脱学校原論⑧ 日本を見捨てる

真宗大谷派僧侶 堀蓮慈
2006年冬号にも書いたけど、ぼくは日本の状況にほとんど絶望してる。日本ほど抑圧的•集団主義的な学校システムは、いわゆる先進国には生き残ってないに違いない。というか、そんなに子どもの人権を無視する国は、先進国と呼ばれるべきやないと思う。近代の学校は、国民を統合し、兵士および使いやすい労働者を養成するために作られた、いう意味では欧米でも事情は同じやが、成熟した市民社会においては、公式な価値観である人権尊重と対立するような学校システムは変化せざるを得ん。ところが日本では、戦前的な価値がいろんな部分に生き残ってる。天皇制にせよ、靖国にせよ、最近も冤罪で問題になった警察の捜査方法にせよ。まあ岸信介が首相になるような国やからな。
で、権威主義的学校教育の結果、人々はもの言わぬどころか、もの考えぬ歯車として見事に作り上げられた。労働現場において、非正規雇用が増え、正社員は無茶苦茶にこき使われても何も言えへん。身分を失うんが怖いからな。「労働が壊れると民主主義は根腐れを起こす」て島本悠子さんが言うてるけど、まさにそう。会社がどんな悪いことをしても、告発もせず、退職もせんとしたら、それは魂を売ってるいうこっちゃ。ホリエモンが「金で人の心は買える」て言うたんは、まんざら嘘やないやろう。
今や、有事法制はあるし、警察による監視体制もいよいよ充実して、あとは第2の治安維持法たる共謀罪ができたら、ファシズム体制はほぼ完成する。数年のうちに憲法を変えて、「集団的自衛権」の名の下に米軍と一緒に戦争するようになるんは確実で、それまで北朝鮮は温存して、カードとして使うんがアメリカの腹や、とぼくは見てる。アメリカは、経済的にも軍事的にも日本を利用するだけ利用して、価値がないとなったら見捨てるやろが、その時日本はどないなるかな。ハイパーインフレ起こして、アルゼンチンみたいになる、いうんが、元「フォーブス」編集長フルフォード氏あたりの予言やが。
かく言うぼくは、6月から2年間、オーストラリアへ仏教を広めに行くつもり。と言うても、宗教者ヴィザは出んので、学生ヴィザで行くんやけど。なんでオーストラリアか?25年前にワーホリで住んでみて気にいったし、日本人がけっこう住んでるわりに寺が少ない、いう条件面もあるけど、結局日本に絶望した、いう部分が大きい。「おまえだけ逃げるんか」て言う人にはこない言おう。「今後、若者の行き先として有望やから、日本で展望がないと思う若者はどんどんワーホリに来てほしい。できる範囲のサポートはするで」。
オーストラリアも資本主義国ではあるが、資源が豊富な分、余裕があるし、労働組合が強力やから、日本みたいなひどいことにはなってない。ヨーロッパでは当たり前の、保守政党と社民政党の政権交替もあるし、国政は保守でも州政権は労働党、いう一種の住み分けもあったりして、とにかくいろんな意味で安心なんや。気楽なんや。ほっとするんや。
そんなわけで、今後はオーストラリアから情報発信します。31才以上の人は、ワーホリは無理やけど、遊びに来てくれる分にはガイドぐらいできると思うんで、よろしく。
脱学校の社会 (現代社会科学叢書)
イヴァン•イリッチ(著), 東洋(翻訳), 小澤周三(翻訳) / 東京創元社 / 1977年10月20日
<内容>
現行の学校制度は、学歴偏重社会を生み、いまや社会全体が学校化されるに至っている。公教育の荒廃を根本から見つめなおし、人間的なみずみずしい作用を社会に及ぼす真の自主的な教育の在り方を問い直した問題の書。
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