
「生きる」大川小学校津波裁判を闘った人たち 監督 寺田和弘
『see you again』の著者、小林篤さんとの出会いは17年前、あるえん罪事件の取材でした。私は当時、テレビ朝日サンデープロジェクトのディレクターで、刑事裁判に関する取材をしていました。市民が裁判官と共に裁判を行う裁判員裁判の実施前に、刑事裁判が抱える様々な問題を取り上げていました。その一つが裁判のやり直しを求める再審事件で「開かずの扉」と言われるほど、一度、犯人とされてしまった人が無実を裁判で証明するのはとても難しい状況がありました。その具体例として取り上げようと考えたのが1990年栃木県足利市でおきた女児殺害事件、いわゆる足利事件でした。
928ページにもおよぶ『see you again』は小林さんの第2冊目の本ですが、第1冊目が足利事件を取り上げた『幼稚園バス運転手は幼女を殺したか』で、犯人とされ有罪判決を受けていた菅家利和さんは犯人ではない、つまりえん罪であることを強く示唆させる調査報道の大作で、菅家さんの代理人弁護士から、まずこの本を読まなければダメだと言われましたが尻込みしました。なぜなら、この本も397ページもありましたので…。でもその中身は迫力満点で、すぐに小林さんに連絡を取り、取材の協力をお願いしました。ジャーナリストや取材者にその人が書いた本を元に取材させていただく場合、対価として取材協力費を支払ったり、番組出演をお願いするのですが、小林さんは「取材には全面的に協力するけれど、取材協力費なんていらないし、番組出演は絶対しないからね」というのです。え…という感じでした。それにも関わらず取材に協力してくれる姿勢が文字通りの全面協力で、小林さんがその足で積み上げた取材記録を惜しげもなく提供してくれるのです。しかもそれは私だけではなく、足利事件を取材したいという取材者すべてに同じような対応をしていました。
その後、菅家さんのえん罪は小林さんの本の通りに証明されます。その時、講談社は『幼稚園バス運転手は幼女を殺したか』を『足利事件(冤罪を証明した一冊のこの本)』として文庫化にするのですが、その際、小林さんを『伝説のルポライター』と名付けます。その通りだと思いました。決してテレビなどの表舞台に姿を現さないその小林篤さんが来年7月5日の「生きる」大川小学校津波裁判を闘った人たちの上映後のトークに登場します。彼の姿を見て驚くかも知れません。そして、彼が取材した内容と話に言葉を失うかも知れません。その話は、フィクションなのか、ノンフィクションなのか…ぜひ、ご自身でお確かめください。
Sponsored Link





