社会

いま、沖縄から-③『つなぐ•いのち』

平井真人 (染色家)

 3月末、北区応其の生家の茅葺き替えが終わり5月連休から「ゆがふ舎」と名付けて活用を始めました。6月から11月までの半年間は新たに生れた「場」に魂を込める作法として月一回の染遊び、イベントをしています。沖縄では新たな「いのち」の誕生には必ず悪霊を寄せ付けない”儀式”=『魂込み(まぶいぐみ)』を行います。成長した子が何かの拍子で転んだり事故に遭ったりすると、その場に「魂(まぶい)」を落としたとして拾いに行くのです。人と人とが出合う場所や機会は時が経つにつれ何か見えない繋がりの不思議さを感じます。「魂込み」は魂(いのち)を畏敬する沖縄の先人の教えと思うのです。
 下関在住の在日韓国人フォークシンガー•李陽雨(イ•ヤンウ)さんとの出合いも時空を越えた不思議さがありました。
 その前日に韓国•光州から沖縄に帰ってきたばかりの僕は、日本で生まれ未だ祖国の地を踏んでない李さんとは2度目の出会いでした。行って来た光州は李さんの故郷近くだと聞いたとたんに、体中が鳥肌になりました。光州では大変気になる太鼓(韓国ではプクと呼ぶ)に出合い、全く楽器に疎い僕が何を想ったか大きな太鼓を買って来ていたのです。
 早速、李さんにその太鼓を見てもらい、持ち帰ってきた韓国地図に李さんは小さく印字された故郷の地名を見つけたのです。そして、プクを膝に乗せて目を瞑り、掌で撫でて叩く姿は未だ見ぬ故郷に想いを馳せているようです。僕は切なさが込み上げ、李さんの故郷の魂をプクに携えて持ち帰って来たのかなとも思いました。
 翌年9月、李さんは僕たち沖縄作家4人の「風展」を故郷に行く起点都市•釜山で開催するのを機会に初めて下関から韓国•釜山に渡ったのです。
 60歳にして初めて観る故郷、触れる同胞。日本では日本人でなく、祖国ではハングルを十分喋れず韓国人に見られない複雑な心境に185cmある大きな李さんが小さく見えました。ところが前日、沖縄を通過した台風が釜山に向かって北上、我々は急遽大しけの海峡を渡り帰国することとなり、李さんの故郷訪問もお預けとなりました。
 今年6月21日、淡河の茅葺き職人•相良育弥さんがそのプクで始めた「ゆがふ舎」の「魂込め」音鳴らし作法。11月22日の〆に李さんが「ゆがふ舎」でそれを叩き、田んぼで「いのちをつなぐフォークコンサート」を行います。韓国•光州から海を渡り、沖縄から空を越えてきた韓国太鼓「プク」。各地の「魂」を携えて神戸•淡河でどんな「魂(いのち)」を奏でてくれるのか楽しみです。皆さんのご来場をお待ちしています。 了
*コンサート情報は www.hiraimasato.com

11月22日(日) 15:00~ 淡河•田園ライブ~李陽雨いのちをつなぐフォークコンサート~
  23日(月)祝 13:00~ 五感で楽しむ お茶
       問い合わせ 申し込み mail@hiraimasato.com
毎月1回型染め講座をしています。 型染め日 11:00~`15:00
       茅葺き「ゆがふ舎」 神戸市北区淡河町淡河747

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