門前追悼

18回目の朝

所薫子

 門前追悼後カーネーションを数本持って僚子さんの通った道を歩く。並木はその頃からすると大きく逞しく育ち、木陰をつくっている。クロガネモチの樹の下には落ちた実が赤黒く大きな染みをつくっている。時おりヒヨドリや他の鳥が枝から飛び立っている。事件が起こって数年は、並木も小さく駅からの風景は特徴が無く、無味乾燥で、どこも同じように見えた。18年たってやっとそれぞれの草木が根を伸ばし、生やして生命力と存在感を持って街を形付けている。
 もしもあの時こうだったら違っていただろうか。もう少し血の通った解決が示されただろうか。
 確実に殺人を犯したのに、証拠隠滅を図り、更に真面目な僚子さんを不良呼ばわりして正当化しようとした。その罪は重い。
 もしもあの時、一人でも「とんでもない間違いを犯しました。」と罪を認めていたら。校則よりも時間よりも生命が優先することを、この間違いを通して伝えていたら。今の、この狂った時代は免れたような気がする。
 なのに今も尚、嘘で塗り固め、長いものにはまかれろと教育し続けている。それよりも「間違っていた」と一言謝ることで、子どもたちは生きかえるのにと思えてしかたない。

08.7.

Sponsored Link

続きを読む

Sponsored Link

Back to top button
テキストのコピーはできません。