社会

日本の風景② 新卒一斉採用

堀蓮慈

 4月は会計年度の始まりであり、学校の新学期が始まる月やが、企業もそれに合わせて社員を採用するんで、4月1日のTVニュースでは、大きな会社の入社式が放映される。この新卒者の一斉採用いうんは、日本だけの風習やないかな。少なくともオーストラリアでは見たことない。会社側の狙いとしては、まだ社会経験のない「うぶな」学生を、社風というか、自分らの色に染め上げよう、いうこっちゃろが、それって、「男を知らん少女を自分好みの女に育て上げよう」いう光源氏的なスケベ親爺の発想やな。
 だいたい、男が処女を好むとしたら、それはその男に自信がない証拠や。他の男と比べられるのが怖いんやな。光源氏の場合は、権力とそれに伴う経済力にあかせて女を次々モノにしたけど、それだけでは満足できんかった、いうことかもしれんが、日本企業の場合はもっと強迫的で、転職経験者は「傷物」扱いする感性が残ってるんやないかなあ。そこには、「裏切られる」ことに対する恐怖心もありそうや。ひどい言葉を使えば、「アバズレ」社員は信用できん、いうことよ。
 終身雇用(実際は定年までやのに、誰がこんな言葉を作ったんやら)の時代には、会社への帰属意識が高かったのも当然やろが、今は身分は不安定になったのに、忠誠心だけ期待しよういうんは虫がよすぎる。会社は共同体ではないんやから、社員の側でももっと割り切った付き合いをするべきや。昔から、業種によっては中途採用が多かったんやが、そういうのはあんまり「堅気」の業種とは見なされず、「普通」の会社では、「生え抜き」やなかったら出世しにくかったり、うさん臭い目で見られたりもしたようやな。労働市場が流動化したらそういう風潮は薄れていくやろと思うが。
 必要に応じて社員を入れる、いわゆる通年採用が普通になったら、「就活」のプレッシャーはずいぶん軽減されるやろ。「この機会を逃したら次はない」いうんやなしに、新卒で入社せんでもええんやったら、1年ぐらいいろいろ経験つんで(ワーホリなんかお勧め)、それを生かして職を探した方が有利でもあり、本人の幸せにも結びつきやすいやろ。新卒の「地位」を守るためにわざわざ留年するなんて話を聞くと、変な国やなあ、て思うな。
 暦年齢にこだわる文化がそもそもおかしい。その根底には、徴兵制を視野に入れた近代の学校制度がある、てぼくは睨んでるんやが、それはおいといて、幼稚園なんか、本人の成長度合いにしたがって、何才で入ってもええし、体系的なカリキュラムが必要なわけでもないんやから、年度途中で入っても構わんやろ。さらに学校も、固定した学年制やなしに単位制にした方が、「学習内容を理解せんままに進級してしまう」ことがなくなってええと思うんやが、ま、学校の改革は夢物語やろなあ。

Sponsored Link

続きを読む

Sponsored Link

Back to top button
テキストのコピーはできません。