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2021年(令和3年)6~8月、静岡県裾野市の社会福祉法人桜愛会が運営するさくら保育園の1歳児を担当していた30~40歳代の女性保育士3人は、園児にカッターナイフの刃を見せて脅したり、女児の顔を押したり、男児の足を掴んで宙吊りにしたり、別の男児の頭を殴るなどの暴行を繰り返し、同年12月4日、静岡県警は女性保育士3人を暴行容疑で逮捕した。
同園の1歳児は約20人で、保育士6人で担当していた。同僚の保育士らが園長に実態を訴えたが、改善されなかった。関係者から連絡を受けた市が事実関係を調査し、不適切な保育が確認されたとして保育園に是正指導などを行った。保育園は3人を出勤停止などにするとともに、1歳児の担当から外したという。
園と市は8月には一連の虐待行為を把握していたが、「園児にけがはなかった」とした上で、被害を受けた園児は特定の子どもではなく、登園できなくなったり、転園したりした子どもはいないとして、このような保育がいつから続いていたのかは明らかにせず、11月下旬に表面化するまで公表しなかった。市側は担当部局が市長に3か月以上報告せず、市長に報告したのは問題が表面化する前日だった。市の初動は遅れ、結果的に公表の遅れを招いた。「事実確認に時間がかかった」という担当部局の釈明に、村田悠市長は「すぐにでも警察に相談しないといけない内容だ」と断じ、担当部長を更迭する考えを示した。園側では、桜井利彦園長が園の機密事項を口外しないよう求める誓約書を全保育士に書かせて隠蔽工作とみられる動きを行った。
3人が担当した1歳児クラスでは虐待行為が日常化し、他の保育士が見聞きしても「見て見ぬふり」することが当たり前だった。3人のうち2人は子どもがいる母親で、動機は依然、はっきりしない。市は園側から「しつけのつもりだったようだ」と説明を受けたが、手足口病の症状がある女児の尻を男児に無理矢理触らせるなど、しつけとは思えない虐待行為も露見している。男児の頭を殴った女性保育士は、弁護士に「新型コロナで増えた業務と園児の世話に忙殺され、思わずやってしまった」と話している。
3人のうち正規職員と臨時職員は暴行容疑を認め、派遣職員は一部認めていないという。正規職員と臨時職員は出勤停止後に勧奨退職、派遣職員は譴責(けんせき)の処分を園から受けた。2022年11月末現在、1人は既に退職、他の2人も退職予定という。
さくら保育園の定員は120人で、乳児から就学前までの子どもを受け入れている。
事件の経緯
2021年6~8月、女性保育士3人により園児への暴行が行われる。
7月、同僚保育士が上司に虐待行為を訴えるが、園は市に報告しなかった。
8月17日、市が虐待行為に関する情報提供を受ける。
8月22日、市が園長に事実関係の調査を指示する。園から3人が虐待行為を認めた報告を受ける。
8月25日、園が市に虐待行為の調査報告書を提出する。
10月下旬、園が機密事項を口外しないよう求める誓約書を保育士に書かせる。
11月28日、市の担当部局が村田悠市長に概要を初めて報告する。
11月29日、一部報道で問題が表面化する。園が保護者説明会を開く。
11月30日、市が記者会見で15項目の虐待行為を公表する。(後に16項目に訂正)
12月3日、県と市が園を特別監査する。
12月4日、県警が暴行容疑で保育士3人を逮捕する。
12月5日、村田市長が園長を犯人隠避容疑で告発する。
2022年2月9日、静岡県と裾野市は一部で不適切な保育が確認されたとして、社会福祉法人桜愛会に改善勧告を出した。
暴行の態様
• ロッカーに入って泣いている男児を携帯電話で撮影する。
• 園児の頭をバインダーで叩き泣かせる。
• 棚に入った園児の足を掴んで引っ張り出し、足を掴み宙吊りにする。
• あらかじめ遅刻すると連絡があった園児に対し、腕を引っ張り、「遅いんだよ」と怒鳴る。
• 午睡時、寝かしつけた園児に対し、「ご臨終です」と何度も発言する。
• 泣かない園児に対し、額を叩き無理矢理泣かせようとする。
• 昼食時に園児を怒鳴り付け、頬をつねる。
• 日常的に特定の園児に対し、睨み付け、声を荒げ、ズボンを無理矢理下ろす。
• 園児を宙吊りにした後、真っ暗な排泄室に放置する。
• 園児の容姿を馬鹿にした呼びかけ(ブス、デブなど)や暴言を浴びせる。
• 手足口病の症状のある女児の尻を、男児に無理矢理触らせる。
• 給食を食べない園児に対し、突然、後ろから頭を叩く。
• 不適切な発言をして、園児をおもちゃが入っている倉庫に閉じ込める。
• 園児に対し、カッターナイフを見せて脅す。
• 丸めたゴザで園児の頭を叩く。
• 園児を撮影した写真に不適切なコメントを記し、グループに配信する。
警察の対応
県警は問題が表面化した11月29日には捜査に着手し、12月4日には3人を一斉に逮捕した。ちょうど同時期、富山市の認定こども園で発覚した本郷町保育園園児虐待事件では、関係した保育士2人について書類送検にとどまっており、静岡県警の速さと厳しい姿勢が際立っている。
裾野市の村田市長は、発覚直後から三人や桜井園長の刑事告発を検討する考えを表明した。園の体質を厳しい口調で批判したが、そんな市の幹部も「書類送検で終わると思っていた。こんなに早い段階で、しかも三人とも逮捕に踏み切るとは思いもしなかった」と驚くほどだった。
ある捜査関係者は「子どもが絡む事件は注目を集める。署や県警本部にも『早く捕まえろ』との電話が相当数あり、やらないわけにはいかなかった」と、社会的な注目の集まりを理由に挙げた。(その後、3人は処分保留で釈放された。)
参考資料
“園児を倉庫に閉じ込め、足つかみ宙づり 保育士3人を問題行為で処分” 朝日新聞 (2022年11月30日) 他