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2016年(平成28年)2月3日、宮城県の仙台市立南中山中学校の男子生徒(中学2年生•14歳)は、複数の同級生からの暴言などのいじめを苦にして自死した。
2017年3月29日 調査委員会は、男子生徒が受けたいじめを認め、そのいじめによる精神的苦痛が自死の理由の1つであったと捉えることができるとしたが、遺族は加害生徒の特定といじめの具体的な内容を明らかにするよう再調査を求めた。
2018年12月21日 調査委員会は、最初の調査結果より踏み込んで男子生徒へのからかいや無視などの行為をいじめと認定し、「障害児とからかわれた」「部活動で後輩に『キモイ』などと言われた」「クラスでの無視や好意的ではない『いじり』」などもいじめと認定したが、加害者とされる生徒が調査への協力を拒否したために加害者の特定には至らなかった。
学校側は当初いじめに関する「相談はなかった」としていたが、2017年2月8日になって、生徒の母親が2015年12月に、いじめについて学校に相談していた記録が公的機関の相談窓口に残っていたことが分かり、男子生徒の自死直後に教員が同級生宅を訪れてLINEの履歴の画像の削除を命じた事実と合わせて学校側の隠蔽体質が明らかになった。
2016年6月 遺族側は市教委第三者委が認定したいじめに関わった同学年の男子生徒11人のうち、関与度が高かったとされる8人と、市を相手取り損害賠償を求めて仙台地裁に提訴した。
同じ仙台市泉区の市立館中学校では、1998年と2014年(仙台市立館中学生自死事件)に、いじめによる自死が発生している。
事件の経緯
2015年6月 男子生徒は部活動の後輩3人に自転車のハンドルを壊された。
7月 学校のアンケートに男子生徒が「友人関係は最悪」」「きもいと言われる」と記載。11月にも「無視された」と記載。
教諭が面談すると「以前のことで今のことではない」と説明した。さらに保護者から「当人同士で解決させたい」と申し出があったといい、学校では特に対応を取らなかった。
12月中旬 男子生徒は「クラスでいつも叩かれる」「部活の後輩から『顔が悪い。整形しろ』『死ね』と言われる」などと母親に打ち明けた。母親は息子から「不登校の一歩手前だ」と深刻な状況を聞かされたことを受けて同月、担任教諭らに相談した。
2016年2月2日夜、男子生徒は母親に「加湿器を倒して水が床に溢れたから、タオルを頂戴」と告げてタオルを受け取っており、これを使って翌3日に自宅の自室で首を吊って自死した。机の上にはノートがあったが、いじめや自殺を仄めかす内容は記されていなかった。
2~3月 市教委が全校生徒を対象に緊急アンケート実施した。
2月4日 発生翌日の会見で、市教育長は「継続したいじめで自殺に至ったというものではないだろう」と発言した。
12月28日 男子生徒の自死直後に教員が同級生宅を訪れ、生徒が自死直前までやり取りしていたLINEの履歴の画像を削除するよう命じていたことが分かった。履歴には「無視された」「最近精神崩壊している」などと精神的に追い込まれていた様子が残されていた。複数の教員が自死直後に同級生宅を訪れ、LINE履歴の画像をデジタルカメラで撮影後、「広まったら困る」とその場で削除を命じたという。
遺族は「証拠隠滅だ」と批判した。市教委は遺族にLINE履歴の画像を提供していたが、父親は報道機関の取材に「削除を命じたとすれば、他に隠している画像があるとの疑念を抱く。誰がなぜ命じたのか説明すべきだ」と語ったが、市教委は遺族に対し「現時点では認識していない。事実を確認したい」と述べるに留まった。
調査委員会
調査委員会の設置•調査内容
2016年4月7日 市教委がいじめ問題専門委員会(常設)に調査を諮問した。
(1) 自死に至るまでの事実関係の調査
(2) 自死の原因と背景、いじめ等との関連性の分析
(3) 再発防止に向けた提言
2016年4月 遺族や男子生徒と近い関係にあった教職員29人、保護者が相談を行っていた医療関係者、児童相談関係者に聞き取りを実施した。
5月 市教委が実施した全校生徒アンケートで、男子生徒と近い関係にあると判断した生徒約60人に聞き取り調査への協力依頼を郵送。協力の意向を示した生徒22人のうち、19人に、保護者同伴で実施した。
関係性の高い生徒5人からの承諾は得られなかった。
亡くなった生徒の保護者に2回聴き取り。
会議閉会直後に、随時、保護者に報告した。
2017年2月8日 生徒の母親が公的機関の相談して相談窓口に、記録が残っていたことが判明した。
母親が学校に相談したと主張してきた2015年12月16日の欄には、生徒の状況について、「学校(◯◯先生、◯◯先生、◯◯先生)に伝えた」と担任を含む教師3人の実名が書かれていた。他にも「先生が話を聞いてくれない。もうアンケートには書かない」「いつもたたかれる」「『顔が悪い。整形しろ』『死ね』と言われる」など詳しい記述があった。12月17日には「学校、◯◯先生に電話をした」「不登校一歩手前くらいまで(気分が)めいってきた感じ」などと書かれていた。
遺族側の証言が裏付けられた形だが、市教委教育相談課は「市教委と学校は『相談はなかった』と認識していると説明した。(2017年2月9日河北新報)
いじめ問題専門委員会による調査と、男子生徒が友人に送ったSNSでのやり取りから、いじめに悩んでいたことが推認できた。また、学校のアンケートに「いじめがある」と回答した男子生徒に担任教諭が確認したところ、「大丈夫」と答えたため、その後のフォローを怠っていたとして、学校側の対応にも問題があったと認めた。
調査委員
委員は、教育法律医療心理福祉等について専門的な知識及び経験有する者の6名で構成した。
2014年6月5日~2016年6月4日
委員長:本図愛実宮城教育大学教職大学院教授
副委員長:滝井泰孝東北福祉大学せんだんホスピタル副院長
委員:阿部正孝東北福祉大学社会福祉学科教授
石井慎也弁護士
清水めぐみ東北福祉大学福祉心理学科講師 (臨床心理士)
髙橋勝子公益社団法人みやぎ被害者支援センター犯罪被害相談員
2016年6月5日~
委員長:本図愛実宮城教育大学教職大学院教授
副委員長:石井慎也弁護士
委員:髙橋達男一般社団法人宮城県社会福祉会会長
望月美知子メンタルクリニック•宮城県精神神経科診療所協会会長
清水めぐみ東北福祉大学福祉心理学科講師 (臨床心理士)
髙橋勝子公益社団法人みやぎ被害者支援センター犯罪被害相談員
調査報告書
2017年3月29日 市教委に答申書を提出した。(全17頁)
- 当該生徒は心身の苦痛を感じていることを保護者等に話しており、定義によるいじめがあり、そのいじめによる精神的苦痛が自死の理由の1つであったと捉えることができる。
- 当該生徒には、発達上の課題があり、医療機関にも通院するなどし、特別な支援を擁していたが、多くの生徒たちはそのことを認識しておらず、接点が少ない聖徒には変わっているとの印象を与え、からかいの対象になりやすかった。
- 部活動で下級生から「キモイ」「ウザイ」などと言われることもあったが、男子生徒に対してのみの言葉ではなく「意図的な加害行為とは言えない」と判断した。
- いじめに関するアンケートで、いじめを受けているかのような記述をしていたが、直後の担任との面談で「大丈夫」などと回答。連絡を受けた保護者も静観を要望していた。
- 当該生徒は保護者にいじめを受けていることを話していたが、保護者はこれまでの学校対応を信頼し、自分で解決させたいと考えた。当該生徒も保護者が学校に話すことを嫌がったため、月1~2回、担任に連絡を取るものの、見守っていて欲しいとし、具体的な対応は求めなかった。
- 大人たちは、多面的な情報収集の方法を十分に検討せず、それぞれが持っている情報を共有してこなかった。結果、当該生徒が自死を意識するほどに精神的苦痛を累積させていることを把握できず、重大事案の発生に至ったとした。
いじめに関する相談の有無を巡っては遺族と学校の見解が対立。答申は両者の主張を併記し、結論を出せなかった。
2017年3月29日 「市立中学校生徒の自死事案(平成28年2月)に係る調査結果の答申について」(PDF:173KB)
再調査委員会
2017年4月27日 答申にはいじめについて「誰が」「何を」という核心部分は盛り込まれなかった。父親は「答申を全く受け入れられない」として、加害生徒を特定するため、新たな第三者委による再調査を市教委に要望する所見書を提出した。
2017年5月 所見書は専門委の答申と再発防止策と共に、5月の早い時期に市長に報告するとした。
再調査委員会の設置•調査内容
2017年 市長が市教委の調査結果を受け、再調査の方針を決定した。
いじめ防止対策推進法に基づき、市長が第三者機関「市いじめ問題再調査委員会」を設置した。
2017年9月23日 初会合
2018年1月20日 第5回会合で、市教委の第三者委員会が南中山中学校の事案に関する答申書をまとめた経緯を説明するため同席していた教育長に、野田氏が「あなたたちが(男子生徒を)殺したんだよ」と発言。
2018年2月17日 第6回会合で、委員長の村松氏と1月20日の発言について野田氏と揉めたことから、村松氏が「このメンバーでの審議継続は難しい」と議事の打ち切り、「委員の選任、解任を含め、郡和子市長に判断してほしい」と述べた。
父親は「委員を選び直すには時間がかかり、再調査がさらに遅れる」とする一方、「独断と偏見で打ち切りを決めた」と村松氏の交代を求め、正副委員長のどちらかに遺族推薦委員を就かせることを提案。
2018年3月 市長は現メンバーで継続を決める。
加害者とされた生徒は調査に応じなかった。
調査委員
任期2年の常任委員が県内外の社会福祉士、大学教授、弁護士ら4人。
この他、男子生徒の遺族が推薦した県外の弁護士、精神科医、教育学者の3人が臨時委員として協議に加わった。
委員長:村松敦子弁護士
副委員長:栗原直樹公益社団法人日本社会福祉会理事
委員:堀真一郎学校法人きのくに子どもの村学園理事長
松本和紀氏 (精神科医)
臨時委員:和泉貴士弁護士 (遺族推薦)
中村豊東京理科大学教授 (遺族推薦)
野田正彰氏 (精神科医•遺族推薦)
調査報告書
2018年12月21日 (全62頁)
仙台市いじめ問題際調査委員会が市長に対して答申した。
同級生らによるいじめや学校の不十分な対応など「自死には複数の要因が複合的に関与していた」とする報告書を提出した。
「障害児とからかわれた」「部活動で後輩に『キモイ』などと言われた」「クラスでの無視や好意的ではない『いじり』」などをいじめと認定した。
最初の調査結果より踏み込み、男子生徒へのからかいや無視などの行為もいじめと認定した。
一方、加害者とされる生徒に調査への協力を拒否されたことから、加害者の特定には至らなかった。
また、学校がいじめの可能性を把握したにも関わらず事実確認や校内での情報共有もせず、学習障害がある生徒へのサポートも十分でないなど「学校の対応の怠慢も大きな要因」と指摘した。
民事損害賠償請求訴訟
提訴
2016年6月 遺族側は市教委第三者委が認定したいじめに関わった同学年の男子生徒11人のうち、関与度が高かったとされる8人と、市を相手取り損害賠償を求めて仙台地裁に提訴した。
参考資料
“宮城県仙台市•市立南中山中学校いじめ自殺” 地上の涙 他