責任は誰にあるのか

元高塚高校教員 髙橋智子
イラクでの人質が帰ってくるまでの一週間余りでテレビを見ながら、家族の様子が段々変わっていくのを見た。三日で焼き殺されるかも知れないと言われた家族は最初必死だった。自衛隊を撤退してでも助けてくださいというお願いだった。ところが段々危ないイラクへ行ったのはうちの子が悪かった。迷惑を掛けた。すまないという感じになっていった。
そうした変化がなぜ起こってきたかは容易に察しがつく。ありとあらゆる手を使って家族に対するいやがらせがあったのだろう。
高塚高校校門圧死事件の場合も同じだった。学校や石田さんの家に様々な嫌がらせがあった。高塚高校では事務の人が電話をとるのは怖いと言って、教員に回してきた。私も一度受けたことがあるが、罵詈雑言を聞かされた。学校に対する怒りは当然だと思いひたすら謝った。石田さんの家族も結局越してきたばかりの神戸の新しい家に住めず、どこかへ越して行った。弟は小学生だったが、神戸では学校にも行けなくなったそうだ。
責任者である県の教育委員会は「一人の教師と、一人の生徒の問題だ」と自分の責任を回避する声明文を発表した。高塚高校の校長は石田さんが10分早く起きてくれば事件は無かったと言った。(国の設置基準どおりの学校であれば事件は起きていない。)
今回、福田官房長官は、イラクがどんな危険な所か、メディアを通じて国民によく分かっただろうと言った。(それなら自衛隊がいるのは、特措法に違反しているのではないか)
フランスの高官が日本の若者を認める発言をしてくれた。3人の心に、今、日本はどのように映っているのだろうか。時間が経てばやがて三人は語り始めることだろう。
遅刻しまいとして命懸けで校内に入ろうとした石田さんの気持ちはどんなだっただろうか。その後の対応についてどう思っているだろうか。彼女はもう語ることができない。
バッシング
占部房子(出演), 田中隆三(出演), 小林政広(監督) / 2005年5月12日公開
<内容>
第58回カンヌ国際映画祭コンペ部門公式参加。2004年、イラクで起きた日本人拉致事件。人質3人に投げかけられる自己責任の問いかけ。渦中の3人へのバッシング、衝撃の真実。
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