保育•教育
ブタ汁の焚火とA君

ちびくろ保育園園長 田中英雄
ちびくろ保育園の5才児のA君はヤンチャで保育士のいうことはあまり聞かないでよく叱られているが、主張も強烈である。キラキラとした眼をしている。一昨日も他の子のことでいさかいがあり、木の棚をガラス戸にぶつけて大きなガラスを割ってしまった。
そんな彼は別の一面を持っている。1月17日の翌日は毎年震災の炊き出しを記念して、園庭で大きな鍋でブタ汁を作る。火の周りに円を描いて中に入って来ないように注意するが、子どもたちは日が面白くて仕方がない。A君も火をさわりたくてしばしば円の中に入って来る。注意ばかりして追い出すよりはと思って彼に火の世話をしてもらった。火を大きくしたり、沈火させたり。終りには砂をかけたり。彼は最后は火バサミを壁の高い所に置き、ホーキできれいに灰を掃いて、それを決められた場所にかけ、そのままスーと部屋へ入って行った。なんとも言えないカッコ良さに感心してしまった。自尊感情が産れないのは大人が子どもから「仕事」を奪い勉強に追い立てるからである。スイッチ一つでなんでも出来る社会構造に問題があるとしたら、都市はやはり「解体」すべきであろう。30年前、東京に高層ビルが乱立し始めた景色を見て、どこかそれが墓石に見えたあの時から、急速に自然そのものである子ども•若者の「からだ」が圧殺され続けている。
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