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2016年(平成28年)12月8日、兵庫県の宝塚市立南ひばりガ丘中学校の女子生徒(中学2年生•14歳)は、所属する部活動やクラスで同級生9人から受けていた無視や陰口などのいじめを苦にしてマンションから飛び降り自死した。
外階段にあった生徒の鞄から遺書のようなメモが見つかった。また、日記に学校での人間関係の悩みを綴り、死亡前日には「もう死ぬ。生きる意味がない」などと書いていた。
2016年11月末の学校生活アンケートでは、生徒の回答にいじめに関する記述はなかったが、友人が12月1日に「(亡くなった生徒が)交友関係で困っているようだ」と学校に相談していた。
2020年6月22日 再調査委員会は2016年9月末頃から女子生徒が受けていたいじめのうち、所属する運動部やクラスでの無視や暴言、陰口、ボールをぶつけるなど計25件のいじめを認定し、「自殺との間に極めて強い関連性がある」とした。
女子生徒が所属していた部活動では2015年から別の部員に対するいじめが計22件発生しており、既に4人が退部していたにも関わらず、顧問らが具体的な対応をしていなかったことなども判明し、再調査委は「学年、学校を挙げた指導、支援が行われていれば当該生徒の重大事態は避けられた可能性が高い」とし、学校や教員の危機意識の乏しさを指摘した。
事件の経緯
2015年 女子生徒が所属する部活動内で、女子生徒とは別の生徒へのいじめが横行し、部員4人が退部した。1人は脱毛症など「重大事態」に該当していたが、学校と市教委は適切な対応を取らなかった。
2016年9月末頃 女子生徒がクラスの生徒から無視されるようになった。
10月末頃 女子生徒は複数の生徒から学校行事で置いてけぼりにされた。
11月初め 女子生徒は複数の生徒から「ストーカー」と呼ばれ、仲間外れにされた。また、部活動でボールを集中的にぶつけられた。
12月1日頃 女子生徒は着替えの場所に取り残された。
元顧問の教諭が別の生徒から女子生徒が「学校に行きたくない」と言っているなどと聞くが、他の教諭と共に「しばらく様子を見る」と判断した。
12月3、4日 女子生徒は練習試合で無視され、昼食のパンを取られた。パス練習の際は1人で壁打ちをしていた。(再調査委員会は、教諭の一部は孤立する女子生徒を「目撃したと考えるのが合理的」であるとした。)
12月5日 女子生徒はLINEで7人に謝罪のメッセージを送ったが、「他の部員の悪口を言っている」という事実無根の返信などが届いた。
12月7日 女子生徒から謝罪の手紙を受け取った部員が他の部員に読み聞かせ、くしゃくしゃにした。手紙を見せられた部員が手紙を見て笑った。
12月8日 女子生徒は「もう死ぬ。生きる意味がない」とノートに書き、住んでいるマンションから飛び降り自死した。
調査委員会
調査委員会の設置•調査内容
2016年12月28日 市教育委員会は、学校内でトラブルがあった可能性も含め、市教委常設の「いじめ防止対策委員会」に調査を依頼した。
2018年7月までに、76回の聞き取り調査と44回の会合を開催した。
調査委員
第三者委員会は、大学教授、弁護士、臨床心理士の3名で発足した。
2017年1月 精神科医、弁護士、スクールソーシャルワーカーの臨時委員3名が加わり、計6名になった。
会長:石田真美弁護士
委員:髙橋哲(さとし)臨床心理士
吉永省三大学教授
臨時委員:田邉哲雄社会福祉士
野口善國弁護士
持田啓(ひらく)精神科医
調査報告書•その後
2018年7月23日 第三者委が、報告書をまとめて市教委に非公開で答申した。
3回に渡り、遺族に説明した。
遺族側は「いじめと自殺の因果関係が分かりにくい」などと指摘した。
10月1日 報告書の内容を改訂した。内容は公開せず。
10月11日 報道で第三者委によるいじめ認定が判明した。市教委が、「遺族から事実誤認の指摘があった」として、報告書の改訂を認めた。
10月16日 市教委が「非公開」とした報告書について、いじめ4件の認定などの「概要」を示し、改訂は第三者委の主体的な判断であると第三者委は声明文を発表した。
女子生徒が仲間に入ろうとして他の生徒からストーカー呼ばわりされたことや、部活で仲間外れにされたことなど、少なくとも4件をいじめと認定した。
報告書では4件のいじめ行為について、暴力行為はなく、「一つ一つは一見、攻撃性はないと見えるが、総体としては生命の危険にも結びつく重大なもの」と判断した。
また、部内で1年前にも不登校が発生しながら学校側が積極的に関わろうとしなかったと指摘し、不登校になった生徒の訴えを真摯に受け止めていれば、「本件事態は回避しえたのかもしれない」と学校の責任に言及した。
10月18日 遺族が第三者委に抗議声明し、遺族側が報告書の矛盾を指摘した結果、大幅に改訂された」と反論した。
改訂された報告書では、遺族の指摘で、心理学的な仮説を含む記述を削除し、結論部分に「いじめの他に自死に結びつくような事柄は見当たらなかった」と追記された。他にも数か所、事実関係などが訂正されたという。
2019年2月28日 遺族から報告書の公表の許可が得られず、2つの報告書は非公表にすることを決定した。
2019年2月8日 遺族は、いじめ行為の時期や主体、方法、経緯などが具体的に特定されておらず、娘が残した「手書きのノート」の内容が考察されず、部活以外のクラスでのいじめの調査も不十分と訴え、市長部局による再調査を要望した。
再調査委員会
再調査委員会の設置•調査内容
2019年4月26日 市教委は、「遺族とのコミュニケーションが不足し、信頼関係を築けていなかった」として、現在の第三者委による調査の継続を断念した。
市は、常設している子供の権利擁護を担当する委員会に調査を委ねる方針を決定した。
2019年7月1日 新しい調査委員会が発足した。
諮問内容
1. 当該生徒に対するいじめの事実を調査すること。
2. 上記1において認定されたいじめと、当該生徒の自死との関連性を調査すること。
3. 当該事案に至るまでの当該校の対応並びに事案発生後の当該校及び市教育委員会の重大事態に対する対応を調査し、課題を検証すること。
4. 上記の結果を踏まえ、今後のいじめ防止に向けた提言を行うこと。
7月7日に第1回会合が開催された。計18回会議が開催された。
8月28日 再調査委は女子生徒と元同級生の保護者会に説明会を行い、情報提供などを求めた。再調査委は12月までに元同級生ら約20人の聞き取り調査を終了した。
再調査委は関係生徒18名、保護者10名、教職員15名、教委関係者3名の計46名から聴き取りを行った。
調査委員
5名
委員長:春日井敏之立命館大学大学院教職研究科教授
委員長職務代理:曽我智史弁護士
委員:足立友季世弁護士
伊藤美奈子奈良女子大学研究院生活環境科学系教授
小林哲郎神戸女学院大学大学院人間科学研究科教授
調査報告書•その後
2020年6月22日 再調査委は報告書(概要版約150頁)を中川智子市長に提出した。
2016年9月末頃から集中的に部活動やクラスで同級生9人から無視や陰口などの女子生徒が受けていたいじめのうち、所属する運動部やクラスでの無視や暴言、陰口、ボールをぶつけるなど計25件(当初経緯を調べていた市教育委員会の第三者委員会が認定した4件の6倍超)のいじめを認定した。
12月には女子生徒からのLINEが冷たくあしらわれ、謝罪文を笑われるなどした。亡くなる前日には「もう死ぬ。生きる意味がない」とノートに記述しており、「いじめによって自死したことは明らか」とした。
また、女子生徒が所属していた部活動では2015年から別の部員に対するいじめが計22件発生しており、既に4人が退部していたにもかかわらず、顧問らが具体的な対応をしていなかったことなども判明した。同委は「学年、学校を挙げた指導、支援が行われていれば当該生徒の重大事態は避けられた可能性が高い」とし、学校や教員の危機意識の乏しさを指摘した。
第三者委の調査についても「調査プロセスで丁寧さを欠いた」とし、遺族との意思疎通に問題があったとした。
「宝塚市いじめ問題再調査委員会 調査報告書【概要版】」(PDF:2MB)
女子生徒の遺族は代理人弁護士を通じ、「前回の調査と比較にならないほど充実した内容。教員一人一人の意識改革、資質向上、学校システム全体の改革が私たちの切実な願い」とコメントした。
2019年6月29日 報告書で指摘された別生徒のいじめについて、市教委が当時の校長らに事実関係を聞き取った結果、学校は2015年9月上旬に別の生徒が脱毛症になるなどしたことを把握し、市教委に「重大事態に当たるか」と電話で相談したところ、市教委は付属機関の「市いじめ防止対策委員会」の委員と電話で協議しただけで「交友関係のトラブル」と判断していたことが判明したことが市議会議員総会で報告された。
参考資料
“宝塚•中2女子自殺 亡くなる前日「もう死ぬ。生きる意味がない」無視、暴言、謝罪文笑われ…” 神戸新聞 (2020年6月22日) 他