石田僚子さん追悼10周年記念文集

少女・15歳から17歳・少年まで

 社会学者の盛山和夫は「制度とは理念的実在であって人々の主観的な意味世界によって根拠づけられており、この主観的な意味世界それ自体は経験的で客観的な存在である。そして、社会的世界は人々の行為によって構成されているのではなく、人々が世界に対して付与している意味によって構成されている。」「意味の体系としての社会は、あたかも暗い宇宙空間を背景にしてただ一つ青く輝く地球のように、宙に浮かんでいる。」と述べている。教育という制度を構成しているのはわたしたちの理念に他ならない。教育に対してどの様な理念を抱くかによって学校も社会も大きく変革する。
 六甲山上の「ラーンネットグローバルスクール」という新しいスタイルの学校を見学に行ったとき、デンマークの教育について教えられる事が多かった。デンマークでは、受験戦争がない、競争がない、塾がない、テストがないという教育が行われ、学校選択の自由が保障され、学校が合わなければ他の学校に移るのも簡単で、新たに学校を作る事もできる。大規模校舎に何百人がいて1クラス40人のような状況はなく、多くても20人止まりで一戸建ての学校もあり、全てが日本の学校の現状からは想像しがたいとのことであった。デンマーク語で教育を意味する言葉は「オプルスンニ」といい、光をともす、光を照らすという意味である。一人一人が自分の中に明かりをともす。自分の良い点や自信のあることを心の中に持ち、それで人を照らす。また、人の中にある光を見つけ、お互いに照らしあって影響を受け共に成長すると言う意味が込められているのである。
 制度にどの様な意味を与えるか、私たち自身が教育や社会に対してどのような理念を持つかによって、その社会は大きく変わりうるのである。10年では変わらないかも知れないが、子どもたちを取り囲む社会のゆがみを少しでも変えていくことができればと思っている。

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