」 (PDF:121KB)
事件の背景
男子バスケットボール部の顧問でJBA(日本バスケットボール協会)公認コーチ資格を持つ保健体育科の顧問教諭(日本体育大学卒)は、チーム強化•プレー向上には、対抗試合の勝利へと繋がる有効手段として体罰を伴う指導が効果的という認識であった。
桜宮高校が正課として体育科及びスポーツ健康科学科を設置。運動部活動を奨励し、高い成果を目標に掲げる方針もあり、顧問の赴任当初から始めた学校教育法11条に則さない加害を伴う指導方法は、卒業生や保護者などから高評価を得ており、クラブ活動(部活動)指導上の体罰も是認•推奨していた、とされる。この顧問の手腕で、バスケ部は全国大会の常連チームへ成長、保護者らも熱心に応援し、市内でも有数の強豪チームに育った。
刑事裁判
2013年7月4日 大阪地検が、元教諭を傷害、暴行両罪で在宅起訴。
一審(大阪地裁)
2013年9月26日 元顧問教諭に、傷害と暴行の罪で、懲役1年、執行猶予3年の有罪判決。(確定)
「満足できるプレーをしなかった生徒に暴行したことは理不尽と言うほかない」としたうえで、すでに懲戒免職になっていることなどを理由に執行猶予付きの判決を言い渡した。
民事損害賠償請求訴訟
2013年12月11日 遺族の両親は、体罰を知りながら防止しなかった大阪市の管理責任を追及したいと、大阪市を相手取り約1億6500万円の損害賠償を求めて提訴した。
一審(東京地裁)
2016年2月25日 大阪市に約7500万円の賠償を命じた。(確定)
顧問教諭の有形力行使による暴行及び威迫的言動を、教育上の指導として法的に許容される範囲を逸脱した一連一体の行為として、不法行為と認定した。自殺との因果関係、予見可能性を認定した。生徒にもストレスに弱い面があったとして、3割の減額。(確定)
元教諭に対する求償訴訟
2017年11月8日 延滞遅延金を含めて大阪市が支払った額の半額相当に当たる約4300万円を、元教諭が大阪市に支払うよう求める訴訟を提訴した。
一審(大阪地裁)
2018年2月16日 元教諭に対して賠償金の半額(約4360万円)の支払い命令。
参考図書
桜宮高校バスケット部体罰事件の真実―そして少年は死ぬことに決めた
島沢優子(著) / 朝日新聞出版 / 2014年12月5日
<内容>
2013年に発覚した大阪の名門高校バスケ部キャプテンの自殺。
17歳が死を選んだ理由は、顧問による体罰だけが原因なのか?
遺族や関係者への綿密な取材に基づき、重大事件の真実と裏側に迫る衝撃のルポルタージュ。
